「遥かなる座へ、挑む!」キングダム2 遥かなる大地へ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
遥かなる座へ、挑む!
コミックの実写化はブーイングがお決まりだったが、そうではない作品も増えてきた。『るろ剣』や本作然り。
勿論賛否両論あれど、原作ファン、映画ファン、一般観客から概ね好評。スケール、アクション、熱量、エンタメ性…日本映画の底力を見せた前作。
その続編。でも、単なるヒットしたからの続編ではない。
前作でこれからを大いに盛り上げ、コロナ禍撮影を乗り越え、いよいよ“天下の大将軍”へ踏み出す。
待望とさらなるこれからへ期待の続編。
役名の難しさを除けば、話自体はシンプル。前作もそうだが、今回はさらに。要は、
ロ◯ア…じゃなくて、強大な隣国が攻めてきた。それに立ち向かう。
前作は主人公・信の立ち上がり、仲間たちの出会い、玉座奪還のストーリー性を押し出していたのに対し、今回は全編のほとんどが戦場。アクションに次ぐアクション。国対国の戦国絵巻色が濃くなった。
でも、今回だってドラマはある。新しい仲間。戦場で五人一組で闘う。
信を筆頭に、腕に自信ありの強者五人衆!…否。集ったのは、“最弱の伍”。
同郷の尾(び)兄弟、頼りない伍長の澤圭(たくけい)、そして子供のような風貌で無口の謎のもう一人。
余り物のような寄せ集め面々で、戦場で闘えるのか…?
へっぴり腰の尾兄弟だが、兄弟愛は強く、お互いの為なら勇気を振り絞る。
優しい性格で丁寧口調の澤圭だが、これまで戦場を生き延びてきた。知恵と経験で五人をまとめる。
岡山天音と三浦貴大、濱津隆之が好演。
そんな中、異彩を放つ一人。
子供か?…と思われたが、実は女。誰とも関わろうとせず、何より悲しい目をしている。
何故、この戦場に…? ある理由を秘めて。
その実力のほどは…?
トーンタンタンタン…と奇妙な舞いをしてから繰り出す、人間離れした華麗な動きと強さ。
一体、何者…?
その正体は、たった一人で小国を相手にしたという言い伝えを持つ暗殺一族。“悲しみの一族”とも呼ばれる、“蚩尤(しゆう)”。
その一人。原作でも人気のキャラクター、羌(きょう)かい。
演じるのは、清野菜名。
アクションに長けるのは聞いていたが、劇中披露したキレのある動き、しなやかさは圧巻。(ちなみに彼女にアクションを教えたのは、前作でクライマックスの強敵・左慈を演じた俳優兼アクション指導者の坂口拓)
アクションだけじゃなく、凛とした魅力と佇まい、悲しみを滲ませた眼差し。若手実力派が魅せる演技力。
羌かいが戦場に赴いた理由とは、復讐。姉妹同然に育った羌象(きょうしょう)との悲しい過去…。
今回、ドラマ部分を大きく担う。
彼らが立つのは最前線も最前線。敵軍と最初に真っ正面からぶつかる。
決戦の地は、蛇甘(だかん)平原。原作コミックでも信の初陣で、人気の高い“蛇甘平原編”が今回の本筋だとか。
秦軍の総大将は、“豪将”と呼ばれるひょう公。
魏軍の総大将は、秦軍六大将軍に並ぶ戦の天才と呼ばれる呉慶(ごけい)。
知将対豪将。戦に勝つのは、緻密な智略か、大胆な戦略か。
奇抜なメイクで最初分からなかった小澤征悦もさることながら、豊川悦司がさすがの存在感を放つ。
今回の新キャストで特に良かったのは、清野菜名とトヨエツと、後もう一人。
信の直属の上官、縛虎信(ばくこしん)役の渋川清彦。
特攻好きのヤベー奴で、歩兵の命など何とも思わないヤな奴と思っていたら、最後は熱い信念と勇ましい姿を魅せてくれた。
遂に、突撃の号令。信の初陣で、壮大な蛇甘平原の闘いの始まり。
縦と槍でまずは構える魏軍に対し、秦軍は真っ正面から勢いで特攻。
誰よりもその先頭に立つのは、信。
無謀とも思えた第一撃は、信の猛攻で敵の陣形を崩す。
そこに雪崩れ込み、大合戦。予想以上に奮闘。押す。
が、数で勝る魏軍。押され返し、戦車部隊に苦戦。あっという間に秦軍は、最前線は壊滅状態。
そんな中、唯一信たちは奇策で戦車部隊を撃破するも、敵の真っ只中に。
完全孤立の絶体絶命。いや、それとも…?
