滑走路のレビュー・感想・評価
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萩原慎一郎 歌集 滑走路
13歳、25歳、37歳を繋ぐ3つのストーリー。
素晴らしい脚本。
中学二年役の役者さんたち、皆良かったな。ドアを挟んでのやりとり、橋の上での別れ。
ミッドナイトスワンでも良かった水川あさみさん、今回も。
坂井真紀さんだったんだ、お母さん。
50歳も信じられないけど、良い女優さんですね。
彼の自死は辛いですが残った二人それぞれが希望が見えて良かった。
全力で生きた歌人が映画を生んだ
数年前に健也さんのお兄様が書いた歌集ということで買って読んだ。それはもう心に突き刺さる言葉が並んでいて本当に名著と言えるものであった。裕福なエリートの恵まれた環境であったはずが、いじめによって追い込まれ、非正規となり短歌に全てを掛けた。
そして彼が完成させたものが今映画ともなった。
映画館で観るのは、こんなご時世で気が引けるし、そもそもネットで観ることが多く、久し振りでもあったが、出向くかいはある作品だった。
水川あさみの話は作品としては良いのだろうが、歌集読者としては少し癪にさわった。全ての人に優しい眼差しを向け短歌で表現した慎一郎さん本人が作ったとしたら、露悪的な性行為のシーンを出さないだろうし、失業した旦那を否定するように仕上げなかった気がする。
ただそれを差し引いて、官僚が苦悩する話や青年の慎一郎さんを感じさせるような真っ直ぐに生きる感じ、最後のタイトルが出るまでの流れが秀逸だ。日本映画でここまで完成されたものを初めてみた。
あと俳優の寄川歌太と浅香航大が、外見的にも慎一郎さんと健也さんのそれぞれの要素を持っていて似ているのが面白い。演出でも健也かと思わされるような機械を弄ってるシーンがあったりなど。健也さんの超絶技巧なギターもどこかで映画内で聴けるのではと少し期待していたがそれは特になかった。
主題歌は新人らしいのだが、歌詞が歌集へのリスペクトがかなりあって良かった。
天才歌人萩原慎一郎さんの短歌が散りばめられた映画
良い映画です。そのまま観ても楽しめる内容ですが、萩原慎一郎さんの歌集滑走路のメタや短歌が散りばめられていて、まず歌集を先に読んでからの方が楽しめます。萩原慎一郎さんが空を自由に飛んでいる気がしました。
キレイな佐々木、イン、マイマイン
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親友がいじめられていたのを助けたがために自分がいじめの対象になってしまった学級委員長と、厚生労働省で働く不眠症の鷹野と、学級委員長と淡い恋をしていた今は絵作家の翠、3人の話。
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鷹野と翠のパートは現代で、学級委員長は学生時代の時の話。なので、話の流れは『佐々木、イン、マイマイン』と同じ。学生時代の時の友達が、大人になった自分の背を押してくれる。
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そのヒーローは『滑走路』でも死んでしまう。そんなヒーローが社会の端に追いやられて、時には死期を早めてしまうことが悲しい。
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大人になると、収入だったり社会的な立場に差がついてきて何となく会うのが嫌になったり気まずかったり、そんなことを考えずに学生時代の友達に定期的に会わないといけないね。
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終始胸が苦しくなる
マイナーな映画なのか、公開している館が少なくて不安でしたが、観たらすごく良かったです。
最後の方に来てようやく大人達の関係性や時間軸が分かりました。
いじめのシーンは見ていて辛かったけど、主人公の男の子の強さや優しさ、そしてそばにいてくれる彼女?に救われます。いつでも虐められている子がいつまでも辛い思いをする。辛いです。
俳優陣の繊細な演技力は素晴らしい。
特に中学生役の子、もっとドラマや映画に出て欲しい。
主題歌もすごくハマってます。
なぜ、滑走路ってタイトルなのかが最後わかります。
最後に出てくる短歌も刺さりました。
若い子に観て欲しい。
水川あさみが、あなたの子だから堕ろすと言う言葉は決意が込められていました。言う方も辛かったでしょう。
優しさと優柔不断は表裏一体。優しさと思っていたのが実は決断力の無さだったり。
どうしてあんなに強かった男の子が自殺してしまったのかは最後まで分からなかったけど、、イジメはダメ、絶対。
中学生では自分ではどうにもならない事が多すぎますね。
どうか若い子達は周りの人の出会いに恵まれますように。
時系が・・・
中学生の翠と大人の翠は同一人物?
