劇場公開日 2021年1月29日

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「力作」ヤクザと家族 The Family ONIさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0力作

2021年2月11日
iPhoneアプリから投稿

若い監督が果敢にヤクザを主人公に社会的ヒューマンドラマを作り上げた。ひとことで「いい話」だった。ヤクザのクロニクルというとどうしてもコミカル要素もたっぷり入ったバイオレンス中心のものが多いが、こういうタッチのヤクザものは珍しい。あくまでヤクザを主人公にしたヒューマンドラマ。
『新聞記者』もそうだったけど、ここまで抑える必要あるのかというあの暗めのトーンで始終話が進む。1999年の出会いからヤクザという幻想の共同体がバラバラに追い込まれていく現代まで。この辺りスタートが70年代や80年代ならもっと陽気さもあろうものが、99年というと既に日本は終わりの始まりって感じでこのトーンがあってるのかも。ただ前半はヤクザ描写がそれほど面白みを感じない。リアリティドラマにいくのかアウトレイジにいくのかが微妙。かっこいいタイトルバックからすれば、様式のほうにいってもよさそうなのだけど振り切れてはいない。ただ、今回はストーリーがいい。後半、出所あたりからみな肩の力が抜けていい感じになり、磯村優斗や豊原功補は特に素晴らしい。綾野剛はカッコつけてるより抜けた芝居のほうがいいが今回ボコボコのぐちゃぐちゃな顔はいいかも。
そしてラストシークエンスとエピローグ。特に海から始まった映画が海でしめられた後のエピローグは予想してなかったので泣く。泣いたよ。

ONI