ホテルローヤルのレビュー・感想・評価
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素晴らしい映画美術の仕事ぶりに出合える作品
桜木紫乃が直木賞を受賞した自伝的小説を、「百円の恋」の武正晴監督のメガホンで映画化。
波瑠が演じる主人公の雅代は、釧路湿原を背に立つ小さなラブホテル「ホテルローヤル」経営者の
一人娘。原作の世界観を踏襲しながら、映画として成立させるために設定を色々と変えているが、
何はともあれ今作の目を見張るべきポイントは映画美術にある。
ホテル内の毒々しい照明やインテリアなども含め、詳細に至るまで研究し尽くして制作していることがうかがえ、これぞプロの技と言える仕事ぶりだ。
ラブホテルという“磁場”と、そこからの解放
原作は桜木紫乃の自伝的小説だそうで、ラブホテル経営が家業の夫婦の間に生まれた娘なら人間観や男女観に多大な影響を受けただろうし、そんな稀有な体験を肥やしに作家として大成したのだから人生とは味なものだ。
波瑠が演じる雅代は、母が若い男と出奔した後、甲斐性なしの父に代わりホテルを切り盛りすることに。ホテルの一室での男女の秘め事や会話を従業員(と観客)が共有する仕掛けとして、換気口を通じ地下の作業室に音が漏れ聞こえてくる設定が有効に機能する。雅代は未経験のまま男女の営みに触れる日常に縛られ、恋愛への幻想を失い冷めていくが、それはラブホテルという特殊な閉空間が持つ“磁場”の影響を思わせる。
ある事件の後で雅代はホテルを離れるが、磁場から離れる際の“儀式”の場面は、波瑠の演技と武正晴監督の演出がいま一歩物足りない。身も心も裸になる覚悟が感じられず、心理描写が表層的にとどまったのが惜しい。
筋書きは日活ロマンのような映画
コメディのようなロマンポルノのような流れだったが、
ラストに波留の濡れ場になれば日活ロマンポルノなんだが、
さすがに脱がせられるわけがない。
脚本だけ当時ピンク映画から借りてきたような映画だった。
唐突すぎ+エモい
昭和感溢れた作品で、懐かしい雰囲気でした。主人公が松ケンを誘うシーンが唐突すぎてあせりました。あれはあれで有りなんですかね?そして、ラストのお父さんとお母さんの若い時の回想が選曲も含めてエモかったです。
原作
波瑠さんと米子につられて暇つぶしに鑑賞しました。
思ったより良かったので、これまた暇つぶしに原作を読んで見ました。
直木賞受賞作なんですね。
かなり感動しました。特に女子高生と先生の話はしばらく頭から離れませんでした。
原作を映像化する事の難しさを改めて感じ、これからは良い映画に出会ったら原作も読もうと思いました。
波瑠ちゃんが出てるので中身はどうでもいい。
なんだけどラストシーンは時空を超えて
なんかジーンときましたね。
人間ってこんなもんなんだよーと
拙みたいな凡人には響いた。
安田顕、余貴美子も楽しそうに演じてますし
今をときめく伊藤沙莉も出てたんやね。
それにしても波瑠ちゃん、ベッドシーンは残念トホホ
70点
ユナイテッドシネマ大津 20201123
俳優も美術も音楽も全部良いんだけどね。
原作未読にて。
北海道の田舎のラブホを
グランドホテル方式で展開する
っていうストーリーは良かったんだけど
なんか味気ない。
それぞれのオムニバスストーリーは
なかなか味があって良かった。
役者さんたちもそれぞれ良かった。
当時のことは知らんが、
昭和のラブホを思わせる
美術演出も見事でした。
ただ全体通して映画として観ると、
なんかそっけない。
なぜならそれは、
物語の縦軸の主役「雅代」が
薄味すぎるから。
ラストのベッドシーンで
雅代が来ていた純白のスリップが
それをよく表していて、
おそらく原作でもそのような
無感情の透き通った純粋な「雅代」
なのでしょう。
でも、その場合はオムニバスが
もっと強烈な物語じゃないと
対比としてつまらない。
かといって、釧路のラブホじゃ
そんな強烈な物語では違和感しかない。
無添加食材が評判のレストラン行ったら
ほとんど味付けがなくて
美味しいんだかマズいんだかよく分からない感じ。
そんな映画でした。
ん?そんな映画か?
