ヤクザと家族 The Familyのレビュー・感想・評価
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けっこうよかった
ヤクザが暴対法によってこてんぱんにやられていて、どん詰まりもいいところだ。かつてのヤクザ映画は虚しさと享楽を秤にかけて、道を外れることの悲哀などがあったのだけど、現在のヤクザは何一ついいことがない。半グレにまで偉そうにされて、専業の漁師の方がずっとましだ。
SNSで追い込まれるのがつらいのだけど、人々はそんなにシンプルだろうかとも思う。
現代社会の冷たさが身にしみる
久しぶりに胸にズシッとくる邦画を観た。藤井道人監督は「デイアンドナイト」「新聞記者」「宇宙でいちばんあかるい屋根」といった、まったく異なるジャンルの映画をすべて上手に仕上げていて、本作品でもヤクザものという新たなジャンルを一級品の映画に仕上げてみせた。見事である。まだ34歳。凄い才能だ。
タイトルが出るところでは、活字の「ヤクザと家族」の後ろにある「My Family」の赤い筆字が深作欣二監督の「仁義なき戦い」を思い起こさせる。おそらく「仁義なき戦い」に敬意を評したのだと思う。
戦後から高度成長期に至る頃を舞台にした「仁義なき戦い」の時代なら、出所すれば昇進して若頭になってもおかしくないところだが、現在は暴対法や暴力団排除条例の締め付けで、組のために服役しても、必ずしも高待遇で迎えられるとは限らない。ヤクザには生きづらい時代になってしまったのだ。
指定暴力団に所属して有利なことは何ひとつない。所属していない連中、通称半グレと呼ばれる集団のほうが、暴対法や条例に引っ掛からないから、自由に稼ぐことが出来る。場合によっては悪徳警官や、警察と癒着しているヤクザに上納金を払って、ガサ入れの前情報などを貰えれば、摘発されずに生き延びることが出来る。つまり、今やヤクザは半グレのおこぼれを頂戴して生き延びているだけなのだ。地元の警察と癒着してシマを維持するのが唯一のシノギなのである。それができない組は悉く排除される。
社会で上手く生きていけない子供は、引きこもりになるかグレるかのどちらかだ。グレた子供は暴力と駆け引きだけが武器になる。しかしどんなに腕っぷしが強くても一匹狼は徒党を組んだ連中に勝てない。かといって組織に属すると、人と同調するしかない。だったら最初から他人とうまく同調して普通に生きていけばよかったのだが、今更悔やんでも仕方がない。子供の頃は、将来の自分がドツボにハマってしまうことなど想像できないのだ。
ドツボにハマってしまった主人公山本賢治を綾野剛がケレン味たっぷりに演じてみせた。運命を受け入れ、組に居場所をもらって組長を親父と呼び、義理と人情のヤクザ道を信じて生きる。切った張ったの危険と隣り合わせの毎日は、カタギには想像もできないほど神経をすり減らす。いつでも命を投げ出す覚悟をしたその表情は、本物のヤクザの迫力である。
映画の後半は出所した賢治が、変わってしまった世の中でどのように生きるかを描く。SNS全盛の状況は、もはや義理人情の通用しない乾いた人心が蔓延していて、賢治の出る幕はどこにもない。かつて居場所がなかった自分を拾ってくれた組は、組長の病気とともに衰退してしまった。警察と癒着して稼ぐ経済ヤクザだけがのうのうと生き延びている。賢治の居場所はどこにあるのか。
綾野剛は前回の出演作「ドクター・デスの遺産 BLACK FILE」では熱血刑事を演じ、その前の映画「影裏」では静かだが芯の強いゲイの青年を演じた。このところ芸の幅をますます広げていて、本作品では本物の若手のヤクザにしか見えなかった。凄い演技力である。脇を固めた舘ひろしや豊原功補、北村有起哉も好演。特にホステスを演じた尾野真千子が殊の外よかった。
