ヤクザと家族 The Familyのレビュー・感想・評価
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"排除思想は拳よりもはるかに強い"と伝える力作だけに、上映開始5秒が台無しすぎる…
基本褒めです。よくできてます。なので、最初にほぼ唯一にして最大の不満点。詳しくはネタバレになるので避けますが、上映開始のシーンと終盤のシーンが見事にシンクロします。となると、開始5秒くらいで「ヤクザと家族 The Family 制作委員会」って出るんですよ…。これ本当に悪手。最初に出すんだったらまだしも…監督名(fujii mitihito film)なら主張したいのもわかるけども…なんで製作委員会の名前をあのタイミングで入れる必要があったのか非常に不満です。映画の世界に没入させるべきです。ましてや、オープニングが重要な作品なのでなおさら。ちなみに、タイトルバックの出し方は必然を感じたし、演者の名前を手際よく音楽とカットに合わせて出していくのは良かったと思います。
ヤクザや任侠映画はあんまり得意ではないのですが、そこに力を入れた作品ではないので非常に見やすく仕上がっていると思います。とはいえ、前半は「これはどうやってとったんだ?」というワンカットチェイスシーンなど迫力も内包しており、さすが藤井道人監督だなと思いました。『デイアンドナイト』でも感じましたが、藤井組(ヤクザ映画なのであえてこの書き方をします)は色彩の使い方が非常に豊かで、白と黒とその中間色の使い方で、その登場人物の心理を暗に示すという点で非常に優れていると思います。また、カメラの撮り方も非常に面白かったです。主人公が葛藤しているところでは、不自然に揺らして撮ってみたり、急に主人公目線で下から見上げる形で撮ってみたりと、非常に工夫がなされていると思いました。
さて、自分はヤクザは大嫌いです。不良も大嫌いです。街で喧嘩しているチンピラもご時世関係なく飛沫飛ばして大声で喋る人間も嫌いです。ヤクザにならざるを得なかった、ヤクザにしか居場所がなかった主人公のような人間もいることは理解しているつもりなのですが、基本的にはいなくなればいいと思ってます。大方がそう思っているでしょう。そういう思想だからこそ刺さる作品でした。
自らがヤクザになることを望み、絆を深め、血縁関係を超えた家族的な繋がりを構築するも、時代が進むにつれて法の整備・社会通念のアップデートによって居場所をなくしてしまうという実は社会的なメッセージを含んだ作品でした。決してヤクザ善として描くわけではなく、問題提起するには非常に絶妙なバランスで描かれていました。
ヤクザが絡んだ家族は携帯電話すら契約することが出来ない、足を洗ったといっても少しでもかかわりがあったと思われるだけで職場からも居場所を失っていく、SNSが同調圧力を生んでいく…果たしていいのかということで、面白かったですね。
SNS描写については、直近で『許された子どもたち』を見たところだったので、ややリアリティにかけるかなと思ったところもありましたが、『新聞記者』よりは良かったです。
綾野剛さんはもちろんですが、尾野真千子さんの娘を演じた小宮山莉緒さんの透明感に驚きました。今後も注目していきたい女優さんです。
ラストカットは居場所を見つけたと解釈しても良いし、こうでもしないと見つけられなかったのかとも解釈できるし、それでも見つけられたという喜びもちょっとあって、ビターハッピーエンドでした。いい余韻です。
見応え十分!でも、殺される理由が弱すぎる。
綾野剛演じる主人公の20年間を描いた作品で、その時々に様々なエピソードが描かれており、とても見応え十分な作品でした。
ただ、その中でも、気になる点が2点ありました。
1、舘ひろしがヤクザの親分に見えない。
舘ひろしの口調に品があるのか、ヤクザの親分には違和感を感じました。
2、綾野剛 演じる主人公が市原隼人に殺されるが、殺される理由が弱すぎる。
そもそも写真がSNSに載ってしまったのは、後輩が撮影したのを、市原隼人が許したのが原因だし、また、世の中には離婚をする夫婦は沢山いるのに、それで、昔から慕っている先輩を殺すのか???理由が弱すぎる!
