FLEE フリーのレビュー・感想・評価
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見て良かった
アカデミー賞で長編アニメーション、外国語映画賞、長編ドキュメンタリーの3部門に跨ってノミネートされていたので注目していた作品。
話はアフガニスタンの惨状が描かれるというよりアフガニスタンを脱出してからのロシアでの生活や先に出国した長兄がいるデンマークへ向けての密航の経緯に時間が割かれる。本人の身元がバレないための配慮らしいがアニメになったことで見やすくなっている。
ドキュメンタリーはあまり見ないのでよくあるパターンなのか不明だが主人公が監督に話す内容を元に、過去のニュース映像なども用いつつアニメーションで描く。
主人公アミンと監督は、アミンがコペンハーゲンに着いてから移動する電車で見かけ、その後親友になり、結婚を考えている恋人にすら打ち明けられなかった難民としての過去を話す。
仰向けになって話すアミンのネックレスが真っ直ぐでなく歪んで垂れ下がっているのがいかにもドキュメンタリーだなぁと思って見ていた。そのネックレスをくれた名前が思い出せないという彼とのエピソードが良い。
アミンはアフガン当局に連行され行方不明の父親以外の家族は無事で、キャリアも積んで私生活も幸せだが、だからこそ作品になったのであって、ここまで運がない人の方が圧倒的に多いだろう。映画にしてくれて有難い。
冒頭でアメリカが武器を援助したという説明があるが、冷戦下だったとは言え何故戦争をしたい人達がいるのかな。
匿名性が要るドキュメンタリーだからアニメ。
fleeは逃げる、逃走する的な意味。escapeとかrun awayとかのが一般的な気がするけど敢えてのfleeは、freeに似てるから?って思った。
監督が81年生まれで、多分アミンも同世代。わたしも81年生まれ。生まれたところが違うだけで、見てきたものがこうも違うかと思った。
字幕翻訳が松浦美奈さまでテンション上がった。
アフガニスタンは?アミンの住んでた地域は?なのかわからんかったけど、母語のダリー語はペルシャ語のことらしい。アフガニスタンでペルシャ語?へーってなった。でも、アミンはもうあまり読めない。
デンマーク語で語られてたのよね?
劇中に出てきたお兄さんとかはお兄さんやお姉さんたちが話してたんかな?そこは声優なんかな?
多分アミンと監督とアミンの恋人は本人の声よね。
映画の中ではタリバンとは言ってなかった。なんて言ってたかは忘れた。7とか8とかくらいのカタカナだった。
ソ連に近い(傀儡?)共産主義的政府が立ったから、アミンの父は思想的に危ないとして連行された(でも面会はできた)、その後ソ連が撤退して、アメリカが武器支援したタリバンとアフガニスタン政府が内戦状態になり、アミンの父の消息はわからなくなった。
カブールがタリバンに制圧される、戦える男子は兵士にされることから国を出るしかなくなった。で、観光ビザ出してくれたのがロシアだけだったからロシアに逃れて…
スウェーデンにいるお兄さんが、ゲイバーに送ってくれたことはよかったねって思った。
逃げたくて逃げたわけじゃないのに、逃げた先でも優しくされない。わたしは優しくない逃げた先の人。その後ろめたさを噛みしめる体験でした。
姿を現すことが生命の危険を伴うことだから、でも人類にとって語るべき物語だから、より匿名性を高めるためのアニメによるドキュメンタリーなのですよね。見られてよかったです。
自由のある土地を求め
歴史は繰り返す
ドキュメンタリーをアニメにした様なセリフと、自身関わりのあるアフガニスタン人達から聞いていた話とまったく類似していて、さらにリアリティを感じた。
もともとアフガニスタンというと、日本との関わりも少ない事もあり、歴史も宗教も文化も知らない部分が多い。
自由だったアフガニスタンの良い時代、王政廃止後のアフガニスタン人の激動。
財産を持たずに海外に逃げたとか、難民として家族がバラバラに違う国に散り散りバラバラになるなんて想像もつかない事態だ。
自身が仕事で関わりのあるアフガニスタン人(移民で国籍は様々)と同世代の主人公が語る話は、私がいつも聞いている話と同じだった。
国籍がオーストラリア人である元アフガニスタン人の兄弟が名前も全然違うし、兄弟である証明が一切ない事に長年疑問を感じていたが、難民になる際にいろいろと事情があるのだろうと想像が出来たし、生きる力、家族を守る力が並大抵でないのはこういう背景からだろうと思った。
ますます国に帰れない人々の別な国籍取得の戦いは未だ続いていて、私の目の前にある。
私にとっても考え深い作品だった。
危険から逃げても過去には向き合わないと。
「FLEE=逃げる・避難する」の意味です。恥ずかしながら「FREE=自由」だと勘違いしてました。自由を求める作品なのかな?って・・・・。まぁ間違いだったんですが、そうでもないような・・・そして、「逃げる」も「何から?」って考えるといろんな意味合いが含まれた作品でした。まぁ考えすぎかな?