ちょっと違うな。
夫妻の栄枯盛衰
ロードサイドに一軒きりで建つラブホテルということですから、世の中の景気の浮き沈みや、新しいバイパス道路が出来てクルマの流れが変わったとか、様々な要素で経営に影響を受けるんだろうなぁと思います。
(現に経営する側には、如何ともしがたい事情で、ホテルローヤルも、その経営が行き詰まってしまった訳ですから。)
それでも、このホテルは、田中夫妻にとっては夫妻の夢や希望をいっぱい詰めて建設されたはずですし、実際、田中夫妻の生活を支えただけでなく、その一人娘をほぼ成人まで立派に育て、あまつさえ、二人の従業員に働き口まで提供してきたのですから、正しくその「夢のホテル」だったに間違いありません。
ホテルの外の人には事情が分からないでしょうけれども、そういう田中夫妻の栄枯盛衰を物語るものとして、「ホテルローヤル」は素晴らしいものだったのだろうと思います。評論子は。
薄味過ぎて
なんだろうか。
ラブホテルを舞台に、様々なカップルを通して、それぞれに違った人生を見られるのだが、なぜか、どの話にもピンとこない。
どれもこれもが普通すぎて、というわけではけしてないのに、“ラブホ"というワードがパンチがあるのか?ついつい、もっと刺激的なものを予想?期待?していたのかしら。
薄味過ぎて、今ひとつ、この作品の見所が自分には理解できなかったー。残念。
ただただ、ラブホってのは、ドラマがあるんだね。ということを確認し、男と女がやることの一つにSexがあるんだね。と。
そんでもって、一途な愛があれば、そうでないのもあるよと。
主人公は、ラブホという非日常的な場所は、自分にとっての日常だと言ってたけど、その日常があまりにパンチが効いてたんでしょうね。にしても、あんなボイラー室でお客さんの会話やら聞くのはどうかねー。
あんなもん聞くのが日常だなんて、そりゃ、かなり珍しい日常だわ。
ラブホテルにも歴史あり
ラブホテルが舞台なのにまるで美術作品のように美しい。エログロにならないよう生々しくならないように気を使っているのが伺える。
違和感のない昭和の美術が素晴らしいが風景はあまり使われていないのが残念だった。恐らく撮影場所は舞台とは別の場所でCGでカバー出来るチームでもなかったのだろう。
これならエログロありでもっとガツンとくるエピソードで構成したほうが評価が得られたのでは。
直木賞作品が映画になると、こうなるのか。
桜木紫乃の第149回直木賞受賞小説『ホテルローヤル』の映画化作品。元々、作者の実家では“ラブホテル”を経営していて、それがこの作品に反映されたいる様です。
小説は、ラブホテルを舞台にした短編集でしたが、映画ではそういう訳にはいかなかったようですね。ラブホテルで起きた出来事を描いた話にはなっていますが、通しての一つの話になっています。
意外に淡々と物語が進んでいきます。結構、大きい事件も起きるんですけどね。淡々と物語が進むのは、主人公の雅代の心情を描いたのでしょうかね?彼女、できるだけ感情を表さずに、淡々と過ごしていましたからね。
そういうところが表れてしまったのか、少し盛り上がりに欠ける気がして、採点は★★★です。
傍観者的目線の主人公
主演の波瑠は、淡々としすぎている感じ。母の駆け落ちも、父の死も、泣いたりわめいたりしない。そもそも芸大合格にしゃにむというわけでもないし。最大のイベントも、何だか他人事のよう。松山ケンイチが引かなければ、彼女はどういう表情であのシーンを過ごしたのだろう。醒めた感じの主人公、達観した感じを見せるなら波留はありかな。濡れ場は似合わない女優さんなんだよな。
昭和的な雰囲気も漂うラブホテルと、オムニバス的に展開される人間模様。これはこれで面白くはあったが、いろんなことがあった割に残らない。劇中の心中事件の報道みたいなものか?
