「けいさんは、なぜ護られなかったのか?震災の爪痕と傷ついた人々がクッキリと浮かぶ秀作」護られなかった者たちへ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
けいさんは、なぜ護られなかったのか?震災の爪痕と傷ついた人々がクッキリと浮かぶ秀作
2021年。原作:中山七里。監督:瀬々敬久。
映画の舞台は震災から9年後の仙台市。
凄惨な連続・餓死・殺人事件が起こる。
そして多忙を極める生活保護の申請・受給者の現場。
この2つを対比する事で、東日本大震災が人の心を如何に傷を与え、
困窮して頼る最後のセーフティネット《生活保護》、
その現場も、不正受給や申請却下そして申請取り消しで、荒んでいた。
生活保護の最前線で働く幹子(清原伽耶)・・・震災で母を亡くす
連続殺人事件を追う刑事・苫篠(阿部寛)・・・震災で妻と息子を亡くす
孤独な前科者・利根(佐藤健)・・・孤児だったが、震災で職場も住処も失う
本当に「護りたかったその人」が社会によって「護られなかった時」
生活保護システムの責任者に向かって行く。
そして善人・人格者と呼ばれる2人が生きたまま縛られて餓死して殺される。
映画は利根泰久、円山幹子、遠島けい、3人の避難所での出会いから、
交流そして困窮するけいの生活を回想の形で追って行く。
余りにも優しかったけいさん(倍賞美津子)
幹子が寒さに震える肩に掛けられた毛布。
泥水に顔を押し付けられて吠えてた利根泰久に、渡された乾いたタオル。
けいさん、幹子、泰久が3人で、家族のように囲んで食べた「あったかいうどん」
優しい人が護られなかった。
優しい人が無惨に見捨てられた。
東日本大震災で「罪なき善人」が1万6000名も亡くなりました。
「死んでいい人は誰もいない」と利根が言う。
生活保護。
国のお世話にならないとのプライド・・・世間に知れると恥ずかしい・・・
扶養照会と言う残酷・・・
困窮した誰もが受けるのが当たり前の権利。
偏見や差別や遠慮があってはならないです。
ラストの苫篠と利根の会話に、サプライズがあり、
利根と苫小篠が不思議な縁で繋がります。
この映画にあるのは「魂の慟哭」の記録でした。
過去鑑賞(2022/03/18)
本作観ました。詳しくレビューしていただいて、細部まで思い出しました。
上の満塁本塁打さんのコメントに頷きました。
清原伽奈さん、もっと今の自分の生活を大事にして欲しかったと
思いました。
神様は、何の為にこんなことするのか、と思います。
返信ありがとうございました。😊カンちゃん清原さん、不可思議でした。復讐が遠回りすぎますし、普通は時の経過で、敵愾心も薄れていくものです。また実務で生活保護扱ってれば、ある程度の【距離を置いた対応】が実は正解ということくらい・・ありがとうございました😊実は福祉現場には慈愛の心は時として不必要な場合もあるかと【30年くらい前、福祉の現場に居ました】・・・失礼します。