この世のありとあらゆる哀しみを集めたような傑作
SNS上で「どうして綾野剛にはこんなに世界の哀しみを背負わせたがるのか」みたいな書き込みを見て、本当にその通りではないかと思うほど、この世のありとあらゆる感情を集めて背負わせたような2時間半だった。
海が美しく、空が広い、小さな地方都市。
前半を占める2つの時代にはその美しさが際立つようなカットが多く、後半の2019年になると途端に画角が狭くなる。
グザヴィエ・ドランの映画みたいにインスタグラムサイズの真四角ではないにしろ、単純に横幅が狭まる分窮屈な印象を受ける。14年間で変わってしまった世界に戻った賢治の生きづらさが視覚だけでストレートに伝わってくる。
そんな小さな街にもヤクザは居て、"シマ"争いを繰り広げていて、ヤクザの中にも師弟関係のような強固な上下関係がある。そもそもヤクザとそれ以外の人間で同じ世界で生きているはずなのに、そこには法や条例と言った見えない境界線で明確に世界を違えている。
小さな街の中に見え隠れするいくつもの分断。だからこそ天涯孤独になった賢治が思わぬ事態がきっかけになったとは言え、本当の父子・兄弟のように柴咲組の"家族"を大切に想い、一員となってゆくさま、そして由香と彩と文字通りの家族になろうとしたさま、どちらも切実に迫ってくるものがある。
また、タイトルロールが素晴らしかったと思う。賢治が柴咲組に入ることになって父子の契りを交わす場面、そして往年のヤクザ映画のように中央に縦書きでクレジットを出す。フォントも含めて、もはや古典的な型の一つのようなそれを、最新の映画で観ることができるとは思えなかったし、音楽や画の迫力も含めてただ痺れた。格好良すぎる。
役者陣は本当に全員凄まじいけれど、特にベテラン俳優の皆さんの貫禄が流石です。
舘ひろしさんの組長。佇まいだけで様になる格好良さ、沢山の組員達を大切にする優しさ、いざと言うときははっきりと物申すその視線や台詞の凄み。そして老いてゆき、見る影も無くなっていく姿。最期まで近くに居た組員たちはさぞかし見ていて辛かっただろうなと想像できるほどだった。
個人的には北村有起哉さん演じる中村が凄まじかった。特に後半。あんなに真面目なヤクザ居るのかなって序盤でクスリと笑えるような姿だったのに、後半でシャブをシノギとして手を出さざるを得なくなって賢治と殴り合うところ。
真面目なだけでは、綺麗事だけでは生きていけないことをその人生全てで表していたし、結局自身も手を出していたことがわかるたった数秒のシーンの衝撃たるや。
岩松了さん演じる大迫刑事のダーティーさも素晴らしかった。「裁く側」であるはずなのに「裁かれる側」とさえ上手くやりあって世を渡ってゆく、潔いくらいの悪人の一人だろう。
彼からはあまり感情が読み取れないというか、警察側でもヤクザ側でもないような、誰の味方や立場にもならずに自分の利のためだけに何でもやれてしまうような恐ろしさを感じた。終盤で、賢治たちが元ヤクザだとバレた時に職場にやってきた時、何故かその時本当に吐き捨てるような言葉や視線が本当に恐ろしく、印象に残った。
また尾野真千子さんと綾野剛さんの共演は毎回素晴らしいなと。カーネーション、Mother、最高の離婚と観てきて、本作もお二人だからこそだと思った。
賢治と由香のように一緒に居たいのにどうしようもできない、やり場の無い悲しさを抱えてしまったら、人はどう生きれば良いんだろうか。由香が泣きながら二度と会わないで欲しいと話す時の、和室のような敷居を踏み越えて後退り拒絶を示す動き、泣き声の壮絶さ、本当に辛いシーンだった。
(お二人にはぜひラブコメなど底抜けに明るい役などで共演も観てみたい…どこかの偉い人…)
賢治を演じる綾野剛さんの凄さは誰もがわかると思うし、ご本人も「集大成」と表すほどの芝居を同時代に拝見できる幸せを噛み締めながらスクリーンを見ていた。
元々すごく好きな俳優さんだし、舞台挨拶で同日公開の他の作品を挙げてタッグを組んでいるとつもりだと話されていたのが印象的で、綾野さんのそういう真摯な姿が本当に素敵だなと、改めて思った。
でも、それにしても、賢治の一生があんまりにしんどくて。「お前さえ戻って来なければ」と"家族"同然の人々に言われ、思われ、図らずも彼ら彼女らの人生も静かに狂わせ狭めていってしまったこと。ただ「家族になりたかっただけ」なのに。
本当に世界の哀しみを背負わせすぎではないかと考えないとやり過ごせないくらい感情が昂って、ただただ圧巻されて涙も出なかった。
それでも最後に賢治が手を下したことで、翼の手を汚すことなく守ったこと、そして翼と彩が出会って終わったのが良かった。
血の繋がった子と、血は繋がらなくても子同然の存在。賢治のことを「話そうか」と寄り添うラストショット。彼らが賢治を物語ることで、受け継がれるものにせめて救いを求めたい。
初日舞台挨拶でもその「継承」に基づいたメンバーだったのがとても良かった。
本作に限らず、血縁によらない共同体による物語が最近増えてきているように思う。どんな繋がりでも家族や友人や恋人に近い存在、名前のつかない関係性だとしても大切に寄り添って生きて救われる人がいる可能性を、様々なところで更に目にするような世の中になれば良いな(例えフィクションであったとしても)、と願っている。
なんとも悲しいストーリー
ヤクザの「哀」
主人公の人生に救いがほしい・・・
さすが、「新聞記者」の監督さんだけあって、
どっしりとした秀作でしたね。
俳優さんもよかったし、
殴られた顔の特殊メイク?なんかもリアルで
お金出して観る価値あるな~と思える映画でした。
ただ、私は主人公の人生に
あまりにも救いがなかったような気がして
お気に入り!とまではいきませんでした。
例えば、
「レ・ミゼラブル」のジャン・ヴァルジャンなら
やっとすべての苦しみから解放されて、
愛する娘の幸せな姿を見届けて天国に召されたし・・・
「レオン」の主人公レオンも
生まれて初めて愛情というものを知り、
愛する人を助けるがために自分が命を落としたわけで、
主人公にとっても人生の絶頂期に意味のある死に方だったと
自分自身を納得させることができたのですが、
今回の主人公は、いったいどうだったんでしょうね?