Amazon primeのお薦めから
原作を知らず、前評判も確認せず見たので
この作品の本質が理解出来たか分かりませんが
とりあえず波瑠さんが堪能出来ました。
綺麗、可愛い、透明感が有る、凛としてる、
芯の強さを感じる。等々、
いろいろな褒め言葉が有りますが、
全部この方には相応しい気がします。
ラブホが建って、やがて朽ちる(原作を再読してみたけれど)
2020年監督:武正晴。原作:桜木紫乃。
原作が家にあったので観賞後すぐ読み返してみた。
原作はとても心に響いた。
映画はほぼ原作と同じ展開。
雅代(波瑠)の誕生とともに生まれた「ホテルローヤル」が30年を経て幕を閉じて、
何年後かに朽ち果てた廃ホテルとして、若いカップルの投稿エロ写真の撮影場所として、
映画は始まるのだ。
なのだが、原作と違い登場する人間の生々しさ、生臭い部分が
マイルドになっている。
その点が物足りなさとつながる。
女子高生と心中する高校教師・・・生徒とセンセイ、あんた何やってんの?
とは、ならないのだ。
人生に絶望して死を選ぶ理由がちゃんとある。
女子高生のまりあは、親が借金を作り失踪して帰る場所がない。
教師は美人妻が校長の愛人を18歳から10年も続けていて、連休に札幌のマンションに帰ったら、妻が校長を家に招き入れる現場を目撃してしまう。
木古内→函館→札幌そして釧路と道行があって・・・
チャラい教師と馬鹿な教え子まりあ、と一括りに出来ない、納得できる心中の理由を語られている。
エッチ屋の宮川(松山ケンイチ)にも、市役所をしくじった過去がある。
市役所の上司の妻を寝とったのだ。
この辺は全く語られない。
宮川もタダのエッチ屋の真面目セールスマンではない。
パートのミコちゃん(余貴美子)には働かない精力絶倫の夫がいて、ただただ働くだけの
ミコちゃんの存在はなんだか無性に悲しい。
ひとり娘雅代(波瑠)も、見せ場の少ないつくづく損な主役だと思う。
見せ場の宮川に迫るシーンも、Gパンの下着が白い木綿の長いスリップ・・・とはねー!!
釧路湿原がパーっと映るファーストシーン。
雅代の部屋からいつも眺める窓から、丹頂鶴も姿を見せる。
釧路の和商市場や幣舞橋(ぬさまいばし)と観光名所もしっかり映し出されます。
ただし「ホテルローヤル」の室内セットは、札幌の紅桜公園の今は使われてない結婚式場に作られたそうだ。
地元テレビ局が特集してましたが、我が家から近いのも、何かのご縁でしょう(笑)
原作者の桜木紫乃さんは美人でサバサバしたとても素敵な人。
原作のバター風味がマーガリン風味に変わったような変換と、映画のパワー不足に
やや不満ですねー。
過去鑑賞
薄味だったのです 一度観ただけでは分からないくらい だんだんと心に本作の良さが染みてきたのを感じます
正直、一度見ただけでは胸に響きませんでした
主演の波瑠も、その他の俳優達も配役は素晴らしく、ホテルローヤルの美術も実物そのものがあるかのようです
物語もラブホテルの客の様々な生態をオムニバスでつなぎながら主人公の心境の変化を描きやすい題材です
せっかくの良い素材を集めたのに、なんだか味がしない
その料理たる作品を盛り付ける器である舞台も、釧路湿原のような絶景がそこにあるのにその光景も窓からの書き割り程度で残念なのです
そう感じてしまっていました
波瑠ももう29歳
鎖骨フェチなので特に彼女は好きなタイプです
そして何より独特の潔癖そうな容姿にも惹かれるものがあります
得難い存在感のある女優だと思います
彼女の外見の雰囲気が主人公とシンクロしており、本作が彼女がひと皮剥けるきっかけになる
そんな作品のように思えたものです
だから大変残念に思えました
でも、もう一度観かえしたとき、なんだか涙が出てきていました
薄味だったのです
一度観ただけでは分からないくらい
だんだんと心に本作の良さが染みてきたのを感じます
いい旦那だわ
稼ぎがあろうが無かろうが、ちゃんと愛してくれれば女はそれで十分なんだわ
あんたもさあ、そういう男を見つけなさい
幸せになんなさいよ
母は次の日、酒屋の若い男と駆け落ちして去ります
軽トラの窓から、彼女は前日妻を背負って帰って行ったその男を見かけます
