劇場公開日 2020年10月9日

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「ジミーとモンテは最後の優しい人類なんだよ きっと」ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ジミーとモンテは最後の優しい人類なんだよ きっと

2020年10月13日
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鑑賞方法:映画館

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サンフランシスコのフィルモア地区。そこはかつて日系移民が作った町だった。
第二次世界大戦中に日系人は強制収容所に送られ、戦後は多くの黒人が移り住んでいた。シリコンバレーに近いロサンゼルスは地価が高騰し、維持できなくなり家を手放し、新しいバブリーな人が住む高級住宅地へ。

キュートな中世建築様式の個性的な家。ジミーは祖父が自分の手で建築したことを誇りに思いながらも、それを手放した父親とはウマが合わず、モンテの家に居候している。二人は海辺の町のフィッシュマーケットで働いている。白人の奥さんがナマズを注文して、生け簀から取り出し、トンカチで生きじめするシーンがちょっとだけあった。ナマズのフライはアメリカの黒人奴隷のソウルフード(ケイジャン料理)だが、白人だって食べるというか、黒人からすると食文化まで乗っ取られたことを表したかったのかと思う。
サンフランシスコを出たにしても負けたわけじゃない。思いやりのある姉さんの弟に言う言葉。ジミーはLGBTQだと思う。左だけにピアスしてたし。バラバラになった家族。父親から見放され、母親も近くにいながらも、再婚して別の家庭があって、遠い存在。
ジミーの心の拠り所、プライドはかつて住んだこの家にある。そんなジミーに寄り添うモンテの友情は限りなく優しい。
モンテが盲目の父親にテレビドラマの場面状況を教えながら三人で見ている場面は彼らの優しい人間性をよく表現していた。モンテの書くスケッチがとても素敵だ。せつなくていとおしい。劇中劇にいろんな人が集まって来る。手書きのチラシ。モンテのひとり芝居で始まる劇は最後まで行かないで終わってしまう。モンテはジミーの力になろうと開演前日に不動産業者と接触して、1946年より前の建物であることを知ってしまった。この映画は直接的にLGBTQをテーマにはしていないけど、それだけに、かえってジンと来る映画だとも言えるかも。

ラスト ブラックマン イン サンフランシスコは変わりゆく、西海岸の大都市を舞台に優しい二人の哀愁に溢れた友情物語としてすごく素敵だった。この映画でもスケートボートが出て来ます。

不動産業者のイケメンの冷たそうな男はジュリィ 虹の彼方に出てきたマネージャーミッキー役のフィン・ウィットロックだった。不動産売買は仲介料で稼ぐからなんか似ており、お金に厳しい商売人の役はナイスキャスティングだと思う。

マンション暮らしが長くなるとこういう話しに疎くなりがちですが、家って大事ですね。地方の代々続く古民家で仲よく暮らす家族にあこがれることもたまにはあります。手放した後の後悔もまた大きいでしょうけど。

映画の感想は人それぞれですので、こういう気持ちになった人もいると言うことで。

カールⅢ世