「ヤクザは悪か、善か、」ヤクザと家族 The Family よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
ヤクザは悪か、善か、
物語は静かに始まる。
話の舞台はどこかは明言されないがどことなく広島を思わせるような地方の栄えた街のできごと。(もしかしたら広島を連想するのは多少虎狼の血の影響があるのだろう)
賢坊が肉親を亡くし天涯孤独の身になり、そこから柴咲組の子分となるまでは淡々と進む。
そして、親子の契りを交わす盃の場面は往年の任侠映画のような音楽と題字。
ここから前半は義理人情で突き動くベタながら見応えある任侠映画が続く。
そこから主人公が兄貴の罪を被って刑務所で14年過ごす。
そして主人公が出所してから物語ががらりと転調する。
この転調が面白い。
華やかで、そして、グロテスクで、しかしカッコいい、どこか憧れる。
そんな第一部とは打って変わって惨めで、辛くて、ひたすら暗い第二部。
画面も第一部と第二部ではだいぶ撮り方を変えていて同じ夜、同じ人を殺す場面でも印象がかなり違う。
今までヤクザといわれれば全て悪。
ヤクザに関わる人とは交際をもってはいけない。
ヤクザと交わりを持ったことで芸能界を引退した人もいた。
今思えばその人は「人として恩を感じた。セーフだと思っていた。」と語っていた。
しかし、この映画を観た後ヤクザだからといって一括りにして足を洗っても社会復帰も許さない、これはどうなんだとも思う。
確かに、ヤクザは警察の代わりに夜の街のトラブルを解決したりという治安維持の側面も持っている。(いわゆる、毒を持って毒を制す。みたいな??)
しかし、ヤクザがきっかけで抗争が起こり、多くの犠牲者が出ることも否めない。
全てが善でもなければ、全てが悪なわけでもない。
と、そう考えさせられた。
役者さんの演技も皆一流。
割と淡々と進むのに最後まで飽きる事なく観れたのは役者さんの演技あってのことだと思う。
演技も演出も音楽も全てにおいて日本映画の最高峰だと思った。
最後に。
この映画を観て僕は三人吉三という歌舞伎を連想した。
世界の裏で生きているアウトローたちが暗い夜に華やかな悪事を尽くして最後は因果応報とばかりに皆死んでいく。
僕の中で出た結論としては、この三人吉三で和尚吉三が言うこの一言である。
「悪いことは出来ねぇなぁ」