もう70歳くらいで足も仕事で悪くして片足を引きずっているのに漁港で元気に働いている従業員能代ミコさんの夫です
その彼女の一人息子が死体委棄容疑で逮捕されたニュースをみて彼女は一心不乱に掃除に精をだして忘れようとします
まだ幼かった頃、母の荷車を押しながら聞かされたことを思いだして働くのです
いいかミコ
何があっても働け
一生懸命身体動かして働いている人間には誰も何にも言わないもんだ
聞きたくねえ事には耳ふさげ
働いてればよく眠れるし、朝になったらみんな忘れてる
誰も恨まねえで、働け、働け
毎日笑って働け、働け
それは本当は幼い自分にではなく、母が自分自身に言い聞かせていたことだったのだと、彼女は今思い当たるのです
そしてそれを雅代も聞かされたことがあったのかも知れません
市場の果物屋で雅代が見かけた、同年代の女性
幸せそうな姿
仕事も家庭もあって充実している
自分とのあまりの違いに愕然とその後ろ姿を目で追うのです
それは彼女が高校生の頃からずっと好きだった大人の玩具の営業マン宮川さんの妻のようでした
生きている実感を得たかったのは本当でしょう
でも本音は彼を奪いたかった
自分の身体でそれができるならば
しかし彼を奪うことはできなかったのです
彼女はアルバムの古い写真で父と母がどのようにしてホテルローヤルを作ったのかを知ります
ローヤルの名前の由来も
なぜ釧路湿原に面して建てたのかも
父は死んだのか定かではありません
冬が来てまた春がきて彼女はラブホテルを閉め街を去る決断をしたからには、やはり亡くなったのでしょう
街を去る前に古い写真にあった、父母が働いていた和菓子店や、夏にみかんを買ったという丸三鶴屋百貨店を車で見て周ります
景気が良かった百貨店は20数年も経って今はもう撤退して空店舗です
宮川が餞別にくれたのは、父がそこで買ったのと同じ木箱入りのみかん「ローレル」
彼は奪うことは出来なかったけれど、心はほんの少し確かに触れ合っていた
それだけで彼女は満足したのです
始まってもいない恋愛だったけれど、雅代には恋愛であったのです
ちゃんと愛されたような実感をその木箱入りのローヤルに感じて笑みが初めてこぼれたのです
これから彼女は、自分の人生を自分のものとして切り開いていくのです
いい旦那だわ
稼ぎがあろうが無かろうが、ちゃあんと愛してくれれば女はそれで十分なんだわ
あんたもさあ、そういう男を見つけなさい
幸せになんなさいよ
母の言葉がまた聞こえたように思います
彼女の車は釧路駅を背に、街の中心の幣舞橋を渡って海に向かって走り去って行くのです
とても明るい日差しです
釧路は霧の町
こんな日は年に何日あるかどうかです
丹頂鶴の鳴き声
強者が夢の跡
人と人が愛しあった城
それがラブホテルです
釧路湿原に夕闇が迫っていくのです
でも心の中でホテルローヤルの看板の電飾は点灯して煌々とここに愛の城があると光っているのです
彼女はきっと新天地で愛を見つけ、それを実感しているはずです
こんなにラブホテルに行きたくなったのは久し振りです
心が死んでいるのか生きているのか分からなくなってきるのかも知れません
蛇足
波瑠は1991年生まれ
本作の主人公雅代は美大受験に失敗してもどってきたのだから、何浪かしても20歳前後
原作は2013年刊行だから、1993年生まれぐらいの設定なのでしょう
雅代が生まれる少し前、もう30年程前に釧路に仕事で何度か出張したことがあります
あの頃は本当に淋しい街でした
本作の釧路の方がまだしも観光開発されたようにみえます
ホテルローヤルは踏切とその先に海がみえる釧路湿原のとば口にあるようです
根室本線の大楽毛駅と庶路駅の間にあるように思えました
釧路は霧がよくでて海岸沿いにいくらでも土地が空いているのに、霧より高い台地に空港を作らざるを得ず釧路駅から空港バスで1時間もかかるところに釧路空港があります
札幌駅から特急に乗っても釧路まで6時間もかかりますから殆ど飛行機で入る街です
空港バスはこの線路沿いに東の釧路市街に向けて延々と走ります
きっとこのホテルローヤルの近くを通ったのだと思います
ホテルローヤルが実在していたとしても、それがたつ1年程前のことですが
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