「街へのラブレター」ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
街へのラブレター
サンフランシスコ出身の監督と主演俳優による、街への複雑な想いを込めたラブレターのような作品だ。主人公はかつて住んでいた家を買い戻したいと願っている。祖父が自力でその家を建てたという話を主人公はかたくなに信じている。自分で自分の居場所である家を作ったということが、彼にとっての誇りなのだ。しかし、街は変わりゆく。その家には今、裕福な白人が暮らしている。だが、売りに出されたことで、なんとかその家を手に入れようと奮闘する。
かつては自分の居場所だったその家と地域は、かつては日系人が住んでいた街だと言う。日系人が太平洋戦争の際に強制収容所に入れられたことで、空いたその地域に黒人が移り住むようになったのだ。祖父が建てたという話の真偽はどうなのか、主人公が絶対的な自分の居場所だと思っていたその家は、本当は誰のものなのか。居場所とアイデンティティをめぐる物語を描いた素晴らしい作品。
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