アナザーラウンドのレビュー・感想・評価
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【酒とダンスと友情と】 とびきりユニークな人生賛歌
酒は高揚感と多幸感をもたらしてくれる良薬でもある反面、飲みすぎると日常にも支障をきたし、最悪の場合死に至る。我々日本人からすると考えられないほどの酒の量取り込むデンマーク人と“お酒”との関係を描いたユニークな物語。んなアホな!って突っ込みたくなるコメディな面とほろっと泣けるシーンもあったりで、文化の違いも感じ取れる良作だ。
お酒はドラッグやセックス同様に、幸せに満ちた時間を与えてくれる一方で、朧げで泡のように消えてしまうからこそ人が依存しやすい。
酒によって成功を勝ち取るものもいれば酒に飲まれて身を滅ぼすものもいる。お酒の量はほどほどに…。
ということを物語を通して警告しているんだけど、とりわけ秀逸なのが高校教師がアルコール濃度を0.05%保つことの効用を体験し実証するという脚本だ。
第一段階のお酒との程よい距離がから第三段階の酒に飲まれる人間の愚かさが描かれる。
お酒で解決したとしてもそれって一時的なもので問題は解決していない。お酒に頼らずに、どのようにして自分や人に向き合うか。マーティンと夫婦の関係を通して示唆している。
以下ネタバレ↓
ラストに差し掛かるシーン、トミーのお葬式での教え子の眼鏡の男の子が映し出され、二人の関係に涙が止まらなかった。
試験前にお酒を少量飲みなさいって、日本じゃ考えられない。笑
こんな破天荒な教師たちに出会ってみたかったな。
酒はほどほどに。
血中アルコール濃度の適正数値があるとは知らなかった。確かに気分は高揚すると思うが所詮は酒の力、な気がする。ましてや映画の通りセーブが効くわけないだろうし…酒に頼りだした中年4人の姿が身に沁みる…。根本で学校に酒を持ち込んだスタートからアウトな人生だが。
4人の人生に乾杯したい
過ぎて行く日常を変えたくて、大人の実験検証。
飲酒が人生を楽しくさせてくれる面も有れば破滅も呼び寄せる面もある。だから気をつけようっていう教訓的な映画ではなくて友情とか家族とか生きるって良いものだと思わせてくれる映画。特に友達とお酒飲んだり騒いだり一緒に何かをやり遂げたいと思える。
仲間のユーモアさと学生たちのパワフルさ、曲のかっこよさ、北欧の朝日の中の海の美しさと悲しさ……
そして、なによりマッツ・ミッケルセンの演技がとても最高でした。
酒の功罪。
行き詰まった後期中年男たちの友情が熱い。
どん詰まり打破の為に始めた飲酒実験、良い事も起きるが予想通り破滅的になっていく。
日本人はアルコール耐性低いからもっと話早く終わってるかも知れない。
作られたコメディにならない様に、自然な絵作りをしているのが上手くいってる。無愛想なマッツをはじめ役者も素晴らしい。
撮影開始直後に亡くなった監督の娘さんの存在が大きく話にも絵にも影響している(娘さんの学校とクラスメイトが出演)らしい。
よい映画になって良かった。
お酒ってこうだよね。
観始めると、やっぱり飲みたくなって
あーあ…と、やっぱり飲みたくなくなって
なのにやっぱり、飲みたくなっちゃう
酒は百薬の長、だからといって飲み過ぎは良くないし
酒は人生を破壊する、といって飲まなければ人生味気ない
そんな映画。
酒ですべては解決するのか?