中学生の裕翔と官僚鷹野も同一人物?
自死したのは委員長?でいいんでしょうか?そこら辺りが解りにくいから「え~とこいつがあいつで・・・」と混乱。
重いテーマでややこしい、観ていて気が滅入ってしまった。
若い人が希望の持てる社会になって欲しい
世の中がうつむき加減になっているこの時期、若い人も今苦しんでいる人も、生きていくことのの辛さや、先行きに希望を見いだせなくなっている今、「このままじゃいけない」という思いを歌人の萩原さんは訴えたかったであろうに、その自らも自死される、それぐらい生き続けることはとても苦しいことです 私たちも苦しんでいる人に対して軽々に他人を励ましたり、見守っているような声かけをするけれども、なにかのはずみで弱さの方が大きくなって、展望の持てない人間に変わってしまう 子どものときの体験がその後の人生に大きな影響を残していくこと、こんな経験を誰しもがして、あるいは受けてきて今日の自分がある 最後に3人の話がようやくつながるのだけれど、互いの言葉や気持ちがずっと大人になっても引きずったり、励まされる糧になったり、重いけど若い人だけの話ではなく、私のようなリタイア直前の人間にも深く染入りました 子どもを失うことに対しての親目線というところもあるけれども、今の若い人たちが生き抜いていくこの社会が、希望の持てるものであって欲しいと願います
萩原さんという歌人は知りませんでしたが、「そこのみにて光り輝く」などの佐藤泰志さんも死後高い評価をされた方でありましたし、こうやって亡くなってから生前の思いに多くの方の共鳴を受ける、それもついこの間まで同じ時代を生きていた人の作品はとても尊いものです(12月3日 MOVIX京都 にて鑑賞)
貧困なる想像力によりつくられた映画?!
原作者の歌人は武蔵中高で陰湿ないじめを受け三十二歳で自死したわけですから、いじめだけでなく後遺症で悩んだことなども、描かれるべき、だったのでしょう。
水川あさみのところは熱演ですが、この物語と関係ない(多分も想像だけのもの)もので、付け足す意味もないでしょう。
厚労省の役人のところは、良い視点だと思うのですが、いかんせん、実態とはほど遠い。
取り上げた視点は良いのですが、とても残念な出来上がりで、映画の品質としては低いのはとても悲しいことです。
でも、こんな内容が全国に配給できるのですから、日本映画もまだまだ捨てたものではない、そう、思いたいものです。
日本人の死の最大の原因はいじめによる自殺だと、思うからです。
絶賛…される程の出来じゃあ無い。
なんなんでしょうね?
この「お前ら感動して泣け」の押し売り感。
「みんなア○のせい」と声高に叫んでいる人達と同じ臭いがプンプン漂ってます。
どのシーンが感動した?
どのシーンが泣けた?
