劇場公開日 2021年8月20日

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「新しい明日を生きることは、決して過去を冒涜することではない」Summer of 85 CBさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0新しい明日を生きることは、決して過去を冒涜することではない

2021年9月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

カンヌ出品作とのこと。

「僕はいかれてる。やっと気づいた。死に興味があるなんておかしい。・・・僕は、ある死体にたましいを砕かれた」 という不穏な始まり。「死体が生きていた頃のことに興味がなければ、この先を観ることはやめといた方がいい。君の物語じゃない」・・この冒頭のセリフはいい。少なくとも俺は、俺の物語じゃないんだけれど、観てよかった。すっきり心に届いてきた。

不穏な冒頭の数シーンから、快適な音楽を背景にしたオープニング。つかみはばっちりだった。上手いなあ。以降、本作は、2つのストーリーが交互に描かれる。ひとつは、主人公アレクシとダヴィドの出会いから "ある日" まで。ふたりが親友となり、親友以上の関係となっていく明るく幸せに満ちた前半と、その破綻を描く後半。もうひとつは、その "ある日" から現在までを描くストーリー。

レビュアーの多くがすでに書いてくれているように、「青春映画だった」 にまったく同感だ。疾走する愛とその破綻と悲劇的な結末。自分が得意でないというか、好きなジャンルではないと思っていたが、すごくすんなり楽しく観ることができた。この感覚は、イ・チャンドン監督の「オアシス」に出会ったときに感じた感覚に似ている。

この映画でもうひとつ多くの方がすでに書いている、ロッドスチュワートの曲「セイリング」の絶妙な使われ方。クラブミュージックがガンガン鳴る中で、ヘッドフォンで聞く「セイリング」。どんなに愛しても二人でいても満たされない。いつもいっしょにいたかった。触れていたかった・・・主人公の心情をまさに歌う歌詞。海の向こうの懐かしい場所h僕らはわたっていく。君に会うために危険を冒して・・・"ある日" を歌うかのような歌詞。ほんと、うまい。

ラスト。新しい愛にむかうことを示唆するシーンは、自分も60歳超えているので、観た瞬間には「あれ?もうそんな展開に?」と違和感を感じたが、それってずれてたと観終わって気づいた。「新しい明日を生きることは、決して過去を冒涜することではないんだ」 という宣言にも聞こえて、心地よいエンディングだったと理解できた。

いやあ、なんか、観てよかった映画だった。

CB
たなかなかなかさんのコメント
2021年10月10日

CBさん、コメントありがとうございます😊

自転車とバイクの対比は、確実に意図して行なっていますよね〜。
こういうことをスラッと出来るのが、フランソワ・オゾンが名匠と讃えられる所以なのでしょうねぇ🤔

たなかなかなか