けど、本作は避難民の過去をもつ人間が自分自身と向き合い、取り戻す物語だと思いました。
アニメーションのアプローチが興味深いですね。特に現在のパートは実写で作る予定だったのではなかろうか?と思えるような構図ばかりだし、ラストシーンやアミン、キャスパーのアテレコの声を聞くと、別途実写動画があってそれをアニメーションにしたんじゃ?って思いました。ただの演出なのかも?ですが。けど、それが良かったです。リアルな話なんだということ、ここで描かれていることは実在している人間に起こったことであり、現在進行形であるという風に見えるからです。
さて、淡々と描かれる避難民の実情がエグくて何度も絶望感に襲われます。避難民は決して守られる存在ではないのですね。避難は自力、お金があっても運次第で避難先での迫害。避難民は誰かに守られる存在では無いということがよくわかります。祖国を追われ、家族や自分自身やアイデンティティすら物理的に逃げるためには二の次にしてしまった自分・・・きっと自分が誰なんだかわからなくなってしまう・・・自分が自分じゃない感覚になってしまうのではないのかなぁ?とアミンを見ていて感じました。しかし、自分を取り戻すために過去と向き合わなければならないとは・・・さらに辛い話です。本作はきっとうまくいったケースなんだろうなぁと思います。世界にどれほど同じ、いやそれ以上の苦しみを強いられている方々がいるんだろう。元凶がなくなる気配は全く見えませんがね。
あと、少なくともロシアの警察のク◯さが半端ないです。であるということを再認識しました。あぁ一時が万事なんだなぁ、そういう国民性の国なんだなぁと。どんどんロシアを嫌いになっていく自分がいます。
私達も結局観客の中の一人
アフガニスタンから逃げて、現在はデンマークで仕事も成功し、婚約者もいるアミンがデンマークに来るまでを振り返るドキュメンタリーアニメ。
全編ほぼアニメだけど、アミンの語りや取材の音声は実際の音声で、現在のシーンもアニメで描かれてるけど恐らく取材中の様子そのままなんだろう。アニメという空想の世界を描ける語り口なのにすごくリアルという不思議な感覚。
難民問題の映画ではあるけど、メインは過酷な亡命を経験したアミン自身の心についての話。自分のことをあまり多くは語らないアミンは婚約者にも自分のキャリアや2人の今後など大切なことを話せない。アミンのそのクセは亡命生活において培われた自分を守る壁。
難民問題を扱った話は数あるけどここまで難民個人の心に目を向けた作品はあんまりなかったように思う。それも監督がアミンの高校時代からの友達だったからできたことなんだろうな。友達を撮ってるドキュメンタリーって眼差しが暖かくて好き。『行き止まりの世界に生まれて』っていうドキュメンタリーと共通点を感じた。
そういう暖かい視線の一方で、目の前に困っている難民がいるのに何もしない"見ているだけの私たち"を鋭く批判してくる場面もあって良かった。難民たちと一緒に大海原の船に閉じ込められたような体験をさせられてこの人達と同じ気持ちだ!と思った後に、クルーズ船に乗る見ているだけの人達が出てきていくら共感したとしても所詮自分たちはこの乗客達と同じなのだと気付かされる。映画館の椅子に座って見ているだけの"観客"に過ぎないことを。
すんません
主人公はわりと裕福な家柄かと
父親はパイロット(空軍?民間?)で、海外への飛行経験もあるようなことが語られていた。
父はムジャヒディンに加担した容疑で警察に連行され、戻ってこず。
本人もアメリカの大学に研究員として招聘されるほどのインテリ。
アフガニスタン内戦とそれにともなうカブール市の混乱、タリバン政権後のイスラム原理主義にもとづく圧政などが描かれるかと思っていたので、ちょっと肩透かし。
主人公がゲイであることについては、ムスリムの社会では生きづらいだろうとは思う。
(原理主義体制下では斬首になってもおかしくない)
とは言っても…
