「魔法(ジブリ)の再奏」劇場版 アーヤと魔女 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
魔法(ジブリ)の再奏
スタジオジブリ最新作は異例尽くし。
同スタジオ初となるフル3DCG。
劇場公開ではなく、昨年12月30日にNHK総合で放送されたTV作品。
2014年に製作部門が一旦休止し、2017年に再開。作品としては2014年の『思い出のマーニー』以来。
そう長くはないブランクとは言え映画製作の休止、髙畑勲の死、『千と千尋の神隠し』の記録抜かれ…色々あったジブリだが、何はともあれまた新作が見れる事は素直に嬉しい。
監督は宮崎吾朗。
原作は父・駿が監督した『ハウルの動く城』と同じダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジー小説。
『ハウル~』は戦争や文明社会へのメッセージ、ラブストーリー要素があり、どちらかと言うとちと大人色だったが、本作は純粋な子供向け魔法ファンタジー。
1990年代のイギリス。赤ん坊の頃から孤児院で暮らす少女、アヤツル。通称、アーヤ。
ある日、ヘンテコな男女に引き取られる。何と、二人は魔法使いと魔女!
いつか魔法を教えてくれる事を約束に目を輝かせて働くが、こき使われる毎日…。
誰の言いなりにもならない! アーヤの反撃開始!
孤児院暮らしとか、引き取られとか、勝手に魔法薬の調合とか、話的にはあるある。魔法ファンタジー物の寄せ集め感は否めず、新味は無い。
でも、愉快なのはアーヤのキャラ。
とにかく、活発、おマセ、少々生意気。そこにジブリヒロインらしいポジティブさ。もうお察し下さい。
そうでないとこの家ではやっていけない。やられたらやり返せ!
魔女のベラ。画に描いたような意地悪魔女。怖い顔の恰幅のいい体型で、ガミガミガミガミ、あれこれうるさい事しか言わない。
意地悪魔女vs活発小生意気少女!
ベラには時折イラッとさせられるが、そんな彼女が唯一恐れているものがある。
一緒に暮らしているマンドレーク。一見顔色悪く、無口、痩型ののっぽで、ベラの尻に敷かれている感じもするが、ベラが常々気を遣うほど怒らせると怖い。いつも不機嫌そうな顔で、口癖は「私を煩わせるな!」。
でもこのキャラが、意地悪魔女vs活発小生意気少女にいいスパイスとなっている。
魔法の世界なので、使い魔的な動物キャラも勿論。ジジのような黒猫のトーマス。性格、臆病で少々図々しい所あり。
アーヤはオーディションで選ばれた新鋭・平澤宏々路が射止め、ベラ=寺島しのぶ、マンドレーク=豊川悦司、トーマス=濱田岳が“声”達者ぶりを聴かせる。
トータル的には…
話はあるある。
キャラは悪くない。
CGクオリティーもそう悪くない。
つまらなくはなく、普通に楽しめる。
だけどこれはTV作品だから良かった。劇場作品だったら…。
話の展開も中途半端。思わず、「えっ、ここで? これで終わり?」と思ってしまった。
ベラとマンドレーク、そして赤毛の魔女のロックバンド“EARWIG”。
その赤毛の魔女とアーヤの関係性もすぐ分かる。
と言う事はつまり、アーヤも…。
びっくりなのは、メインビジュアルのアーヤがマイクを持って歌っているようなシーンが作中ナシ。
何か切り出すと、肩透かし点も…。
本作を起点にしてTVシリーズを作るのか、
今冬に続編作るのか、
今度は従来通り大スクリーンに魔法をかけるのか。
(それとも単発か…?)
本作の動向も気になるが、ジブリの再奏にも期待したい。