「信仰と医学のはざまで。」君といた108日 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
信仰と医学のはざまで。
今年3本目(合計280本目/今月3本目)。
他の方も書かれていたように、かなり宗教(キリスト教)的な内容が多い映画です。もっとも教えを強要するような内容はないのですが、かなりの部分が占めます。
実話をベースにした映画なので、あることないことかくことはできないので、実話をベースにして多少不明な点は付け足して作ったのだろう、と思います(なお、最後にはどのような余生を送ったか、などについても示されます)。
個人的には、心臓病などのいわゆる入院を必要とする「大病」に対して、宗教の信仰を優先して治療しないのか、あるいか「宗教と科学は切り離して考えて、確実に効果があがるとわかる科学(換言すれば、医学)を優先するか」という視点を誰も持っていなかったのが驚きです(主人公たちはおろか、実家の母親やらなにやらもまったく口を挟まない)。
日本ではこういう場合、子供であれば「親権を取り上げて行政が強制的に介入」という扱いですが、いい大人(映画内では、大学生で1学期分休むなどと言っているので、19~22くらい?)ではそれは無理です。そして究極的には(日本基準でいえば)思想良心の自由や選択の自由(自己決定権の尊重)という部分に化してしまうので、いくら医者でも強制することは(大人に対しては)できません。
ただ、誰も「いや、ちゃんと医学で直したら?」ということも言わず、信仰心が厚い方なので、「空に手をかざしたら直った」というような発言もあり、ああいう病気(ネタバレになるので回避。日本では普通に「かかったら命はほぼない」とされるほど大きな病気)に対して当人(患者)でさえそうだと、親(彼女にも親はいるはず)も何も言えないのか言わないのか、難しいところです。
日本ではこういう部分は「宗教と医学は切り離して考える」というのが普通で問題は余り起きませんが、古くは新興宗教が怪しい療法を強制したりといったことがあったのも事実で、今でもアトピー等でもこういうことが問題になる(2020年だったか、それをテーマにした映画があったっけ…)ことはご存じの方も多いと思います(水を飲むとアトピーが直るだの直らないだのという展開)。
日本で普通の知識を持っている方だと、「日本とアメリカだと宗教に対する考え方が違う、医学と宗教が融合している」というとらえ方(常識的に自己選択権に基づく場合、どちらが正しい間違っている、という対立関係にはならない)にしかならず、ちょっとここは怖いかな…と思いました(こうした部分に関しても、フォローもされない)。
もっとも、そこ(日本とアメリカでの「病気」に対する、宗教優先か医学優先かの論点)より、本映画はドキュメンタリー映画なので、そこをどうこう言うより、そちらがやはり論点になるのだと思うところ、結局この映画はこの部分に大半がつきてしまうので、「ある程度」前提知識と「バリア」がないと、「変な方向」にはまりかねないかな、というのがある程度危険に感じました(ただ、これも日本では思想良心の自由や信教の自由、自己決定権が憲法で優先されるので、なかなか表立って論じにくいテーマ)。
何が正解なのか(信仰を優先するか、医学を優先するか、あるいはその半々的に取るか等)、色々あるかと思います。120分ほどでよくまとめっているので、この手の映画(なお、どれかに入れろと言われれば「音楽映画」というカテゴリになると思います。一応、数曲は流れます)が好きな方は、今週(といっても、年始)はお勧め以上になると思います。
採点にあたっては特に減点要素はないので(上記のことは本当に日本でもどこでも、個人の自己決定権が尊重されるべきなので、私の考え方を根拠に減点することは、できない)、5.0としました。