サイコパスかも知れませんが、アタクシの心の琴線は微動だにしませんでしたよ。
いじめって‥
いじめって、こんなに苦しくてあと引いて、人格まで変えてしまうんだな‥
胸が苦しくて、心筋梗塞になるんじゃないかと思いました。
いじめより、いじめられていることを母親に知られるのが何より辛い学級委員長。
いじめを助けられるより、自分の弱さを知られる方が辛い幼なじみ。そして自分は悪くない、と逃避する。
委員長は「お前ら暇だな」と抵抗してたのに、いつしか逃げ回るようになる。
辛い‥
その中で清涼剤のように癒してくれた女の子を、絵を傷つけるだけで、身体を傷付けないでいてくれて、良かった‥
いじめっ子には、それだけは感謝だ。ま、中学生だしね‥。
結局彼は、何故自殺してしまったんだろう。
それだけが謎。
当人にしかわからないことある、とか、自殺した人を責めないで、とか言う意見もあろうが、自殺はダメ、絶対。
自殺した子の母親の言葉が、1番良かった。
「忘れずに、あなたは生きて、結婚して、授かった子供を、宝物のように育てて命懸けで守りなさい」
中学生3人と、女の子が成人して作る、切り絵が秀逸。
最後に流れる主題歌も、良かった。
最初全然違うところから繋がっていくのは好きな展開で良かったし、役者...
最初全然違うところから繋がっていくのは好きな展開で良かったし、役者の方々(中学生役の人も)は非常に良かったと思った。ただ水川さんとの過去から今への展開がもう少し分かりやすい脚本だったら、尚良かったかなと思った。
かつて、いじめをしていた人たちへ
あなた方は今、どういう人生をおくっていますか?
幸せですか?
他人の人生に深い傷を負わせたことを自覚していますか?
何の権利があって、その人の心を壊すのですか?
いじめは犯罪です、いじめた人間に対する制裁はないのか?
あれ❓何で自死したのか?触れて?ないの❓❓❓
繋がりわかるし、皆さん熱演でもあるけど?
何故、浅香と水川を繋ぐキーマンが死んだ経緯に触れないのはかなり不自然!
事実の詩集を歪曲した‼️罪は重いかも❓❓❓かなり
いじめの描写や水川のラブシーン❤️もかなりの違和感‼️‼️
詩集が効いたのは浅香に母親から教科書渡されたシーンくらいか❓
とても残念だが、記憶に残る映画でした🎞🎟🎬
意欲作だとは思うが、なんか中途半端
詩が原作ってどんな感じかちとわからないのだけど、チョイスされてるエピソードがとにかく凡庸。
大概が擦られまくった「現代の歪み」。
イジメも逃げた子も夫婦仲も後悔も、既視感ありあり…
淡々と描くのは良いのだけど、だったらもっと振り切って欲しいのよね。
で、淡々と現実を描いてるようでいて、わかりやすすぎる感動展開で収まり良く終わっちゃってる感じがほんと冷めた。
もやもやが残った
イジメてた奴らが一番悪いんだよ。オマエラのせいでこんだけの人間の人生が狂ってんだよ。イジメる方にも事情があるとか関係ねえからな。自分の事情を他人に押し付けんじゃねえよ。なかったことにしてのうのうと生きてくとか許されねえからな。
というのを観てる途中で思ったの。
水川あさみが最初に出てきたシーンで、「影絵のクオリティがすごい! これは、小道具さんの仕事じゃない」と思ったのね。それから中学のシーンで水彩画が出てきたときも「これもすごい。ほんとうの作家を使ってるだろ」と思って。エンドロール観てたら影絵と絵画制作がクレジットされてて、公式サイトで確認したら影絵:河野里美、絵画制作:すぎやま たくやで、二人とも作家さんだった。ここに気を配れるのいいなと思ったな。
前半は映像化された詩を観てる感じなんだよね。叙情的な表現は少ない気がするけどなんでだろうと思って観てたの。詩みたいな台詞が多いからかな。
前半は「自殺したのは裕翔(最初にイジメられてた子)で、厚生省官僚が委員長(イジメられたのを助けたら、自分がイジメられた子)だな」と思って観るのね。
「ところがそれは逆でした!」ってのが解って、厚生官僚は最初にイジメられてた子で、自殺したのが委員長だったの。ここが「えー!」となって引き込まれるんだよね。
