「【反社会的組織に身を置いた男と様々な”家族”の関係性の変遷を、暴力団対策法施行前後の彼らの栄枯盛衰の姿と共に描いた社会派作品。綾野剛は日本が誇る俳優である事を再確認した作品でもある。】」ヤクザと家族 The Family NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【反社会的組織に身を置いた男と様々な”家族”の関係性の変遷を、暴力団対策法施行前後の彼らの栄枯盛衰の姿と共に描いた社会派作品。綾野剛は日本が誇る俳優である事を再確認した作品でもある。】
ー冒頭とラストで、山本賢治(綾野剛)が、水中を静かに落下していく様が、大スクリーンに映し出される。彼は、その時何を想っていたのだろうか・・。
ラストの彼の穏やかな微笑みは、存在自体がこの世から消えゆく中、まるで彼が母体に帰っていく安堵感を表しているように、私には見えた・・。ー
◆1992年の、暴力団対策法施行時の事は、良く覚えている。
世間では、”これで暴力団はいなくなる・・”という意見が殆どであったが、私が学んでいた学校は、反体制の気風が高く、法律を学んでいた私の恩師の一部は、暴力団員の人権が無くなるという危惧を唱える方と、暴力団員たちの行為が、より闇に紛れていく事を危惧する方が多数いた。
だが、そのような意見は世間的に論議されることもなく、私自身も、”ヤクザなんて、この世から居なくなれば良い”と安易に考えていた・・。
勿論、今でも、反社会的組織及び行為は全否定するが・・。
<この作品の素晴らしき点>
・そのような世間常識に違和感と問題意識を持ち、自ら脚本を執筆し、ヤクザを描きながらも、”ある社会的メッセージ”も込めた素晴らしき映画に仕立て上げた藤井道人監督の姿勢
・この稀有な監督は、”ヤクザに人権は、必要ないのか ”(今作品では、五年縛りと言う表現をしている。)というタブー視されても仕方がないテーマを塗しながら、彼らが消えゆく過程を、
”家族とは何であるのか”
という普遍的テーマを軸に一級のエンターテインメント作品として、描いている。
・演者の素晴らしさ
1.舘ひろしさん
任侠道を重んじる普段は笑顔が爽やかな、だが自分のシマを犯してくる侠葉会会長、加藤(豊原成補)に対してのドスの効きまくった啖呵を吐く、柴崎組組長を演じた舘ひろしの凄さであろう。
「終わった人」で、新境地を開かれたなあ・・、と思っていたら、あの凄いオーラ漂う姿を演じる姿。凄かった。
そして、令和の時代、癌に侵され、弱弱しくなった姿も見事に演じている。柴崎組の盛況、衰退を彼が、見事に体現しているのである。
2.綾野剛さん(山本賢治)
圧倒的な演技力と存在感である。
19歳からの20数年を、違和感なく演じ切る凄さ。
チンピラから、柴崎組長に見い出され、オヤジとして慕う隆盛期の銭湯での入浴シーンの身体の凄さ。
且つて、体脂肪率を一桁台にしていた時期もあったが、あの上半身の凄さは、只物ではない。
そして、刑期を終え、令和の世に出て来た白髪交じりの姿と、漂う寂寥感。
この俳優の映画作品は、殆ど見ているが、今作が、彼の代表作の一本になる事は、間違いないであろう。
3.尾野真千子さん(由香)
賢治が愛した女、由香を演じた尾野真千子の愛しい人と再び出会えた喜びと、彼が同居を始めた途端にSNSで情報がリーク、拡散され町を愛した男との娘と共に後にする悲痛な姿も忘れ難い。
4.愚かしきマル暴を演じた、岩松了さん
ヤクザと癒着したマルボウとして、見事に演じている。
ー 我が学生時代の師が憂慮した
”暴対法施行によりヤクザが闇に紛れていく事”・・ー
5.磯村優斗さん(成長した翼)
こんなに凄い演者であったとは・・。
暴対法に規制されることなく、自由に振舞う翼の姿が、新しき反社会的存在として鮮やかに描かれている。
藤井監督は、暴対法の限界も提示しているのである。
<この映画は暴対法施行前後の、ヤクザの栄枯盛衰を描いているが、決して且つての任侠映画ではない。
一人の”家族の愛を知らずに育った男”が、初めて様々な”家族”の暖かさに接し、”家族”と共に、必死に生きた姿を描いた物語なのである。>
おはようございます。
綾野剛、やはり凄いし、磯村くんも。将来楽しみな若手俳優、また1人増えましたね!
暴力団を抜けたい人がきちんとやり直せるように、世間が受け入れないといけませんね。難しいでしょうが。
このレビュー、親切ですね。本作を観る時には、このレビューを読んでから鑑賞することをお勧めするなあ。もしくは、観終わってしばらくしたら、このレビュー読んで振り返る、でしょうか。
NOBUさん、コメントありがとうございます。
私も現時点での「今年度・邦画ベスト1」です。
(観ている本数は少ないですが (…汗)
上映枠が少ない件
私の観に行った映画館では
昨日は一日3枠あったのが週末には2枠に減
別の映画館だと、週末には1枠だけ…(涙)
良い作品をもっと手厚く遇してほしいな、と
思わずにいられません。。
これ良かったですよね~…「哀」でした。
私は金曜に有給取得しました。映画後飲んでしまうのでまだレビューあげきれてませんけどw
本日もどっぷり堪能して下さい!