「手を怪我してるなら運転しないでください。」おもかげ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
手を怪我してるなら運転しないでください。
序盤の電話だけでのやり取りが凄い!と思ってたら、このワンカット18分の部分はアカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた『Madre』だと後から知った。そういえば『SKIN』という短編もそのような経緯で長編化してるし、そのパターンが流行ってるのかもしれませんね。
6歳の息子が失踪してから10年後がメインとなり、エレナの喪失感と周囲の人々の接し方が描かれている。最初がインパクトありすぎたため、失踪した現場近くのレストランで働く彼女の言動がセンシティブで、所々恋人と衝突するのが絶妙な塩梅だった。
大切な人を亡くした事実は永遠に消えない。そうしたパートナーを思いやるにはその心痛も自分のものにしなければならないのだろう。息子の面影がある少年ジャンに対する思い。男女の関係にならなくても彼女が深みにはまっていくのは間違いない。むしろそうした恋愛関係になったほうが息子のことを忘れられるのかもしれない・・・
そんな揺れ動く描写がいっぱい。ただ、終盤の悲痛なジャンの電話ではやはり息子のことを思い出したに違いない。不気味な木の根っこの夢を断ち切ることはできるのか?そして、儚い恋心をどうやって昇華させるのか・・・エレナが立ち直ったかどうかは観る者に委ねられている。
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