周りもけっこう迷惑被っちゃってるし・・・
翼をかばった結果だった?
とりあえずラストシーンで、
山本の娘が翼に父親のことを尋ね、
その気持ちを理解できるであろう翼が語ろうとするシーンは
少しホロっときましたが、
劇中で娘と山本が心を通わすシーンがあまりに少ないので
取って付けたような感じになっちゃいましたね。
せめて「ラストサムライ」のように
ラストヤクザとして華々しく散るなら慰めにもなったのですが、
なんか山本には救いがなくて残念でした。
結構いいやつだったのに・・・
なので感想としては、秀作だけど好みじゃないって感じです。
(ほかの映画とのバランスから評価を変更しました。)
金子正次の「竜二」を思い出しました
封切り初日、仕事帰りに期待に胸を膨らまして観に行きました。主演の綾野剛さんは圧巻の演技です。途中から山本賢治そのものに見えてきました。1980年代に観た伝説のやくざ映画である「竜二」を彷彿とさせてくれました。既に死を覚悟した金子正次が(封切り後まもなく癌で亡くなりました)、悲しさと焦りのようなものを一身に体現していた「竜二」。あの作品は僕は傑作だと思っていますが、本作は綾野剛さんの熱演で「竜二」に勝るとも劣らないと感じました。
また、北村有起哉さんも本当に良い。浅田家!でも家族を津波で亡くしてどうしようもなくなっているおじさんを好演していましたが、本作でもどこか寂しさを身にまとった感じが滲み出て、すごく良かったです。磯村勇人君も思いのほか素晴らしい、彼は良い俳優になれると思います。
一方、われらが舘ひろしさんはキャラが立ちすぎていて、やくざの親分というより、「舘ひろし」のままでした。彼が出てくると、一気に映画の中から現実世界に戻ります。今にも組事務所でハズキルーペをかけそうでドキドキします。こんなダンディーな日焼けしたやくざの親分は本当にいるの?とつっこみたくなりました。「暴力教室」の非行少年でも舘ひろし、刑事を演じても舘ひろし、「終わった人」でも異常にダンディーな現実離れした定年退職サラリーマンの舘ひろしでした。
とはいえ、昨年観た「ミッドウェー」では山本五十六を好演し、あの映画では舘ひろし臭さが抜けて本当に山本五十六になっていて、国村準さんにも負けておらず「オォ!」と感じたのですが、それは外人監督が日本のビッグスターに遠慮しなかったことで生じたものかもしれません。もちろん、僕は舘ひろしさんが大好きです。クールス時代の「朝まで踊ろう」はレコードも持っています(脱線しました)。
藤井監督は本当に才能に溢れていると感じました。これからもどんどん映画を撮ってください!応援しています。
ヤクザとは何なのか
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父親がヤク中の中自殺し、チンピラとして街をウロウロしてたところ柴咲組の親分に拾われた山本を平成から令和にかけての時代と共に描く話。
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私はヤクザ映画が大好きで、コワモテのおっさん達が罵りあったり、親子兄弟の盃を交わしたり、殺しあったり、とことんいかつくて口が悪くて凶悪な感じが面白いんですね。
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ただ、私もこのおじさんたちがなんでこんなことをしてるのかはよく分からず見てて、劇中2回ぐらいヤクザって一体何してるのかと聞くセリフがあるように、そんな「ヤクザとは一体何なのか?」を今作を見てそれぞれの答えを出す映画。
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前半の90年代から00年代はまだ、ヤクザへの取り締まりが厳しくなるちょっと前で、まだヤクザの勢いがある。なので私の好きなヤクザ映画の要素があって、掴みは最高。特に山本が盃を交わすシーンの音楽とこれぞヤクザという絵面とスタッフの名前が縦書きの明朝体(?)で出されるとこめっちゃ好き。
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後半は山本がある事で捕まり刑務所から出てきた2019年代を描くんだけど、暴対法の改正で時代は変化し、かつて勢いのあった柴咲組の衰退具合が悲しい。
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私は親分と兄弟のおっちゃんが前半で威勢よくクソガキとか言ってたのが、砂浜で金になるなんか(何探してたんだっけ?)探してる姿が辛すぎた。翼が柴咲組と敵対していた組に乗り込んで脅されても全く翼に効いていない、あそこも虚しい。
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社会はヤクザを完全悪として排除したけど、その人達は元々弱者でどこにも行き場のなかった人達。『鬼滅の刃』で言ったら、いろんな事情で鬼にならざるを得なかった/鬼になることを選んだ人達。そんな鬼に炭治郎は優しさを与えたりもして、『鬼滅の刃』が好きな日本人ならきっとこの映画も理解できるはず。
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ヤクザというものを排除したとて、歌舞伎町でキャッチしてるようなヤクザに変わるような勢力は出てくるし、盃を交わすという行為はないもの翼と山本は兄弟の関係だし。目に見える悪を排除したって、根本は何も解決しない。
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初めは白い服を着た山本がヤクザに入り真っ暗なスーツを見にまとい、出所後はグレーの服を着ている。その色でもヤクザの存在が善か悪か限りなくグレーであることを表してるのかな。
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最後の主題歌も最高すぎた!.
