おもかげのレビュー・感想・評価
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助けを求めて来た我が子を探し彷徨った10年
恐怖に怯える幼い息子はどこに行ったのだろう。
息子の面影のある少年ジャンに、なぜ思い切って「あなたは私の息子じゃないの?電話したことを覚えているでしょう?」と言わなかったのか。
大人の理性と言えばそれまでだが、助けを求めて電話して来た6才の子を探して、あの砂丘を10年間も彷徨ったのに、再会する瞬間を期待するのは、見る者の期待でもある。
これは、ただの未成年と30代女性の淡い恋愛ではない。
どういう見方をするかは見る者の勝手だが、ドラマは最後までその夢を打ち消してはいないし、監督は失踪の余韻を最後まで丁寧に描いている。これはデボラ・カーとジョン・カーの名作『お茶と同情』の物語ではない。サスペンスの秀作だ。
不可解
ちょっと僕には分からなかった。
もし息子を失ったらどうなるだろうか?と考えながら見ることになるわけで
その悲しみの大きさや深さに思いを馳せるんだけど、主人公の行動がとにかく腑に落ちない。
「こういうもんですよ」と言われればそうなんだろうし、そこはもう僕とは合わないとしか。
ジャンを息子に重ね合わせるなら、そんなことしないと思うんだけど…って感覚がずっとあった。
唯一共感できたのは元夫のラモンへの怒り。おまえ生きてんのか、と。
不慮の事故くらいしか、イヴァンを独りにした言い訳にならねーぞと。
そんで自分は新しい人生を始めますって、なんだそれと。
似たテーマなら『マンチェスター・バイ・ザ・シー」の方がずっと完成度が高かったように思う。
他人の空似
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他人の空似にハッとしたことはないだろうか?
とくに関わりが深かった人、
いなくなったあとも、その人のことを強く、きつく、想い続けていた人を。
あの晩、深夜のスーパーのレジの女性に、僕の心臓は止まりそうだったのだ、
死んだ従兄妹がそこにいたから。
18か月間、僕が一切の治療費を送り続け、メールを1千通交わし、食材の詰め合わせを毎週ゆうパックで届け、ホスピスで見送った従兄妹だ。
(実際は生前は一度も見舞いも行けず、死に目にも会えていない。金策で限界で、こちらにも時間も金もなかったから。金が切れれば治療は終わる。必死だった)。
あの子は死んだ年よりずっと若くなっていたね。
僕は頭がおかしくなっていたのだと思う。
1年近く経て
「どれ、チーズでも買うかな」と、チーズの棚に右手を伸ばした瞬間、フラッシュバックで、売り場の通路に膝から崩れ落ちたこともある。
僕は頭がおかしくなっていたのだと思う。
そのあとで、冒頭のレジの子を見たのだ。
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映画は、
携帯の電池切れの最後の声を残して消えた 6才の男の子と、その母親の物語。
原題は「MADRE」(母)。
正常ではいられない、息子を失ったエレナの話。
息子を探し、息子を待ち続けて、その砂浜に住みついた母親なのだ。
少年ジャンにおもかげを見いだして、微笑んだり、怒ったり、後をつけたり。
錯覚して頭がおかしくなっている様子が、見ていてつらい。
噂や中傷はエレナの心を更に傷つけているが、トラウマに乱れる彼女のことをそれでもなんとか耐えて支えようとする恋人のヨセパも、
意を決してついに会いに来た元夫のラモンも本当にえらい。
大きな砂浜がスクリーンに見事に写る。
それはそれは素晴らしい景色で言うことなし。
大海原は美しいけれど、とどろくあの海鳴りが、不安と絶望を掻き立てる胸騒ぎの音だ。
最後、
登場人物の誰しもが、そして観ている観客もずっと心中では思っている言葉、
けれど言わずにいた そのひと言を、
ジャンは言った
「息子を思い出すから?」。
ジャンからついに“禁句”を問われて、エレナはやっと10年経ったことを知ったかもしれない。
避暑地。ひと夏の、美少年ジャンとの出会いと、
パリに帰るジャンを見送ることが出来た、