難民にはその数だけドラマがある。どれも同じではなく、ただ皆生きるために必死。
最初ポスターを見たとき、実写ドキュメンタリーかと思ったが、アニメだと知り、昨年見た「トゥルーノース」を思い出した。
あの作品と少し違っていたのは、取材に基づいたという事実を生かし、まるで実写のドキュメンタリーをアニメ化したかのような作られ方だったこと。日本的アニメで聞き慣れている声ではなく、本物のインタビュー録音にアニメを充てたようなシーンと、回想の再現ドラマのようなシーンと当時の情景説明のための実写映像の組み合わせが、そのように感じたのだ。この斬新な演出が逆に見やすかったように思う。
生きるために脱出を試みるその物語は、見ていても辛く苦しく、全てを失いながらも、とにかく生き続ける姿が描かれている。人によって人権を奪われ、さらに力ある者によって心身を痛めつけられる人々。全ての難民にそれぞれの壮絶なドラマがある事をあらためて知る機会となった。この作品の持つ力が、より多くの人にメッセージを届けることになって欲しいと願うばかりである。
「肉体的な痛み」や「死」ではない地獄
(特に後半はネタバレ要素含みます)
インタビューをアニメに描き起こすという形のドキュメンタリー。
描き起こすという作業がある以上、こちらの観る側も、描かれたもの(スクリーン上で語られるもの)全てに何らかのメッセージがあると錯覚してしまうし、「誇張」とまでは言わないまでも、より強くメッセージを発信するためにアニメーションなりのフィクショナルな表現があるものと思っていた。
しかし、それはむしろ逆で、本来の映画のメッセージとは直接関係のない、でも登場人物たちの「素」の姿をあえて描くことで、むしろドキュメンタリーであることが強調される。
実際に彼が見聞きした事件も、もっと残酷に描くこともできたんだろうけど、むしろそちらは実写をカットインさせるくらいに抑え、アニメーション上は人が死ぬシーンどころか、痛々しい暴力シーンさえほとんどない。
この映画は、むしろ「もっとひどい地獄がここにある」ということを語りかけてくる。
自分の出生や国籍、家族の存在、性的嗜好といった、まさに「自分」を作り上げている要素を封印させられ、肉体的な自由もとことん制限されていく。
ここにいるのは本当に「自分」なのか。
もちろん、描かれているのは「彼の絶望」「権力の横暴」だけではない。
「傍観者」という名で、実は加害者側に荷担している「我々(観客)の暴力」。
他国からの亡命者たちの集団に偶然出くわした時、私は積極的に彼らの救護に立ち上がれるだろうか。
さらに言うなら、少なくとも私は「あのおばあさんは殺される」と思ったし、「あの女性は暴行される」「密航したあの家族は死んだ」ことが描かれると思った…いや、期待した。
そう、この映画はその銃口の一つを「私」に向けている。
もう一つ、おそらく「クライマックス」と言っていい、最後のあのナイトクラブのシーン。
大変恥ずかしいことだが、この映画を観た者としては言わざるを得ない。
あれが主人公の「魂の救済」であると解っていてもなお、私は心のどこかに「いかがわしさ」の様なものを感じていた。(単純にあのピンクや紫のネオンや照明に触発された感覚でもあるのだが、それはそれで私の理解力の欠如を物語っている)
私のようなアンテナの鈍い観客にとっては、どちらかというとこの映画は、何か強烈なメッセージを分かりやすく訴えてくるというより、こちらから「(メッセージを)迎えに行く」「掬い上げる」といったタイプの作品なのかな、と思う。
良くも悪くも、観客の評価が別れるのも納得。
ただ、観賞直後は薄かった印象が、後から解説や評論などを見て、改めてこうして書いて整理することで私は作品の輪郭がハッキリした。
こういう映画ももちろんあっていいな、と思う。
実話のアニメ化
あくまで個の数奇な人生物語
