「クラウンからプリウスへ」ヤクザと家族 The Family bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
クラウンからプリウスへ
あまり、ヤクザ映画は好きではなく、本作も観る予定ではなかったのが、レビューが高評価だったので、鑑賞。現代の新しい視点でのヤクザ映画として、確かに訴えてくるものはあった。
時代の移り変わりと共に、ヤクザの車もクラウンからプリウスに変わり、次第に社会から排除され、落ちぶれたヤクザの哀愁を描いている。たとえどんな理由があるにしろ、人の道を外れてきたヤクザの末路としては、当然ともいえる結末。決して、美化してはいけないし、その点で感情移入は、全くできなかった。
しかし、ヤクザとして成り上がっていく主人公の短気で、不器用で、真っ直ぐな男の生き様を演じた綾野剛は見事!ヤンチャなチンピラの10代から、行き場のないヤクザとしての運命を背負った40代まで、陰を感じる風貌の彼だからこそ、よりリアリティもあった。
冒頭シーンで、物語のラストシーンもある程度見えていたが、そこに至るまでの主人公の紆余曲折を、藤井監督ならではのカットや演出によって、迫ってくる。しかしそれだけでなく、やはり脚本が素晴らしかった。
また、脇を固めていた、舘ひろし、北村有起哉、小野真知子、谷原隼人は、実際にこうした人物が存在するかのようなピッタリの配役。
その中で特に輝いていたのが、若手の磯村勇斗。これまでの甘い役柄とは、全く違うチンピラ役を、ベテラン俳優相手に、堂々と渡り合っていた。今後が楽しみな俳優だ。
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