エレナの10年目だった。
・・・・・・・・・・・・
失踪や死別で子を失うという筋書きの映画は多い。
「街を歩きながら突然大声で叫びたくなる」と仰っていた
横田早紀江さんのことも思わずにはいられなかった。
気がふれて当然だ。
失踪者の家族のために、ずっと忘れずに寄り添って、拒絶されても声を掛け続ける周りの人たちの存在も、思った。
撮り方
パノラマというか普通のじゃないレンズ(?)で撮ってる場面が目につく。冒頭の過去パート含めて撮り方にこだわりがあるのだろうけど。
彼女の行動は理解できないところもあるし、最後もそれでいいのか、とも思うが、理屈だけでは割り切れないし、感情だって色々入り混じっているのだろうとは思うが…。まあ彼女が次に何するかハラハラする点はサスペンスだったかな。
手を怪我してるなら運転しないでください。
序盤の電話だけでのやり取りが凄い!と思ってたら、このワンカット18分の部分はアカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた『Madre』だと後から知った。そういえば『SKIN』という短編もそのような経緯で長編化してるし、そのパターンが流行ってるのかもしれませんね。
6歳の息子が失踪してから10年後がメインとなり、エレナの喪失感と周囲の人々の接し方が描かれている。最初がインパクトありすぎたため、失踪した現場近くのレストランで働く彼女の言動がセンシティブで、所々恋人と衝突するのが絶妙な塩梅だった。
大切な人を亡くした事実は永遠に消えない。そうしたパートナーを思いやるにはその心痛も自分のものにしなければならないのだろう。息子の面影がある少年ジャンに対する思い。男女の関係にならなくても彼女が深みにはまっていくのは間違いない。むしろそうした恋愛関係になったほうが息子のことを忘れられるのかもしれない・・・
そんな揺れ動く描写がいっぱい。ただ、終盤の悲痛なジャンの電話ではやはり息子のことを思い出したに違いない。不気味な木の根っこの夢を断ち切ることはできるのか?そして、儚い恋心をどうやって昇華させるのか・・・エレナが立ち直ったかどうかは観る者に委ねられている。
出だしが衝撃的。固着の話だから、精神分析的にはちょっとやばい話かな...
出だしが衝撃的。固着の話だから、精神分析的にはちょっとやばい話かな。
でも、元カノより家族より彼女と心が通じあっているという設定。あんまり説得力はないけど。
しかも冒頭の彼女はちょっとバカそうだし。
トラウマを介して愛情が通うというのは普通にある話だから、この男の子の琴線には触れたんだと思う。ブルジョアってバカにしてたし。この男の子のまわりには何にもないんだろうという気はする。
海と空と砂浜の寡黙さが心地よい
10年前に息子イバンがどうなったのかは描かれない。そのとき元夫がどこで何をしていたのかも描かれない。
ジャンに近づく主人公エレナの気持ちも、ジャンがイバンに似ているということ以外説明されない。エレナ自身どうしたいのか説明できないかもしれない。
物語は、エレナがいまさら元夫と何を話すのかもわからないまま終わる。
説明のかわりに画面にしばしば現れるのは、広角に映し出される海と空と砂浜である。雲の多い空と、時に荒く打ち寄せる波は、見る者に不安定で不穏な印象を与える。
物語の説明をせず、海と空と砂浜を見せる。日々、内容のない饒舌に接してあきあきしている者にとってはその寡黙さが心地よい。
それと、表情を抑制して寡黙なマルタ・ニエトがよい。舞台であるフランスのリゾート地、ヴュー=ブコー=レ=バンの落ち着いた空気感もよい。
理解できないわけ
子供をああいった形で亡くした(失踪という形にはなっていますが)女性のことは、誰もが理解できないということを示唆しているようでした。元夫、彼氏、ジャンの間で支離滅裂な言動を繰り返す主人公の心の揺れが、そのことを端的に表しているのかと。大切な人を亡くしたことは、一生忘れられないし一生後悔して生きていくこと。例え狂ってしまったとしても、本作はその気持ちに寄り添っている様に感じました。
本作品のロドリゴ・ソロゴイェン監督が2017年に制作し、様々な国...
