「エディ・ブロックは静かに暮らしたい。 ちょっとまって… ヴェノエディ尊い…。」ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
エディ・ブロックは静かに暮らしたい。 ちょっとまって… ヴェノエディ尊い…。
“親愛なる隣人“スパイダーマンの世界を拡張するダークヒーロー映画「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)」の第2作にして、スパイダーマンの宿敵“ヴェノム“を主人公に据えた『ヴェノム』シリーズの第2作。
シンビオートに寄生された死刑囚クレタス・キャサディは、“カーネイジ“という怪物に姿を変えてしまう。
一方その頃、エディとヴェノムの共生関係は限界を迎えようとしていた…。
○キャスト
エディ・ブロック/ヴェノム…トム・ハーディ(兼製作/原案)。
クレタス・キャサディ/カーネイジ…ウディ・ハレルソン。
アン・ウェイング…ミシェル・ウィリアムズ。
近年のアメコミ映画はとにかくボリューミー。ランタイム2時間越えは普通だし、中には3時間を超えてくる作品も…。
ランタイムが長い=悪、という訳では無いが、自分のようなアメコミ弱者にとって、スーパーヒーローものはサクッと観てアハハと楽しみたいジャンルである。
その点、本作は良い!
90分台という近年のアメコミ映画の平均を大きく下回るランタイムで、とっても気軽に鑑賞出来る♪
これがDC映画だったら本作が最初の10分で終わらせた謎解きシークエンスを1時間くらいは引っ張っただろうし、「MCU」なら登場キャラクターを大幅に増やして物語を水増ししていただろう。『ヴェノム』シリーズのスナック感覚を他のアメコミフランチャイズも見習うべきである。
ランタイムだけでなく、お話の方もとっても単純。
悪者が出てくる!それをやっつける!終わり!
う〜ん、前作に輪をかけてシンプル。シンプル・イズ・ザ・ベスト。
原作ファンにとっては色々と言いたいこともあるのかも知れないが、カーネイジというキャラクターを本作で初めて知った自分としては、何の違和感もなく物語を楽しむことが出来た。
そりゃ、クレタス・キャサディ&シュリークのヴィランコンビに関してはキャラが薄めだと思ったけど、彼らの掘り下げをサクッと終わらせたことによりこの映画のスピード感は生み出されていると思うので、その点は問題無し…というか英断である。
近年ありがちな政治的メッセージは薄め。そのことも本作を単純に楽しめた要因の一つだと思う。メッセージ性は大事だが、何でもかんでもポリティカルにすりゃ良いってもんじゃないからね。
唐突に始まったヴェノムの「多様性バンザイ🙌」演説は言い訳のために無理矢理付け足したのかも。これ全然そういう映画じゃないし…と思ったけど、人間と宇宙人のBLという見方も出来るか。そう考えたら究極のLGBTQ映画だなこれ。
政治的な要素は薄いが、男女の描き方は独特。
ヒロインが主人公の元カノというのも独特だけど、そのまま最後まで恋愛関係にならないというのはかなりユニーク。
しかもヒロインには婚約者が居て、その婚約者と一緒に彼女を救い出そうとする。なんかすっごく変。
しかもしかも、その婚約者が普通に良い奴なんですよね。よくある展開として、婚約者が実は事件の黒幕で、結局主人公とヒロインが元鞘に収まるというものがあるが、本作は主人公の恋愛描写を捨てて、その分コメディ描写を増やしている。
この最後まで主人公が未練タラタラなままという、なんか妙に生々しくてリアリティのある描写がえも言われぬ読後感を残す。普通の映画とは一線を画す、新しいヒーロー&ヒロイン像がここに誕生した。ただのギャグのように見えるが、実はこれかなり進んだ男女の描き方なんじゃない?
もしかするとイメージソースは『ノートルダムの鐘』(1996)の三角関係だったりして。
エディとアンが恋愛関係にならない分、ヴェノムとエディのイチャイチャは止まらない💕
はっきり言って、本作におけるカーネイジはほとんどおまけ。先にも述べたが、これはヴェノエディの痴話喧嘩にニヤニヤするBL(ヴェノムがオスなのかはようわからんが…)映画なのです!!
喧嘩すると部屋をぶっ壊しちゃうのが玉に瑕だが、それ以外は完璧な相棒。メンタルケアしてくれるし、家事を手伝ってくれるし、恋愛のアドバイスをしてくれるし…。つくづく、「どこが最悪やねん!!」と突っ込みたくなる。
「スティール・ボール・ラン」(2004-2011)に出てくるポコロコのスタンドを思い出しました。俺もヴェノムが欲しい!
アメコミ映画はゴージャスすぎるより、このくらいちんまりと纏まっている方が自分は好きです。
笑いどころもいっぱいあったし、エディもヴェノムも可愛いしで超楽しかった!😆
『X-MEN』要素やトムホ版『スパイダーマン』要素がチラチラと現れ始め、どうやら今後はとんでもなくスケールアップしていきそうな予感。ただ、これからもあんまりゴージャスになりすぎず、マイペースで楽しいシリーズであり続けて欲しい。
余談だけど、『1』のポストクレジットでキャサディを初めて見た時、「変な髪型したオッさんだな…」と思った。今回、ウディ・ハレルソンのインタビューを見ていたら「前回は出演時間が短いしウィッグも変だったからイヤだった😡」と発言しており、やっぱり本人もそう思っていたんだな…と思って笑っちゃった。
前作は本当に髪型似合ってなかったから、今回のヘアスタイル変更は大成功だと思いますよ。