劇場公開日 2022年6月10日

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「危険から逃げても過去には向き合わないと。」FLEE フリー バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0危険から逃げても過去には向き合わないと。

2022年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「FLEE=逃げる・避難する」の意味です。恥ずかしながら「FREE=自由」だと勘違いしてました。自由を求める作品なのかな?って・・・・。まぁ間違いだったんですが、そうでもないような・・・そして、「逃げる」も「何から?」って考えるといろんな意味合いが含まれた作品でした。まぁ考えすぎかな?
けど、本作は避難民の過去をもつ人間が自分自身と向き合い、取り戻す物語だと思いました。

アニメーションのアプローチが興味深いですね。特に現在のパートは実写で作る予定だったのではなかろうか?と思えるような構図ばかりだし、ラストシーンやアミン、キャスパーのアテレコの声を聞くと、別途実写動画があってそれをアニメーションにしたんじゃ?って思いました。ただの演出なのかも?ですが。けど、それが良かったです。リアルな話なんだということ、ここで描かれていることは実在している人間に起こったことであり、現在進行形であるという風に見えるからです。

さて、淡々と描かれる避難民の実情がエグくて何度も絶望感に襲われます。避難民は決して守られる存在ではないのですね。避難は自力、お金があっても運次第で避難先での迫害。避難民は誰かに守られる存在では無いということがよくわかります。祖国を追われ、家族や自分自身やアイデンティティすら物理的に逃げるためには二の次にしてしまった自分・・・きっと自分が誰なんだかわからなくなってしまう・・・自分が自分じゃない感覚になってしまうのではないのかなぁ?とアミンを見ていて感じました。しかし、自分を取り戻すために過去と向き合わなければならないとは・・・さらに辛い話です。本作はきっとうまくいったケースなんだろうなぁと思います。世界にどれほど同じ、いやそれ以上の苦しみを強いられている方々がいるんだろう。元凶がなくなる気配は全く見えませんがね。

あと、少なくともロシアの警察のク◯さが半端ないです。であるということを再認識しました。あぁ一時が万事なんだなぁ、そういう国民性の国なんだなぁと。どんどんロシアを嫌いになっていく自分がいます。

バリカタ