情熱を失った40代の教師たちの青春群像。
0.05%の血中濃度のアルコールを入れればヤル気が出るとの学説を聞いて、飲酒生活にチャレンジする教師たち。
既定のアルコールを飲んで授業に臨むと段々と教える事が楽しくなっていき、生徒との距離も近づいてくる。
ただ飲酒生活が続くにしたがって、各々が抱えていた問題も表面化していき…って話。
酒好きの私としては、酒の量が増える教師たちを見ながら、失敗するんじゃないかとか、アル中になるんじゃないかとか、ドキドキしながら観てました。
デンマークって呑兵衛が多い国だと知った。
酒を飲む時間を楽しむのではなく、酒の向こうにいる大切な人たちとの時間を楽しむべきという話。
自分も正直中盤まで、あれ?アル中のための映画かな?と思ってました。
ただ、ラストでやってくる“ある人物”との別れの場面で、ようやくこの映画の本質が捉えられた気がしました。
ああ、なるほど。そういうことね。
決してこの映画は飲酒を推奨しているものではないです。
酒はあくまで他者との関わりを楽しむためのツール。
酒を飲むことが人生の目的になってしまうと“ある人物”のように、孤独な結末が待っている。
先人が「独りで飲む酒と大勢で飲む酒は意味が違う」と言っていましたが、その意味が客観的に理解出来るような作品でした。
いや、めっちゃ面白かったですよ。
特に音楽も素晴らしかったです。サントラが欲しい。
呑兵衛の言い訳
デンマークの高校教師4人組がノルウェー人哲学者が提唱した血中アルコール濃度0.05%を保つと効率良く仕事が出来るという説を自分達で実験していく話。
真摯に授業に向き合わないのを棚に上げ、保護者と共に成績不振であることにモンクを言う生徒達。そして夫婦仲が上手く行っていないことも重なって飲み会の席で愚痴を吐いた主人公。そんな状況下血中アルコール濃度0.05%の話題が上がり巻き起こっていく。
因みに、血中アルコール濃度0.05%というと呼気中アルコール0.25mg、生中2杯分ぐらいだからそこそこ酔ってますね。
さらに因みに、デンマークでは16歳から飲酒OK、但し16.5度を超えるアルコール飲料は18歳からとのこと。
学校で酒を飲み0.05%を実戦してみると、上手く言葉が出てこなくなることはあったものの、不思議と授業が上手く行き、調子にのっていく様だったり、実験的な内容は面白いのだけれど、2章が終わったあたりでもう行ききった感じがしてちょっと飽きてくる。
そして3章はというと…あれ?
ドラマとしてはここから何だろうけれど、この作品が描かれる前の出来事のことをどうこう言われても知りませんがな。
そして0.18%何てお話にならないのわかるだろうに…。
無理矢理何とか丸く収まった感じではあるけれど、これはハッピーエンドと言って良いのかね。
つまらなくはないけれど、イマイチ釈然としなかった。
終始もやもやとした不安を覚えた
以前、神主と書道の先生との三人で焼鳥屋で酒を飲んだことがある。二人は長い付き合いらしく、殆ど口を利かない。ただ黙ってビールを飲み、焼鳥を食べ、日本酒を酌み交わす。当方はまだ若輩だったが、特に居心地が悪いわけではなかったので、自分から話題を切り出したりせず、一緒に黙って飲んでいた。
1時間半ほどもしただろうか。書道の先生が「ああ、酔うた」とボソっと言った。そしてまた同じようなペースで静かに飲みはじめたが、ほどなくして散会となった。このときの焼鳥と日本酒ほど美味しいと思ったことはない。若山牧水の「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」という歌が心に浮かんだ。
本作品は4人の高校教師が普段のパッとしない生活から脱するために少量の酒を飲む実験をするという話である。うまくいくこともあるが、酒に頼っていればいずれは破綻するのは目に見えている。そのアホさ加減を笑ってばかりもいられない。この作品には悪意にも似た不穏な思想が底流にある。
不穏な空気は音楽の教師が生徒に合唱させるシーンから感じはじめた。合唱するのがデンマーク礼賛の国家主義そのものの歌なのだ。加えて、酒を飲んだときの盛り上がり方が、日本で言えば大学生程度のノリである。コロナ禍の前までのハロウィンや大晦日やサッカーワールドカップのときの渋谷の夜みたいだ。あそこにいたのは二十歳そこそこの若者だけである。
いい大人が酒を飲んで騒いではいけない。騒ぐのは軍隊や体育会の若者に見られるように、全体主義、国家主義のノリがあるからである。国家主義の歌を歌わせる精神性と、酒を飲んでみんなで騒ぐ精神性は、根っこは同じである。本作品が高評価を受けているとすれば、デンマークはヨーロッパでも危険な国のひとつだと言えると思う。
本作品の飲み方と、冒頭に述べた神主と書道の先生の飲み方は対照的だ。若いときは酔っぱらえればいいと酒を飲む。本作品と同じである。しかし大人は違う。料理を食べるときには料理人に感謝し、そして素材を提供した農家や漁師に思いを馳せる。酒を飲むときには造り酒屋の努力に感謝し、酒米を育てた農家に感謝する。