SNSで忙しい社会では、賢治のような古いタイプの落ちこぼれが生きる場所はない。アナログとデジタルの違いなのか、現代社会の冷たさが身にしみる。暴力に満ちた暗い作品だが、終映後は不思議に清々しい気分になる。ある男がこんなふうに生きた。ろくでもない人生かもしれないが、否定されるいわれはないのだ。
期待通りでした👍
面白かった
反社というだけで、人権はないのか
現在の日本の問題をあらわした作品
長い年月を追ったからこそ
今回もレビューの高評価だけで見てみました。
主人公の生きた長い年月を追っていたため、登場人物も街も、色んなことが移り変わっていった様子が上手に表現されていました。
一番驚いたのは、赤ちゃんだったつばさ君。小学校低学年くらいから、次はハタチ過ぎくらいの青年になり、時代の流れを感じました。大人の登場人物が多少老けるより、赤ちゃんが青年になるほうが分かりやすく、
また主人公が登場した当初のチンピラっぽい?生活ぶりも似ているところがあって、お店での仲裁なんかをつばさ君がしていると、「時代が変わったな。。」と実感。映画の手法としてとても良かったと思います。
ただ、出所後、カタギの仕事に就けば家族3人平凡に暮らせるかといえばそんなに都合よくいかず、ここに主人公補正をかけず、安易に主人公を幸せにしなかった脚本は秀逸だと思いました。でも悲しい。。!せっかく、娘までいると知って、どうにか夫のように、父のように新しく人生を歩こうと就職もしたのに。。世の中甘くはないか。。と思いつつ、
最後は娘のあやちゃんが、花を供えにきてたつばさ君にお父さんのことを質問してくれて、つばさ君も尊敬していた兄貴のことだからちゃんとゆっくり話をしようとしてくれてた、その描写は唯一の救いでした。
来世がもしあるなら、今度は親子3人、穏やかに平凡な毎日を過ごしてほしいと思いました。
綾野剛に惚れる
後悔を背負った男達の生き様に涙した
『ヤクザと家族』というタイトルに「任侠映画か」と敬遠してしまってはあまりにももったいない作品。もっともこの映画は『仁義なき戦い』『アウトレイジ』『孤狼の血』のようなヤクザ映画とはかけ離れているヒューマンドラマである。そもそもヤクザになってしまったという十字架を背負い、また時代にあらがいながら葛藤し続ける人間たちの映画である。
特に役者陣の迫真の演技には鳥肌ものである。『新宿スワン』『日本で一番悪い奴ら』の要素を含みながら、年齢的にさらに深みの出た綾野剛、いぶし銀で男がほれ込むようなセリフ回しの舘ひろし(実際こんなカッコ良い親分いないはず)、世代をまたにかけた役でも何の違和感もない市原隼人、実直ながら柔軟に生きれない人間くさいヤクザを演じた北村有起哉。個人的にこの4名の演技は圧巻だった。
そしてあのクライマックスには涙が止まらなかった。まあ予想は出来たが。
何となく『友へ、チング』を彷彿させるものもあった。
藤井道人監督作品は、毎回公開初週に観るほど期待度ナンバーワンの監督で、今作も素晴らしい作品を出してくれた。余談だが、昨年の『宇宙でいちばん明るい屋根』は2020年ベストで、歴代でも上位5作品に入るほど好きな映画。改めて、彼の監督としての能力、また良作を引き付ける彼自身の魅力には恐れ入った。撮影監督の今村圭祐氏もまだ若いのに立て続けにこのコンビは凄い。
あと、どうでも良いが、山本(綾野剛)の娘役を演じた小宮山莉渚さんという女優さんが、
清原果耶さんにちょっと雰囲気似てて、藤井監督らしいキャスティングだなと勝手に思っていた。
※訂正
最初に書き込んだ際に、エンディング曲がいまいちスッと入ってこない為、4.5点としましたが、
それは藤井監督の前作との比較であり、これまで満点を付けた他の作品より明らかに劣るものではない為、5点に変更しました。
主題歌と共に
任侠モノではなかった。今回もファンタジー。
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