サンダーロードのレビュー・感想・評価
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それでも彼の生き様を支持する
アメリカの新鋭、ジム・カミングスが監督、脚本、そして主演を務める「サンダーロード」は、不器用な男の生き様を誠実に描いた映画である。主人公の性格も映画のストーリーも単純であるが、彼の言動には執拗でエキセントリックなところがあり、評価が分かれると思う。
映画のタイトルはブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダーロード」に由来する。冒頭のシーンは母親の葬儀であり、彼が持ち込んだ場違いな子供用のラジカセは故障して動かず、母親の好きだったこの曲が流されることもない。何という皮肉。
それでも、主人公はいつでも何に対しても真っ当に生きようとしている。その姿勢だけは変わらない。それは警官としての仕事に対しても、離婚調停で親権を争う一人娘に対しても。しかし、多分に独善的であるため、やる事なす事全てが空回りする。裏目に出てしまう。
彼は思うようにいかない境遇に対して、周囲に怒りをぶちまける。真っ当に生きているのに不当な扱いばかり受けるのだから、彼にとっては至極当然である。その様子は観客の感情移入が難しくなるくらい。痛々しさを通り越して、もはやコミカルである。
しかし、誇張されてはいるものの、彼の人生はやはり真っ当なのである。彼の生きるモチベーションは親権を奪われた一人娘にあり、ぎこちないコミュニケーションの数々がいじらしい。彼の生き様を支持する。それだけに映画の最後、妻との決着の仕方を残念に思う。妻とはきちんと別れるべきだった。人生は不当なもので、まさに「サンダーロード」だけれど、それでも生きていく価値はあるのだから。
アメリカの愛しき不器用さん
観終わった後、何だか「パンチドランクラブ」の観賞後の余韻と似てるなって、嬉しくなった。
不器用で善良なのに空回りの主人公が時に可笑しく、時に痛々しく、時にブチ切れしてクソッタレで、愛しくて。
本作の出だしと心にじわり温かいラストがループさせる終息感が心地良くて、ちょっと感動。
人生における苦しみや哀しみの描写や展開のテンポが重過ぎなくて、ちょうど良い塩梅な、
愛しき映画でした。
フィートやポンドで説明されてもよく分からない
私には、最後までピンとこないままでした。
アメリカ社会のひずみのようなものについての理解がベースにないと、主人公の痛みが体感的に共有できない作品のように感じました。
身長や体重をフィートやインチやポンドで言われてもよく分からないのと同じようなものかもしれません。
プライベートフィルム
監督脚本主役のプライベートフィルムですね。
感情移入して共感できるか否かで評価は極端にかわります、
私はかなり微妙でした。
最初からずっと痛いシーンが続きますがラストだけが救いでした。
オススメはしにくい作品。
ワニにも勝てるアメリカ郊外の哀愁。本作の邦題も曲に合わせて"涙のサ...
ワニにも勝てるアメリカ郊外の哀愁。本作の邦題も曲に合わせて"涙のサンダーロード"にしても良かったくらい。に、主人公ジムがよく泣く…が、それも至極まっとうなシチュエーションで、例えば同じくアメリカ郊外の作品を得意とするコーエン兄弟の作品なんかみたいに不条理にずるずると短期間で悪い方向へと転がる。それも主人公はなんら悪くないのに。深刻なドラマと思わず笑ってしまうコメディのバランスが絶妙で、例えばその場の全体像を収めるというよりも会話の一方だけを捉えて、それに対する相手側の反応を全く撮らない演出・撮影も相俟って、ぐいぐいと惹き込まれた。観客も当事者にしてしまうように思わず共感せずにはいられない秀作。随所に機知に富んだセンスと深い洞察と同情にも似た優しい眼差しが見られる。監督・脚本・主演ジム・カミングスの才能には本当に驚かされるものがある。
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