想像力がなければ他人を思いやれない。思いやりがなければ残るのは憎悪だけだ。そして憎悪は戦争に繋がっていく。ケタケタと笑う観客がたくさんいたが、当方は終始もやもやとした不安を覚えながら鑑賞した。
デンマークの国民が想像力に乏しい国家主義者ばかりではないと信じたい。大多数は当方と同じように酒を愛し、酒を味わい、状況を愉しみながら飲んでいるに違いないと願う。酒はしづかに飲むべかりけり、なのだ。
この作品の危うさに酔いしれ、そして呑まれる
笑っていられるのは今のうち。北欧の至宝マッツ・ミケルセンの素晴らしい演技と共に記憶される"酒は飲んでも飲まれるな"映画の極致。中毒・依存症と中年の危機に対する悲劇的ドラメディとして深い。笑っちゃうくらい皮肉で気まずくて居心地の悪い痛烈な一打が刺さってくる。展開的には「そりゃそうなるよね(トホホ)」みたいなことなのだけど、作品としてあまりに強度がありすぎて胸がつかえ引きずるような、自ら律さないといけない『フライト』。
画に惹きがある。『偽りなき者』監督主演コンビだけあって、(キッレキレだけど)カタルシスなきダンスシーンも見られる。とりあえず今この瞬間は上手くいってるからいいよね、みたいなリアルな人間の弱さ・脆さを暴き曝け出す。結局、人の反省ってそんなもの。観客に突きつけ、問いかけ、考えさせる終わり方。本当にこれでいいの?なんとも言えない後味・余韻、二日酔いのようになかなか消えないそいつに今は悩まされるばかり…。
なんか最近このアプリから干されてる?
マッツが演じる主人公マーティンが冴えない中年男性なのだが、本当に冴...
マッツが演じる主人公マーティンが冴えない中年男性なのだが、本当に冴えないおっさんにしか見えないのがマッツの演技力の凄さを感じます。
飲酒を否定も肯定もしない作品なのが面白い。
有名なマッツのダンスシーンも、マーティンの性格を知ってから見ると胸熱です★
人生辛いので酔ってないとやってられない事もあるよね。(私はまったく飲めないけど)
酒はうまい
家族との関係、プライベート、仕事がイマイチ上手くいかない中年のおじさん達が常にアルコール血中濃度を0.05%に保てば人生うまく行くという仮説を検証するために酒を飲みまくる話。
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おじさん達が何かとごちゃごちゃ理由を並べ立てて酒を飲む方向へと持っていく様子が楽しい。最後の行ける所まで行ってみようっていう検証についてはもはや最初にやろうとしたことからかけ離れてて、論理が崩壊していて笑える。
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人生に疲れて悩んでいる時に飲むお酒、仲間と羽目を外すために飲む酒、自分の気分を紛らわすために飲む酒、友人とあーだこうだ言いながら飲む酒、祝いの場で飲む酒、色んな飲酒のシーンが出てくるけど、どのお酒もおいしいよね。
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私も酒飲み家系に生まれて酒飲みの肝臓を持っているのでお酒大好きアル中女なので、この映画の最中酒が飲みたくて飲みたくてたまらなくなる。コロナがなかったら絶対ワイン買って飲みながら見たのに!でも日本人は西洋の人に比べたら弱いから、あの肝臓がほしい。ウォッカとかストレートでいきたい。
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ただ、アルコール血中濃度の検証をするために仕事前や朝にキメる酒は、お酒を楽しんでいるのではなく完全にドラッグの使い方。もはや、日本人でモンスターとかレッドブルキメてる人とかもこれと変わらない気がするけど(笑)酒はプライベートで飲もうね。
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酒の危険性も提示しつつ、でもお酒を飲むのって最高だよね!って終わってくれるから良い。個人的に二日酔いの朝ある事が起きて起こされるシーンでの部屋の明るさが絶妙に不快な明るさでよかった。あの気持ちわかるよ。私はあの人が見ている光景と同じ光景を見たことがある(笑).
北欧だからこそ、染みるウォッカ
めまぐるしく変化する光の角度そして色彩
そこで暮らしていくために育まれた最善のルールから
ヒトはいつだって抜け出したい解放されたい
見慣れた英米仏伊の映画とは心情の調律具合が違う
説教臭くはしない絶妙な塩梅。
自身にも起こり得る物語だからこそ
説教臭くはしない絶妙な塩梅を評す。
老いも若きも抱える生き辛さを俎上に乗せ、
結果人の愚かさを丸ごと肯定し、
とにかく生きてゆこうと
優しく私の背を押す懐の深さ。
支持。
酔っ払いは嫌いだ
酒が苦手な自分は、酔っ払いは嫌いです。酔えない者にとって害悪のような存在。それでも、陽気な彼らを見ていると、相当笑える。まあスクリーン上の酒乱はこちらに害を加えることがないからね。
アルコールによる楽しさ惨めさ、そしてそれによる悲劇を存分に楽しませてくれる作品で、飲めない自分でも、なんか飲みたくなってしまうような、ヤバい映画で、非常に面白かったです。
ラストで快哉を叫ぶ!