本作品のロドリゴ・ソロゴイェン監督が2017年に制作し、様々な国で評価を受け、昨年のアカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた18分の短編映画「Madre」
(この時受賞したのは「SKIN」でした)
短編の「Madre」が観られると知り、本作品の公開前に鑑賞しました。
18分ワンカットの映像は緊迫感のある内容でかなり心がざわざわしました。
この短編をそのまま使用した長編が
本作品の『おもかげ』
前々から公開を楽しみにしていたことと、短編のあのざわざわ感がどう展開するのかとても興味があったので、初日の10/23に鑑賞。
結論から先に書いてしまうと、個人的にものすごく好きな作品。自分の今年のベストムービの一つになるんじゃないかなぁ。
鈍く立ち込める灰色の空
波の荒々しさ
慌ただしく放たれるSpanishの口調
左から右側に2度
右から左側に1度
そして中央からこちら側に1度
この描写は主人公の心の動きが
こちらに伝わってくるようでぞわぞわした
その主人公エレナを演じるているのはマルタ・ニエトさん。彼女の憂いのある美しさもそうなんだけど、短編部分からの表情の変化が実に素晴らしくて、喪失感がある出逢いとともにだんだんと充たされてゆく表情が素晴らしかった。
カメラワークの独特な感じも好きだなぁ。カウンター越しの会話を広角な感じで映すところとか。
そして題名「MADRE」の意味は「母」
二人のMADREのところは、母親としての想いと1人の女性としての気持の部分が交差していてまたまたゾワゾワ。
全体的に観ている側に委ねてくる作りな気がするので、はっきりとしない部分もあるけれど、そこが自分には魅力だったかなぁ。
上映が終わる前にもう一度観ようと思います。
悲しみは当事者とでないと共有できない。
どんなに現在の自分を好いて、理解しようとして、守ろうとしてくれても、過去に起こってしまった慟哭を伴う悲しみが共有されることはない。むしろ近づくほどに生じるのは疎外感。息子のおもかげを追うことで恋人が去り、最後に主人公が語りかけたのは皮肉にも、究極の怒りをぶつける対象でありながら、唯一共感しあえる同士でもある元夫だった。
スペインとフランス、国境は接していても何かと文化の違いがありそうな国柄のようだ。どちらかというとフランス人の上から目線。スペインの室内壁の色は漆喰の白そのまま、家具はシンプルな木製。こちらの方が日本人の感性に近いかな。引っ越しの荷物も少なそうで、見習いたいな、、、なんてバイパス思考も働いた。
世代の境、家庭内の境、国の境、海と陸の境、電話の此方と彼方の境。境の切なさが印象に残る映画だった。そして波の音と映像。息子が行方不明になったかもしれない現場で生きるなんて辛すぎる、と最初は思ったけど、沈む夕日と海辺に勝る癒しはないのかも知れない。
オープニングは凄い。後半は・・・
引き込まれる緊迫したオープニング。
強く風が吹く荒波の音だけが響く、
人のいないビーチ。
まるで作品を観終わった後の私の気持ちのよう。
行方がわからなくなった息子の面影がある少年を追い、
その少年から一人の女性として愛される、、、
なんとも不思議な・・・
特に後半のエレナの行動は共感出来ず、、
少年を息子と重ねていたなら、
あんな行動をとるか・・・?
あえて狂気じみたところも描いたということなのか、、
途中でちょっと気分が悪くなってきてしまった。
…もやもやした感じが残るフシギな作品。
彼女だけがわからない。
10年前、息子を失ってしまった母親が、息子がいなくなったビーチ(⁉)で働くなかで、息子のおもかげがある16歳の少年と出逢い、そこから巻き起こっていく不思議な物語。
序盤、短編部分での、息子がいなくなったとヒステリックを起こす母親の演技は鬼気迫るものがある。非常に緊張感のある場面だったが、話が10年後に飛ぶとがらりと雰囲気が変わり。。
美しい夕日とビーチに癒される空間。
見た目も若々しく美しい主人公だが、16歳の少年があそこまでグイグイ行くとは。
ワタクシも十代の時分には年上の女性に強いあこがれを抱いたものだが、まさかあんなことはできるわけもないよなぁ…と思いつつ、エレナとジャンの奇妙な関係が始まっていく。
エレナに憧れを抱くジャン、エレナに未練がある元夫、ジャンとエレナの関係を快く思わない彼氏、エレナを不審に思うジャンの家族。登場人物の誰にも感情移入できるが、唯一エレナの気持ちだけが読めない。
ジャンの友達たちにも、比較的溶け込めている印象、それでいて彼ら彼女らをうまくかわす能力も持ち合わせている大人なエレナだが、ジャンを見る目は母親としてのそれなのか?
個人的にはそうであってほしいと願いつつ、最後の車での展開は?
ジャンの気持ちはわかるがエレナは…そうはなってほしくはなかったかな。。
そして最後の最後のシーン。ああしたってことはつまり、このひと夏の物語の結果で、ずっと抱えていた思いに区切りがついたということか?
