「悲しみは当事者とでないと共有できない。」おもかげ トマソンさんの映画レビュー(感想・評価)
悲しみは当事者とでないと共有できない。
どんなに現在の自分を好いて、理解しようとして、守ろうとしてくれても、過去に起こってしまった慟哭を伴う悲しみが共有されることはない。むしろ近づくほどに生じるのは疎外感。息子のおもかげを追うことで恋人が去り、最後に主人公が語りかけたのは皮肉にも、究極の怒りをぶつける対象でありながら、唯一共感しあえる同士でもある元夫だった。
スペインとフランス、国境は接していても何かと文化の違いがありそうな国柄のようだ。どちらかというとフランス人の上から目線。スペインの室内壁の色は漆喰の白そのまま、家具はシンプルな木製。こちらの方が日本人の感性に近いかな。引っ越しの荷物も少なそうで、見習いたいな、、、なんてバイパス思考も働いた。
世代の境、家庭内の境、国の境、海と陸の境、電話の此方と彼方の境。境の切なさが印象に残る映画だった。そして波の音と映像。息子が行方不明になったかもしれない現場で生きるなんて辛すぎる、と最初は思ったけど、沈む夕日と海辺に勝る癒しはないのかも知れない。
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