劇場公開日 2021年10月1日

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「けいさんは、なぜ護られなかったのか?震災の爪痕と傷ついた人々がクッキリと浮かぶ秀作」護られなかった者たちへ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5けいさんは、なぜ護られなかったのか?震災の爪痕と傷ついた人々がクッキリと浮かぶ秀作

2022年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2021年。原作:中山七里。監督:瀬々敬久。

映画の舞台は震災から9年後の仙台市。
凄惨な連続・餓死・殺人事件が起こる。
そして多忙を極める生活保護の申請・受給者の現場。
この2つを対比する事で、東日本大震災が人の心を如何に傷を与え、
困窮して頼る最後のセーフティネット《生活保護》、
その現場も、不正受給や申請却下そして申請取り消しで、荒んでいた。

生活保護の最前線で働く幹子(清原伽耶)・・・震災で母を亡くす
連続殺人事件を追う刑事・苫篠(阿部寛)・・・震災で妻と息子を亡くす
孤独な前科者・利根(佐藤健)・・・孤児だったが、震災で職場も住処も失う

本当に「護りたかったその人」が社会によって「護られなかった時」
生活保護システムの責任者に向かって行く。
そして善人・人格者と呼ばれる2人が生きたまま縛られて餓死して殺される。

映画は利根泰久、円山幹子、遠島けい、3人の避難所での出会いから、
交流そして困窮するけいの生活を回想の形で追って行く。

余りにも優しかったけいさん(倍賞美津子)
幹子が寒さに震える肩に掛けられた毛布。
泥水に顔を押し付けられて吠えてた利根泰久に、渡された乾いたタオル。
けいさん、幹子、泰久が3人で、家族のように囲んで食べた「あったかいうどん」

優しい人が護られなかった。
優しい人が無惨に見捨てられた。

東日本大震災で「罪なき善人」が1万6000名も亡くなりました。
「死んでいい人は誰もいない」と利根が言う。

生活保護。
国のお世話にならないとのプライド・・・世間に知れると恥ずかしい・・・
扶養照会と言う残酷・・・

困窮した誰もが受けるのが当たり前の権利。
偏見や差別や遠慮があってはならないです。

ラストの苫篠と利根の会話に、サプライズがあり、
利根と苫小篠が不思議な縁で繋がります。

この映画にあるのは「魂の慟哭」の記録でした。

過去鑑賞(2022/03/18)

琥珀糖
りかさんのコメント
2023年9月10日

本作観ました。詳しくレビューしていただいて、細部まで思い出しました。

上の満塁本塁打さんのコメントに頷きました。
清原伽奈さん、もっと今の自分の生活を大事にして欲しかったと
思いました。

神様は、何の為にこんなことするのか、と思います。

りか
2023年3月3日

線は僕を描くの映画でも
キラキラ光るような再生
生まれ変わる気持ちを表現されていました。

美紅
2023年3月3日

観終わった後、確かにクッキリ鮮明な映像が浮かんできました。

美紅
2023年3月3日

清原果耶さんは他作品でも透明感のある演技でした。

美紅
2023年3月3日

震災の後にすべてを失った人たち、生活保護を不正に受ける人、受けられるのに命を落とす人、公務員のまかり通る不正
身につまされる話でした。

美紅
2023年3月3日

映画館にて観ました。
原作の小説を読んだグレシャム様から観る前に話を聞いていました。

美紅
2023年3月3日

こんばんは☆琥珀糖さま

美紅
満塁本塁打さんのコメント
2023年3月3日

返信ありがとうございました。😊カンちゃん清原さん、不可思議でした。復讐が遠回りすぎますし、普通は時の経過で、敵愾心も薄れていくものです。また実務で生活保護扱ってれば、ある程度の【距離を置いた対応】が実は正解ということくらい・・ありがとうございました😊実は福祉現場には慈愛の心は時として不必要な場合もあるかと【30年くらい前、福祉の現場に居ました】・・・失礼します。

満塁本塁打
CBさんのコメント
2023年3月2日

> 「魂の慟哭」の記録でした。

まさに。ナイス表現だと思います。今さら、悲しみが蘇る。

CB