旅立つ息子へ

劇場公開日:2021年3月26日

旅立つ息子へ

解説・あらすじ

「ブロークン・ウィング」「僕の心の奥の文法」で東京国際映画祭のグランプリを2度受賞しているイスラエルの名匠ニル・ベルグマンが、息子のために人生をささげる父親と、そんな父の愛情を受け止める青年の絆を、実話をもとに描いた人間ドラマ。自閉症スペクトラムの息子ウリの世話をするため、売れっ子グラフィックデザイナーというキャリアを捨て、田舎町でのんびりと暮らしているアハロン。別居中の妻タマラは息子の将来を心配し、全寮制の特別支援施設への入所を決める。定収入がないアハロンは養育不適合と判断され、行政の決定に従うしかなかった。しかし入所当日、大好きな父との別れにパニックを起こす息子の姿を目の当たりにしたアハロンは、自分が息子を守ることを決意し、2人の逃避行がはじまる。2020年・第73回カンヌ国際映画祭(新型コロナウイルスの影響で通常開催を見送り)のオフィシャルセレクション「カンヌレーベル」作品。

2020年製作/94分/PG12/イスラエル・イタリア合作
原題または英題:Hine Anachnu
配給:ロングライド
劇場公開日:2021年3月26日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第73回 カンヌ国際映画祭(2020年)

出品

カンヌレーベル「新人」
出品作品 ニル・ベルグマン
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(C)2020 Spiro Films LTD.

映画レビュー

3.5 父親の心の移ろいが、実にしみじみと味わい深い

2021年3月26日
PCから投稿

どちらかというとスローな映画だ。冒頭から瞬時に観客の心をかっさらう事はない。とりわけ父親は、息子への慈愛に満ちた表情とはまた違い、人との間に少し距離を置く性格のよう。デザイナーとして名を馳せた仕事も、それからプライベートの面でも、何かとこだわりが強く、ついつい意固地になってしまいがちだ。そんないろいろあった彼が息子と共に放浪しながら「いま、ここ」を見つめる数日間。それに合わせて我々も、少しずつ、その内面や過去をうかがい知ることとなる。この一歩一歩が非常に味わい深い。そして自ずと理解できるのは、この人は決して器用ではないものの、それでも懸命に、実直に歩んできた人なのだ、ということ。あの”映画スター”の名前がこれほど胸に響くのも、我々観客と共に築き上げられた関係性の賜物だ。息子からの目線をこれほど凝縮させた言葉は他にないだろう。ラストシーンに交わされる会話がまたいい。しみじみとした余韻が残る。

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共感した! 6件)
牛津厚信

5.0 広い社会を経験することで人間が変わっていく。

2025年8月16日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

見始めるとすぐ、息子、ウリの動き、顔つき、反応に気づくと思う。もっと見ていかないとわからないが、一人では生きていくのに難しいようにも感じられる。父親は息子の面倒のみかたを知っているようで、というか、息子が小さいころからよく面倒をみてきたようだ。息子がカタツムリを怖がるシーンによく出ている。カタツムリを踏まないように、つま先で大股で歩く。なるほど。いい戦法だ。しかし、世間の目は少し、きついようで、電車の中で息子が笑い続けていると、ある乗客は彼らの前の席に座ったが、ウリの様子を観察して、『なんだ?』というような顔つきで、席を動く。こういうシーンって、父親にとってみれば世間の対応は慣れているかもしれないけど、きついねえ。こんなシーンがいくつもあるが、世間の人は声をかけるわけでもない。手伝えないかしれないが、父親は何かしてもらったら助かると思う。例えば、ベエルシェバ駅(Beer Sheva)でだが、息子が投げ出した靴を駅員がプラットフォームに降りて拾ってくれるとか。(映画では省かれているのかも)息子は、感情が全くコントーロールできないから、新しい家である、施設に行きたくないの一点張りで猛烈に駄々をこねる。父親は息子に『約束をしたよ』といったから、施設には連れて行け(か)ない。周りの体裁(日本語でよく、人が見ているよという)を気にしていないようだし、誠心誠意、コミュニケーションしていて、体も使って息子と直球で対面してるんだよね。立派な行為だね。はっきり言って、小さい頃からよく面倒を見ているから対応の仕方を会得できるのかもね。愛情がよく現れているね。しかし、父親も息子とは違う何かを(アスペルガーかも?ごめん、こんな言い方しかできないで。)抱えているね。だって、父親はポーカーフェイスで感情があまり表情に現れていないし、仕事も優秀で(グラフィックデザイナーでニューヨーカーの表紙に作品が載り、イスラエルではSOS Stamps になった。BBDOという広告会社に大学生の時雇われた。)極めるタイプだし、歩み寄りがむずかしそうだし......現在、定職がなく、フリーランスで仕事の量も少ないようだね。息子との生活が優先のようだ。母親は法廷の命令だと言って、現実的な対処をしたがる。息子の将来を考えて、自立の手助けをする施設が適切だと理解している。私はイスラエルの福祉の事情を全く知らないので、父親や息子にどう支援が出ているのだろうと気になっている。