魏軍の攻撃は続く。
それに対し、ひょう公将軍は援軍を送らないどころか、「待機じゃ!」。
圧倒的劣勢だが、風向きが変わる瞬間を待っている。反撃の突破口となる、異彩を放つ火を。
夜が明け、そして信たちが動いた…。
依然敵の真っ只中。この危機的状況を、寧ろ活かす。
目指すは、敵の副官が構える丘の頂き。そこさえ潰せば…。
たかだか十人ほどで、敵の本陣へ。
この突破口となるやもしれない報せを聞き、秦軍も再攻開始。
敵の渦中で苦戦する信たちの元に、縛虎信らが加勢。一気に頂きを目指す。
劣勢のままか、突破か、その行方は…?
広大な平原を舞台に繰り広げられる大合戦。スケールや迫力は前作を越え、洋画の史劇スペクタクルに劣らない。優勢の魏軍に劣勢の秦軍が挑む姿が、洋画に挑む邦画…強いては本作の意気込みを地で行ってるように思えた。
主要キャスト各々が魅せるアクションやドラマも見応えあり。
佐藤信介監督の手腕は、続編への期待に応えてくれたと言えよう。
が、全てが前作を越え…という訳ではなかった。
先述の通り、ストーリー性は前作の方が面白味があった。
前作で主人公以上の魅力や存在感を示した若き王・嬴政(えいせい)=吉沢亮、忠実な側近・昌文君(しょうぶんくん)=髙嶋政宏らは王宮に留まり、圧倒的に強く美しい山の王・楊端和=長澤まさみに至っては出番ナシだったのが残念。まあ今回、そういう設定なのだから仕方ないが。
しかし!終盤また再び動きを見せる大沢たかお演じる王騎(おうき)。“天下の大将軍”の名に相応しい強さと見せ場を遂に見せてくれるかと期待したが、またしても影ながらの威圧のみで、またまたお姉言葉が印象に残っただけのお預け。次こそ!
山﨑賢人も相変わらず、ウザいほど熱い。一本調子でキャラ像や演技に賛否の声あるが、個人的にはこれはこれで良い。この無鉄砲さや熱演が何だかんだエモーショナルにドラマを動かす。
そして確かに、本作は彼の成長のドラマだ。
勢いのみで闘う信。王騎に言わせれば、全くの期待外れ。天下の大将軍へなど遥か遠い。
闘いとは、将軍とは、何十万と入り乱れる軍を、知で動かし、勢いでも動かし、戦局全体を見渡す。
まさしく今、それが行われている。
多くの血が流れ、命が失われた。
これ以上の犠牲は無駄。双方にとって。
決着は、ひょう公と呉慶、両将軍の一対一の直接対決。
これが、闘い。
これが、将軍。
天下の大将軍には、まだまだ遥か遠い。
が、信はこの闘いで確かなものを得た。確かなものを見た。
天下の大将軍への、確かな第一歩。
ラストシーン、遂に姿を現したは、前作でも名前のみ登場していた呂不韋(りょふい)。
後々信や嬴政の脅威になるという丞相。
佐藤浩市の不敵な存在感。
次への期待が否応なしに盛り上がる。
そんな“次回へ続く”!
さらに、国内のコミック実写化の王座に君臨していた『るろ剣』が終了した所へ、新たに始まったこのシリーズ。
エンタメ性や熱量は申し分ナシ。本シリーズも、“天下の邦画エンタメ王座”に挑む。
邦画の楽しみがまた一つ増えた。
にしても、前作もそうだったが、役名の難しさ…。
意地でも漢字表記にしようと、変換や検索にチョー苦労。(だけどどうしても、羌かいの“かい”とひょう公の“ひょう”が表記出来なかった…)
レビュー泣かせの作品でもある…。