「趣のある映画」アナザーラウンド Croさんの映画レビュー(感想・評価)
趣のある映画
割と高評価であらすじを見る限り「面白そう!」となっての視聴。大人になっても変わらない友情がたまらなく、それでいて「お酒を飲んで授業をしたら上手くいくか」を論文と実験の為に行動に起こす。という全体的なストーリーは好奇心が擽られる。
ただ、その論文の部分を主軸に最後まで構成されるストーリーかと思いきや最終的には「お酒との程よい付き合い方」的なものに落ち着く。落ち着くのだが、それまでの過程には"映画にしては地味で、それでいてありふれた人生"が濃密に、そして緻密に詰まっていると思う。
主人公の境遇はなんというか、父にそっくりなので「親父もこんな気持ちだったのかなぁ」なんて思いながら観ていた。淡々と流れる重苦しくも底抜けに明るいような、なんとも言えない雰囲気がたまらなくいい。
「お酒を少量飲んだら上手くいくか」というシンプルな題材の映画かと思いきや、一人の男の人生を覗き見るような、そんな不思議な感覚に襲われる。泣けるようなシーンがあるかと言われたらそうでもないし、強いメッセージ性があるか?と聞かれたら首を傾げる。名作か、というとそこまでではないんだけど、感想を簡潔にまとめるのであればやはり"趣きのある映画"になるのではないだろうか。
全体に流れる空気感はとてもよい。邦画はもちろんとして、ハリウッド映画にも出せない独特な空気感だと言える。
最後のシーンが全てだと思う。何かある訳では無い。それでもあのダンスに魅了されたことが、この映画の本質のように思える。
あの実験をする前は遠慮してか恥ずかしがってかダンスを踊らなかった主人公が踊れた理由、なんてのを考察することすら野暮に思えるような。あらゆる感情が乗せられたダンスを見て「考えるな!感じろ!」と突きつけられたような、そんな気がした。