父親は息子を新しい家に連れて行けないし、追っ手(母親。警察。施設の人間かも)が来るから自分の家にも戻れないね。現実逃避の逃避行となる。一時的にも父親は息子を施設に入れる/入れないという現実を離れて、頭を冷やす必要もあると考えたのか、深く考えずにただ逃げて行こうと思ったのか私にはわからないが、ここからが、興味がある。今までの行動範囲が、自宅を中心にあったわけだが、この旅は大海に二人が放り出されたようなものだ。二人はこれによって変わっていく。息子は思春期を迎えたようで異性に興味を持ってくる。父親は絵画にふと心を奪われ、いつものルーチンを失い息子から目が離れてしまう。これによって、父親の自覚も芽生えてくる。この二人は似たもの同士でラクトアイスを一人で食べる父親の憩いの時は、ハイファの海辺で息子も一人でアイスを食べる行動につながって悲惨な結果になってしまう。また、暴力行為で警察に捕まる父親は、施設に入った息子の窓ガラスを破壊する行為につながる。二人の絆は深い。

イスラエルの地図を見ると、自宅のある北(ティベリウスTivon)から南(紅海のアカバ湾の近くのEilat)まで電車やバスで行って、弟の住む(Haifaハイファ・ポートまで夜行バスで北上するという形で旅をしている。

一番好きなシーン:
最後、父親がウリを迎え入れるため、ハンモックなどの準備をして、施設に迎えいく:
息子:Can we go after the workshop?
だって!私は聞き間違えかと思った。今までの息子だったら、すぐ父親に飛びついて家に帰るだろうと思っていたから。After the workshop?息子は父親の保護から飛び立つ?自立の目覚め?この言葉には驚き。ウリが二人の会話をリードしている。ワークショップ(芸術的な作業?)の後に家にかえれる?と聞く。 父親はワークショップの後、家に帰ろう、ここでまってるよ。
息子:この後、夕食があるんだ。
父親:パスタースターズ(小さい星型のパスター息子がいつも食べてる大好物)を作ったよ。
息子:ここに持ってきて!
それから、息子は今日のは普通のパスタだよと。施設では普通のパスタを食べるようだ。この意味は子供用のパスタじゃなく大人のパスタということだ。仲間が、来いよと息子を呼ぶ。ここで父が当惑しているのがよくわかる。息子が成長したのを喜んでいるような、え!!何を言ってるのと戸惑っているような顔をする。
父親:家に帰るね、ワークショップをして、パスタを食べたらいいよ。You Stay。

ワークショップに行くよとウリ。
父親はちょっと泣きそうな顔をしてGood bye, ウリと。そして、父親の表情は今度は「逞しくなったなあ」と変化。ウリの背中を見てる。ウリはいつものように壁に描いたブザーのボタンを押して中に入っていく。

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Socialjustice

3.5 子離れ

2025年7月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

幸せ

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ゆい

未評価 タイトルなし(ネタバレ)

2024年7月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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マサシ

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