「ふつうの映画じゃないと思って観ると楽しい」妖怪人間ベラ Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
ふつうの映画じゃないと思って観ると楽しい
普通に面白くはないよね。何から何まで整合性がないもん。
前半の桜田ひよりはね、
「じゃあ、この設定でエチュードやってみようか」
「こんな設定ありえなくないですか」
「ま、そうだけど、ね」
と言われてやってるエチュードみたいなの。でもうまい。『これはムチャクチャな設定でやってるエチュードだ』と思って観ると楽しいのね。
ストーリーはベラに関わった人がみんな狂っていくっていう設定なの。理不尽に狂うから、そこが人外のものに関わった人が堕ちていくホラーっぽいといえばぽい。でも全体のテイストが微妙にホラーでもないので、なんだかなって感じなの。
桜田ひよりがベラをいじめるのは「キレイなのは綾瀬だけ」っていうちょっと百合っぽい感情も入ってるからなんだけど、その描写がとても弱いの。だからなんだかなあって。そして自業自得で気がふれて、綾瀬とベラを殺めるのね。ここ現実感がないから夢のシーンかと思ったら現実だった。
その後もさらにベラを車道に突き飛ばして森崎ウィンの車にひかせるんだけど、桜田ひより逮捕しとけよ。友達あやめてるんだから。この辺の整合性無視っぷりがいいね。
森崎ウィンがベムになったとき「お父さん強くなったぞ」って、嫁と息子のために強くなりたかったのかっていうのは良い話なんだけど、ここも描かれてないんだよね。だから狂ってくのも「なんだかなあ」意外の感想がなくなっちゃう。
最後、ベムが堀田真由と息子を襲おうとするとき、堀田真由がとつぜん火のついたタバコを持ってるのね。おかしいだろ。いつの間にもったんだよっていう。たぶん、必然性があって持ってたんだろうけど、編集してるうちに整合性なくなったのね。でも、そのまま使う。もう整合性はいいんだよこの映画。
それでもベムは死なず「どうなるんだ」と思ったらベラが殺した。「人間になるのは嫌だけど、あんな化物も嫌」って、なにしたいんだよベラ。復活させたのおまえだろ。人外のものの理不尽で片付けるのは無理あるよ。
破綻を作品の中に持ち込めるのは才能らしいんだけど、この脚本家にそこまで才能があるかは解らないのね。なんとか、作品の形にした英監督は偉いなというか、チャレンジした甲斐あったねっていう気がする。
ここまで整合性無視だとなんかスッキリするし。ブツ切れで現れる狂ったシーンは、なんかみてて楽しいし、そういう映画だと思って観たら楽しめると思うよ。