多くの謎は残るし、色々な解釈がありそうだけど、子供を失った一人の女性が立ち直る物語とのことなので、この解釈で正しければ個人的には良い物語だったので、そう思うことにしよう。
ホワイトアウト(というと意味が違うか?)な幕引きは手法として好き。
物語の他、賑わっていて綺麗なのに、どこか物寂しさも感じるビーチが美しかった。
美しい風景
性的な目線じゃなく
息子への愛情から始まる
少年への想い
凄くせつなかった
この感覚は
女性にしかわからない事
なんじゃないか?
フランスの風景や
バーの雰囲気
部屋の作り
ファッション
ライフスタイル
見てるだけで
溜め息出てきますね〜
歳下男子への愛は沼。。。
ブランチでLiLiCo姉さんがおすすめしていたので
観てみたら。。
久しぶりにヨーロッパ系のモヤモヤゆるゆるに、
なんというか、リラックスしながら
興奮出来るストーリーでした。
息子を亡くした母としておもかげを
彼に重ねるのは予告でわかっていたので、
もしかしたら、、あのファミリーの養子?みたいな、
もしかしたらエレナの本物の息子?の
ような期待も持ちながら観るのだけど、、
いつしか、男女関係に、恋に、落ちてしまえ!と
応援する自分がいました。。はぁ。
そして、恋心ってやっぱり10代から70代ぐらいの
間なら、立場に関係なく派生するものなのかなぁと
改めて人の気持ちの不確かさに感銘しました。
アラフォーアラサー女子なら
エレナの魅力はちょっと分けて頂戴なって
言いたくなると思います!
下着なんて簡素でもスレンダーなら良いのかな?
とか笑
私も仕事するときはお団子ヘアにしようかしら
なんて反芻する帰り道でした。
まだ19歳のジュールポリエ君の今後にも
いま自分で映画を作り始めたという
エレナ役のマルタニエトさんの
その作品にも期待が膨らみます!
アデュー!
今日はフランス系の白ワイン飲もっと。
@シネスイッチ銀座
ひと夏の出来事
冒頭の短編版とはまるで別人…
主人公エレナは表情も無く薄笑うだけの痛々しい日々を過ごしている…息子をただ、ただ想いながら…彼女が被害者である事実に胸が詰まった
が、息子によく似た少年ジャンと出会い母性が恋に向かって行く過程には共感は出来ない
ジャンの想いを止める事は不可抗力であろうともエレナ自身がジャンを受け入れる事は彼の家族やエレナを支える恋人に対しても残酷で大きな罪だ!
誰が幸せに?
ジャンにとって、この恋はひと夏の「想い」で済ませて欲しい…エレナ対しての「影」を残す事も無く…
そしてエレナにも今後再生へ向かう人生を歩んで欲しい
観手によって評価も印象も変わり違うだろう
ヴューブコーレバンの海辺がとても印象的でした
サーファーが浜辺を歩いてはいたが実際海には誰も入って居ない💦
あの荒削りな波を乗りこなすのはかなり厳しい…と、波・乗り子の私は余計なチェックをしてしまいました😁
ある意味驚きのラスト
王様のブランチの映画コーナーで紹介されているのを見て、スペイン語に反応して観に来てしまいました。
大切な人を失いそうな時に何もできない無力感、誰かのせいにせずにはおけない喪失感、色々なものから彼女を救ったのは「許し」だったのだと思います。
ジャンといる時のエレナは、とても美しかったなぁ。
結果的に観て良かったです。
サスペンス映画だと思って映画館に入ったのですが、青春映画になり、恋愛映画で終わりました。
最初の事件が 宙ぶらりんというところは 確かにサスペンス(宙ぶらりん)映画ではありますが。
制作費が莫大なハリウッド映画と違って、クラシカルなフランス映画を観た時のような余韻が残ります。
母より女
短編はドキドキして、これからのストーリーに期待大きく
ワクワクしていたのですが…。
10年後のストーリーのエレナにまったく共感できずでした。
息子の「おもかげ」が残る少年に、どんな気持ちで接するのか…。
息子を思い描いて接してるにしたら、ちょっと怖い。
息子のおもかげのある少年に恋愛感情を抱いて接するなら、もっと怖い。
そこを、ぼやかしてるから余計モヤっとした。
どちらにせよ、母親であったのに、少年の家族に対しての配慮が全くないし、
相手の母親の気持ちは解らないんだ…。
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