どうしても社会問題を絡めて見てしまう作品だったけれど、なるべく雑音・雑念を捨て、あくまで一個人の人生物語として観賞したいなーと思いつつ、今この世界情勢では尚更にあらゆる情報がむしろ邪魔になってしまうなぁなんて思ったり・・・決して難しい作品ではありませんが、複雑な内容です。
味わいのある絵ではあるけれど、個人的には、アニメの質は予想通りあまり芳しいものではないと思いました。しかし、あくまでアニメという手法を最大の武器として何かを伝えようとしている志は強く感じます。
今やアニメを用いたノンフィクションというものは珍しいものではありませんが、ただ情報を伝達するということよりも、なるべくその時の思いや感情を強く伝えようとしている意図を感じました。それが良いか悪いかはかなり微妙なところもありますが、物語として捉えると、偏見や偏狭といったものから脱却して、自由な観賞を存分に堪能できるかも─。ロシアが舞台にもなっているので、できれば去年見たかったなーという思いです。
音や音楽の音響にも強いこだわりや迫力を感じて、相当臨場感がありました。そういった意味からも、ドキュメンタリーというよりも─といった感じです。
紛れもなく傑作。
①映画の間中ウルウルしっぱなしだった映画は幾つもあるが、映画の間中胸(の左上くらいかな)が痛かった映画は少ない。②一本前に『PLAN75』を観たが、勿論全然違うテーマの話とは言え、まだ選択肢のある社会・世界に住んでいて幸せだなと思う。アミンやその家族(ほか劇中の沢山の人達)にはFLEE(逃げる)という選択しかなかったのだから。③アフガン戦争の是非(しかしアメリカも酷いね)や背景を描くのが主目的の映画ではない(勉強せねばとは思わされたけれど)。④アミンがつかざるを得なかった嘘を具現化したシーンや回りで何が起きているのか五里霧中でわからなかった場面を輪郭の曖昧なアニメーションにしているのが却って臨場感を伝えてくる。⑤出てくる2匹の猫がとても可愛い。
不公平
ドキュメンタリーのアニメ?
アフガン、デンマーク、ゲイ?
何のことやらと思いましたが、アカデミー賞で話題になったということで、観てみました。
あまりに自分とかけ離れた話でしたが、時代が多少重なっているため、主人公に寄り添うことができました。
親ガチャという言葉がありますが、これは、国ガチャ時代ガチャだなと思いました。
わたしたちは、生まれてくる国やタイミングを選ぶことができません。でも、それによって人生が大きく異なってきますよね。わかっているつもりでも、忘れてしまいます。
自分は、密入国の船が北欧に向かっていた頃に、客船側にいた人間です。平和な日本に生まれて良かったとかいう話ではなく、不平等は変えられない現実で、申し訳ない気持ちになりました。
観て後悔した。
事実を受け止めやすい
アフガニスタン難民だったある青年の個人史ドキュメンタリー。
未だ青年が本名を名乗れないほどアフガンは危ないとのことで、身を隠すために選んだアニメーションという手法のおかげで、残酷すぎるシーンは『トゥルー・ノース』同様にまろやかになり、さらにはそれでも描けないほどの非道な行為はモノクロの抽象画っぽい線で描かれていたのが、事実を受け止める上では効果的でした。
『カブールのツバメ』『ブレッドウィナー/生きのびるために』『ミッドナイト・トラベラー』と併せて観たいですね。
アフガニスタンで半世紀にわたって起こっている戦争の恐ろしさと、イスラム原理主義が幅を利かせる中で性的マイノリティが生きていくことの過酷さがわかる作品でした。
また、今のソ連をロシアに置き換えると、ウクライナ(特にロシアの占領地域)のことに思い至り、似たようなことが起きているのであろうかと胸が痛くなりました。
作中、デンマークへと亡命するルートにウクライナの飛行場があり、その辺で胸が詰まってしまいました。
タイトルなし
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