「とびっきりの祝杯を」アナザーラウンド ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
とびっきりの祝杯を
酔うと脳が活性化するというぶっ飛んだ設定に惹かれて鑑賞。
教える立場としてのモチベーションが上がらない教師4人がお酒にハマっていく話をベースに映画は進行するのですが、1章では体験、2章では快感、3章では喪失と希望とテーマごとに分けているのに、何の違和感もなく物語が進んでいく見せ方がお見事だなと思いました。楽しいと辛いが入り混じって感情をメチャメチャにされちゃいました笑
最初の飲酒ではむしろ授業に支障をきたしてしまったのに、何度か飲んだり、飲む量をわずかに増やしたりすると、効果が発揮され授業を楽しいものにできたという感覚がきっかけとなり、血中アルコール濃度を少し上げていきます。そこからの授業はヒトラーを用いた授業で爆笑を掻っ攫ったり、生徒を煽ったり、超優しく接したりと、四者四様ですが、それぞれがうまくいきます。ここでは、お酒を飲むことにより、何気ない話が弾むような居酒屋の光景を映しているように思えました。
そこから家族の関係も取り戻していくマーティンですが、更に更にとお酒の量を増やしてしまい、全員飲んだくれてしまいます。店で暴れ回り、小便を垂れ流したり、家族に怒鳴りつけたりと、一気にお酒の怖さを映しているように思えました。完全にアルコール依存症だなと思ってしまいました。役者の方も酔っ払いの映像などを見て真似されたようなのですが、もう酔いどれそのまんまだなと思い関心しました。
そこから依存症から立ち直っていく様子も映していきます。しかしその途中で、立ち直れず死んでしまう人もいる恐怖を同時進行で描いていきます。死を悟って海へと出て行くシーンは芸術的にも見えてしまったので、この映画とことん凄いなと思ってしまいました。
そして葬儀後、少しだけお酒を飲む残された3人、その外ではお酒の効果を活かした授業で伸びた生徒たちが浴びるように飲んでいて、そこに3人も突っ込んでいきます。「お酒は適度に、だけど美味しい」というのを体現するようにダンスを舞うマーティンは映像的にも映えて、観ている側も興奮してしまうような感情を覚えながら映画は静かに終わっていきます。
自分は普段お酒を飲まないのですが、この映画を見ているとあぁ〜美味しそうだなと思ってしまいました。人生に幸せを提供する、とても心に残る映画でした。デンマーク映画侮れん。
鑑賞日 9/4
鑑賞時間 18:40〜20:45
座席 G-8