「時系列が分かりにくいですが」護られなかった者たちへ リボンさんの映画レビュー(感想・評価)
時系列が分かりにくいですが
震災よりも生活保護について、ということは漏れ聞いていたので、そこをどう表現するのだろうか、と思って見ていました。
佐藤健さん演じる青年の心情表現が、キャラクター的に口数が少なくて、彼への感情移入が少ししづらく、また避難所で少女(カンちゃん)から配給のパンが奪われてしまった時、彼女のためにパンを!と言えばいいのにただがむしゃらに列を無視して取りに行くことで周りから迷惑者扱いされてしまう演出が釈然としませんでした。ちゃんと並んでいた女の子にもパンを!と正当な主張をすればいいのに、何故彼がこういう性格なのか、説明が無く、
またなんとなく避難所でおばあさんとカンちゃんと主役の彼と、3人がいくら他に身寄りが無かったとはいえ、3人があっという間に「いつも一緒にいる人達」っぽくなっていて、展開の早さに付いていけませんでした。
そんなに急に、他人どうしですぐ、おかえりとかただいまって言えるものなのかな?と違和感。。
後から「救えなかった男の子と似た黄色い上着を着ていた女の子だから助けたかった」と、最後の最後で理由が語られますが、説明遅い。。という感じで。3人が一緒にうどんを食べるシーンも、多分感動的なのかもしれませんが、あまり伝わらず、演出や説明不足が残念でした。
あと時系列がとっ散らかっていて、映画として分かりにくかったです。
せっかく、生活保護の①不正受給阻止も、本当に困っていて財産なども無いなら②正当な支給も、うまく機能しなければならずとても難しい問題に斬り込んだ、考えさせられる題材を取り上げているのに、演出、見せ方、時系列の分かりにくさがもったいない、と思いました。
あと、一応彼女の犯罪の様子を再現してはいましたが、どう考えても大人の男の人を22〜3歳?くらいの女性1人がスタンガンのみでアパート2階に引きずって運ぶとか、生きたまま放置して餓死させるんだからまだ犯罪時点で男の人は生きてるわけで、拘束するまでの手順?簡単に同じ車に乗ってくれるものなのか?車中でスタンガン当てても、多少手を振り払われたら形成逆転しないのか?
と、別に格闘技も何も心得無さそうな女性1人で男の人を拘束出来たことがめちゃめちゃ疑問で。。毒殺とかじゃなく、物理的に生きたまま拘束するのが真実味が無くてちょっとあ然としました。
また佐藤健君が多分ガムテープかロープ?ナイフ?を買ってるシーンがあったけど、結局建物の入口に放火と、最後の議員には謝罪を要求するための脅し用ナイフを買っただけ?
おばあさんの生活保護をきちんと受給させてあげなかった職員達を恨むわりには「死んでいい人間なんていないんだ」と、職員達も擁護することになるセリフに違和感。このセリフは、生活に困窮している人達が誰ひとり見捨てられてはならない、の意味だと思うのですが、職員を餓死させたカンちゃんを諭しているなら職員を餓死という同じ目に合わせちゃ駄目だ、にも聞こえて。。それ自体は人としては正論ですが、あんなに職員達を恨んで無かった??と脚本が分かりにくかったです。
放火について新しい職場の面接で話す時、「あまりにも対応が酷くて火を付けました」と言っていたので、確かに建物の入口付近のコンクリートを燃やしただけっぽいけど、万一風が強い日で窓が開いていたりしたら、火の粉が建物内部に入り、万一残業している人がいたら被害を受けないとも限らない。それをした人が言うセリフとして説得力があまり無くて脚本が残念でした。
でも佐藤健君と阿部寛さんの眼光の鋭い演技は良かったです。
またこの物語とは関係無いですが、警察の上の方の役職にまた鶴見辰吾さんがいて、あー署長と緋村剣心がいる〜!と個人的に嬉しかったです。
一番最初の外の被災した様子、建物やその他の散乱した物の再現は凄かったので、脚本だけ惜しいな、と思いました。