劇場公開日 2021年9月3日

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「人生に乾杯!」アナザーラウンド 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人生に乾杯!

2022年3月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

幸せ

お酒は好き?
好き。
毎日飲む呑兵衛ではないけど、仕事終わって夜ご飯に飲みたい時は飲むし、友人らとの飲み会はやっぱり楽しい。
飲む量は適度に抑えて飲んでいる。好きなのは、缶チューハイ1~2杯か、梅酒1~2杯か、生ビール1~2杯。その時の気分に応じて。
まあ勿論、二日酔いになったり、リバースしたり、過剰な飲食が原因で身体を壊した事もあったけど、適度に飲めばウキウキ楽しいし、いい気分。
お酒は飲んでも飲まれるな。
さて本作は、そんなお酒に纏わるユニークなデンマーク映画。
昨年度のアカデミー国際長編映画賞受賞作。
(この場を借りてだけど、『ドライブ・マイ・カー』、本年度アカデミー国際長編映画賞受賞、おめでとうございます!!)

冴えない高校教師のマーティン。授業内容はつまらなく生徒から不人気で、保護者からも槍玉にあげられるほど。
家庭でも妻子とすれ違い。
これらを改善出来る何かいい方法はないものか…?
ある時、友人らとの飲み会で面白い話を聞く。
それを友人らと実験。…いや、“実飲”。
ノルウェー人哲学者の理論で、
“血中アルコール濃度を常に0.05%に保てば、仕事の効率が上がり、人生が楽しくなる”。

…って、本当??
要は、ほろ酔い気分のまま仕事するって事でしょ…?
私の職場じゃ絶対NG。必ずアルコールチェックをするので。反応あれば、その日の業務は出来ない。強制的に。
と言うか、全ての仕事が基本そうだけど。
0.05%というのは劇中の説明では、ワイングラス1~2杯。でも、お酒の種類(アルコール度数)によっては当てにならないと思うけど…。
しらふで仕事なんかやってられるか!…とよく言うけれど。(言うか…?)
一応ルールは決めて。飲むのは仕事中だけ。18時以降と週末は飲まない。
でもねぇ…。

しかし、実際やってみたら、あら不思議!
つまらなかったマーティンの授業が、ほろ酔いのお陰か面白く評判となり、人気に。
家族との関係も円滑良好に。
活気や活力が出て、お酒様々!
嘘みたいに実験成功。

監督トマス・ヴィンターベアは、世界の歴史で酔った人が偉大な功績を残した事実に興味があり、本作の起点になったという。
人とお酒の仲は大昔から。言わばお酒は、人の運気を上向きにする友。
…でも、いい事ばかりじゃない。その“友”に溺れてしまったら…?
アル中。
いつぞや日本の大臣が世界が見る中で、へべれけ醜態を晒した事あったっけ。
飲酒運転が起こす悲しい事故。
お酒の飲み過ぎで、自分の身も心も、周囲も崩壊させる。

お酒を飲む人なら誰だって分かる筈。
お酒を飲み過ぎると、ついもっと飲んでしまう。
実験は成功。すると、ついついお酒の量が増えていってしまう。
歯止めが効かなくなる。0.05%までだったのが、いつの間にか0.1%を超え、さらに…。
目に見えて酔った状態。ふらふら、呂律も回らない。
校内で酒瓶が見つかってしまう。
デンマークでは飲酒の年齢制限が無い故、学校で生徒たちの飲酒が問題視されているという。一昔前の不良ならまだしも、日本じゃ考えられん…。
生徒の飲酒とされたが、まさか飲んでたのが先生…!
過度の飲み過ぎが遂に家族にバレ、思わぬ事態に…。
飲酒で上向きだった仕事や人生が一転、下り坂に…。
お酒は人の“友”ではなく、人を惑わす“麻薬”…?

名作『偽りなき者』のヴィンターベア監督と主演マッツ・ミケルセンの再タッグ。クオリティーはお墨付き。
ユーモア、シリアス、悲哀、しみじみを織り交ぜて、風変わりな題材や登場人物らの悲喜こもごもを見つめたヴィンターベア監督の演出が絶妙。
抑えた演技に“酔いどれ演技”…ミケルセンの名演も言うまでもない。お酒を飲む姿や仕草だけでも絵になる。

失敗事を、お酒のせいにすればいい…と何かで聞いた事があるが、そうは思わない。
お酒を飲むのは、自分自身。
失敗も成功も、自分の責任、自分の賜物。
本作は何も、お酒を飲み過ぎちゃった中年愚者たちの哀れさを咎めたものではない。
監督は、お酒云々ではなく、人生を前向きに生き生きと過ごす事がどんなに素敵な事かを描きたかったという。
ラストのダンスはその表れ。人生に喜びを見出だして。(元プロダンサーというミケルセンの華麗なステップにも注目!)
撮影中に不幸に見舞われた監督の心情も込められている気がした。
ミケルセンの娘役で監督の実娘が出演する筈だったが、交通事故で死去。
どんな気持ちだったろう。本当は撮影など手にも付かないほどだろう。
が、気心知れた盟友たちの支えで、作品を作り上げた。
何かを失っても、穴を埋めてくれる何かが人生には必ずある。
人生には様々な味のお酒がある。失敗、悲しみ…苦い味。成功、喜び…この上ない美酒。
それらへ込めた人生讃歌。
人生に乾杯!

近大
琥珀糖さんのコメント
2022年8月10日

今日は。
マッツ・ミケルセンは最近なんだかとても素敵に感じます。
ラストのダンスも本格的な跳躍でしたね!
〉お酒は飲んでも飲まれるな!!
本当に、それを強く感じました。

琥珀糖
レモンブルーさんのコメント
2022年3月30日

コメント有難うございますm(_ _)m
実は 私はお酒はあまり好きではありません💦私も運転する仕事なので、飲まないですが、一番の理由はホロ酔いが続かず、飲めば飲むほど、醒めてくる…?ので、面白くありません(笑) お酒を飲む理由が無いのです…。だから この主人公達を とても羨ましく思いました😅

レモンブルー
レモンブルーさんのコメント
2022年3月30日

近代さんのレビュー読んでいたら泣けて来てしまいました😂 そうですね!様々な思いが込められた 人生賛歌!!!今も あのラストの余韻が蘇って来ます。いい映画だったなぁ…

レモンブルー
talismanさんのコメント
2022年3月30日

近大さんのレビューに共感嵐🌀

talisman