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ほんの少しだけ…
全体的には最高に良かった。
あっという間の14年間でシャバに出た時には浦島太郎みたいなね…。
当然、それだけムショぐらしの過酷さもあるんだろうけど、もっとバッチバチの剛さんも舘さんも堪能したかったからすこ〜しだけ物足りない。
圧巻なのは市原隼人と磯村勇斗。市原隼人に至っては、ここ数年は迷走していたのかどんな役も本来持ってる演技力が活かされずにいた気がする。
今回、ヤクザと家族では久々の市原隼人が帰って来た気さえする。
若くこれからな磯村勇斗は今の役者さんに多い、表情で演技するのが上手いと思った。最後のシーンは磯村勇斗さんにやられた。
舘さんはしっかり若手に席を譲りつつまだまだ健在で時折効かせる低音での恫喝は大声を出せばいいと思ってる若手には到底真似出来ない様な演技だと思う。
個人的には綾野さん目当てで鑑賞したがさすが綾野剛って感じだった。
ボロクソなシーンから女に甘えるシーン、出所後の年老いた中年や父親としての顔まで…これまで積み重ねてきた沢山の役柄が活かされている事は間違いないだろう。
舞台挨拶で『集大成と言っても…』などと言っていたが、ファンはもっともっと期待しています。
2021年始まって、まだ間もないが、今年の映画の始まりがこの作品で幸せです。
ヤクザの生き様
冷たい暴力
2021年、これを超える邦画は出ないでしょう
いくら時代が経とうと家族は家族
藤井道人監督の最新作。
びっくりしました。「宇宙でいちばんあかるい屋根」みたいなファンタジーで心温まる作品を作ったと思ったら次はヤクザだもん。でも、どっちも良い作品です。
ストーリーについては言うことなし。終盤の畳み掛けは最高でした。そんなこと以外は僕の語彙力では表現できません。脚本がしっかりしています。
そして役者陣の演技!これもまた上手いんですよ。一つ一つの表情や言葉の言い方、体の動かし方。全ての人がそのキャラクターになりきっています。子役の子も演技がうまかったです。綾野剛等々は言うまでもなく。
ラストは本当に記憶に残りますし全員に感情移入できる最高のラストでした。
是非見ていただきたい作品です。まっすぐな人間から潰れていくって本当に理不尽。
画力はある。役者もいい。けど話が面白くない。 といういつもの藤井作...
画力はある。役者もいい。けど話が面白くない。
といういつもの藤井作品だった。
主人公が家族、特に父親を求める背景が一切描かれず、家族というものが彼にとってなんなのかもわからないまま。
そこを描かないから結局単にステレオタイプのヤクザ像、家族像を壊すことがない。
主人公がヤクザになって初めて知る家族であったり、組長に惚れるエピソードとか、組員とのいざこざを経て絆を深めていく様とか、ユカとの生活への違和感だったり、いろいろドラマは作れそうな要素があるのに。
だから全然主人公に思い入れできず、冗長なアップの連続、大袈裟すぎる音楽に徐々に辟易してくる。
こういう結末を迎えても、まぁそりゃそうだろね、としか思えない。
それと街の描き方が気になった。
ヤクザって市民と切っても切れない関係だからこそ、実在の街か、どこをモデルにしてるのか想像させる何かがないと、14年の変化が伝わりづらいんだよな。なんか嘘くさくなっちゃう。
少し話そっか
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