「ヤクザ映画の最終章」ヤクザと家族 The Family ken1さんの映画レビュー(感想・評価)
ヤクザ映画の最終章
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たまたまなんだろうか。ヤクザを描く新作が2本同時期に公開されているのは。作品が持つ視点は全く違うとはいえ、いまやヤクザ稼業は衰退の一途を辿り、風前の灯火だという現状は共通の背景としてクローズアップされている。
この「ヤクザと家族 The Family」で描かれる平成から令和にいたるヤクザ社会の20年間が明らかにするのは、昭和の映画を彩ったかつてのヤクザ像とは大きく異なり、若者からSNSで嘲笑され、社会から抹殺された存在としてのヤクザだ。
2016年に公開されたドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」は、衰退するヤクザのたちの人権について踏み込んだ作品だったが、本作はそういった面にも細やかに触れながら、これまでの経緯といま彼らが置かれている現状を非常にわかりやすく、かつ良くできた脚本に練り込みながら、描いていく。
家族の温かさを知らない主人公 賢治。表の社会から見放された彼がやっと見つけたヤクザ一家という家族は、時代に翻弄されながら、ついに消え去ろうとしている。裏社会の主役はヤクザから半グレへと移り、任侠は廃れ、ヤクザは家族も人間としての存在すらも消されてしまった。賢治が行き着く場所は果たしてどこにあるのか。孤独な男が心から求める家族、そして安らぎとは。
綾野剛×藤井道人というタッグが描き出す「真の家族」へのあくなき問いは、僕らがとうの昔に忘れ去ってしまった熱い何かを思い出させる。
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