観る前はもっと深いメッセージがあると若干構えてたけど、観た後は下記のシンプルな感想。
●お酒は気分を上気させる
●みんなでお酒を飲みながら音楽聴いて踊るとサイコーに楽しい
●お酒有無に関わらず、大事な人とはちゃんと向き合いましょう
●お酒を飲み過ぎると時に人生を壊す
こんな当たり前の事を提示してくれる映画がこんな胸に刺さるのはコロナ禍だから。
ラストは歴史に残る美しいミケルセン伯父貴のダイブ!🇩🇰
【‰(パーミル)とキルケゴール】
思いがけず印象に残る作品に出会った。
対比を対比に止めず、スパイラル感を出して、考え続けることを促したような秀作だと思う。
‰とは、血中アルコール濃度を示すために映画で利用される千分率の単位で、字幕では%に置き換えられていたが、パーミルと読む。
日本では、線路や道路の勾配率を示す標識なんかで見ることはあるかもしれないが、普段はあまり見かけない単位だ。
血中アルコール濃度を5‰(パーミル)に維持することによって得られる解放感と効率性。
‰(パーミル)の単位でコントロールしないと、得られない幸福感なんてあるのか。
これは、デンマーク社会の抱えるジレンマのメタファーなのだ。
ところどころで歌われるデンマーク国歌。
デンマークは、高福祉国家だが、多くのシステムが一律で、さまざまな個性で成り立つ人々にとって、一体、それが幸福なのだろうかという疑問を提示しているのだ。
アルコール摂取が当初の維持目標を超えて増えることによって崩れていく自分自身と、人間関係。
高額な税金を納め、一律のシステムの恩恵を得られる社会で、唯一、緩めに放置されたアルコール。
社会は飴と鞭で成り立っているのではないはずだ。
内気な生徒が、口述試験でキルケゴールについてする回答。
「失敗した後、自分の不完全さを認めること。自分や他人を愛するために」
これは、アルコールに逃避することなく、自分に向き合うことの大切さを示した言葉でもある。
どんなに‰(パーミル)単位で管理しても、その時々で、自分に向き合えないと、自分も周りの人も幸福になり得ないのだ。
しかし、こうした対比を提示しつつも、この回答をスムーズに引き出すために必要だったアルコールという手段。
問題の所在は明らかでも、一様な解決策はないと言っているようだ。
それは、エンディングの若者と歌い踊る場面からも伺うことが出来る。
妻との携帯でのやり取りは希望でもある。
やはり、自分の不完全さと向き合うことが、最善の処方箋であるのだ。
以下余談。
中学の時、ある教科担当の教諭がアル中だと噂になった。
授業中、呼気が酒臭いことはなかったし、授業は面白くて、分かりやすかった。
ただ、用務員室に酒瓶を隠していたのは本当だったらしい。
高校に入学した時に、その先生の娘と同級生になった。
勉強も出来て、明るくて可愛い子で、僕の友人と高校時代から付き合ってて、大学を卒業した後、結婚した。
そして、先生は、定年退職後、酒気帯び運転で事故を起こしたと聞いた。
怪我人などなかったと聞いて、良かったと思っていたが、その後しばらくして、先生は、肝臓を悪くして亡くなってしまった。
孫の顔など見たかっただろうにと、もう少しお酒を控えることは出来なかったものかと考えたりもした。
デンマークという国
「偽りなき者」でタッグを組んだトマス・ビンターベア監督とマッツ・ミケルセンが
再タッグを組んでアカデミー国際長編映画賞を受賞した作品。
またあの苦しく辛い内容のものになるのかと否が応にも期待しちゃいました。
そういう意味では、見事に裏切られました。
一定量のお酒ですごく能力が上がることを証明することにのめり込むおじさん達の話。
このデンマークは何歳からでもお酒が飲める国らしく
そういう背景を知ると、この作品の意味がよく分かってきます。
酒に対する付き合い方次第で、人生を大きく変えることが出来て
良くも悪くも酒を中心に生活が進んでいっちゃいます。
酒の功罪は表裏一体。
ラストシーンがそれを印象的に表しているように感じました。
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