「おかしさを通り越して哀愁や胸の痛みすら覚える奇作」サンダーロード ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
おかしさを通り越して哀愁や胸の痛みすら覚える奇作
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奇妙な映画と言わざるをえない。冒頭12分間にわたる長回しの中、いったい何を見させられているのだろうと思う。全てがアドリブのようにも、緻密な演技のようにも見えるが、くすくす笑いはやがて苦笑いに転じ、もはやこれをコメディに分類していいのかさえわからない。少なくとも踊ってる彼はとにかく必死なのだから。
口を開くと人を不快にさせる。すぐキレる。かと思えば後悔し、また次の瞬間には私はこんなに苦労してるんですよ、と主張する。すぐ身近なところにもこんな人間の一人や二人いるような・・・もしくはそこに重なるのは自分自身だろうか。そういった鏡面的なものを感じるからこそ、彼のことを決して見放せないのかも。
かつて母親が歌に感化されて故郷を飛び出したように、彼にも全身全霊をかけて誓う時が来る。人生とはその瞬間の訪れを信じてひた走るサンダーロードーーーー未だ聞いたことのない歌の真髄に少しだけ触れられた気がした。
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