引き込まれるんだけど。委員長はイジメがトラウマになって高校受験も大学受験も失敗して、非正規労働者になってるんだよね。この「トラウマになって高校受験も大学受験も失敗する」ってところが、納得感なかった。
そもそも委員長は最初はイジメっ子と堂々と対峙して、裕翔を助けてるからね。そう簡単にイジメられっこになると思えない。そしてイジメられてからも、翠にけっこう救われてて、勇気をもらってる気がすんのね。それでもトラウマになるのか。
「翠に救われるのは一時的なものだから、そりゃ残るよ、トラウマ」と言われたら「そうなのか」と思うしかないけど、納得感が今ひとつ。
友達を売った裕翔が、そのことを気に病んで人生がうまくいかなくなって、自殺するなら「そうかもな」と思うの。
水川あさみは最後は離婚する決断をするんだけど、そこも何故なんだって気はしたの。旦那さんはどんなときも「翠はどう思う?」って聞いてダメな奴全開だから、まあ別れるのは解るのね。
ただ中学時代に戻ったラストシーンで委員長が「オレは翠がどんな選択をしても嫌いにはならない」って言ってるから、翠は、自分の選択を許してくれる人が好きなんだろうと思うの。
「そうだと思ってたんだけど、それは、この旦那がやってることとは違うの」ということかも知れないけど、そこは良く解らなかった。
全体を観ればすごく面白くて、文句はほぼないんだけど、この作品の魅力の中心が「普通は自殺しないと思っていた方が自殺する」ってのがあるのね。そこの理不尽さが色んなことを際立たせる。
「だから面白くて良かったじゃない」という気持ちと「面白くするために納得感犠牲にしてるよな」という気持ちがあって、もやもやしたものが残ったよ。
時代の流れの価値観…
人間として生まれてくるのは、そもそも自分の意思ではないけど、どうであれ両親が存在しないとこの世に誕生はしないわけで…
その切り口で観ると、色々な価値観があるなか、どの登場人物からこの映画をみるかで感じ方が変わるのでしょうね。不思議で考えさせられる作品でした。
先の読めないマトリクス
時代が、約10年ずつ離れて3つ(ラストを入れると4つだが)。
主人公は、しゅんすけ、鷹野、翠の3人。
よって、時代と主人公で作る2次元のマトリクス(行列)の要素は、3x3=9ポイントある。
(あるいは、時代をたて糸、主人公をよこ糸とすれば、交点は9個。)
しかし、3人がそろって存在するのは、1番目の中学時代だけ。
2番目の官僚時代には、鷹野と、しゅんすけ(直近で亡くなった故人として)。
3番目の影絵作家時代には、翠のみ。
結局、9ポイントのうち、6ポイント(=3+2+1)のみが映画で語られる。
この6ポイントで、人間関係と時代が、何度も何度も交錯し、先の読めない緊張感が続く。
というか、見終わって初めて「ああこの6ポイント(だけ)なんだ」と分かる仕掛けになっている。
6ポイント相互の関係性は緊密だ。安っぽいフラッシュバックに陥ってないし、無駄に複雑なわけでもない。
内容および役者の顔の類似性から考えて、「中学時代のしゅんすけ」が成長して「官僚時代の鷹野」になったと思いきや、実際にはそうではない。
自分は観ている最中、ずっとこの点において混乱していた。
テーマは2つで、メインテーマは「いじめと、そのいつまでも続く後遺症」、サブテーマは「産むか産まないか」。
サブテーマは、夫の非正規雇用問題以外では、メインテーマから外れている。この点にも、自分は混乱した。
しかし、生きづらい世界の中においてさえ、生命(いのち)が大切だと訴えていると考えることができる。
よってサブテーマは、メインテーマを別の角度から補強していると言えよう。
ある程度、観客を混乱させて手玉に取ろうと、作り手が意図していることは明らかだが、決して自分は不快ではなかった。
萩原慎一郎の歌集は未読だが、“映画全体”として観たときに、萩原慎一郎の世界観を実現しているのであろう。
スゴい脚本と演出だ。
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