劇場公開日 2020年10月17日

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「少年のいつわざる気持ちに寄り添う気持ちとアイヌ文化を尊重し、その存...」アイヌモシリ カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5少年のいつわざる気持ちに寄り添う気持ちとアイヌ文化を尊重し、その存...

2020年10月21日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

少年のいつわざる気持ちに寄り添う気持ちとアイヌ文化を尊重し、その存続を望む気持ちの葛藤がメインテーマで、私の心も同じでした。親子とコミュニティの映画でもありました。
実際の親子が主演なので、ドキュメンタリー映画といってよいでしょう。
エンドロールでは、母親がアイヌの習慣や儀式のアドバイザーも兼ねていました。民芸品店での場面、お客さんから「日本語上手ですね~」と言われたり、儀式での詞はカタカナで書いて覚えたりと、民族文化伝承と実際の生活の両立にずいぶん苦労している現実が描かれていました。
私はかれこれ45年前、中学生の頃に白老を訪れ、アイヌの人を実際に見ました。同年代の女の子のエキゾチックな美しさにショックを受けました。初恋だったかもしれません。また、そのちょっと前に国語の教師がプリント教材でアイヌに対する日本国の法律を批評した新聞社説を紹介して、感想文を書かされた記憶があります。確か、私の感想文が読まれ、ちょっと褒めてもらったかなぁ?記憶は相当あやしいですが。明治に制定された「北海道旧土人保護法」に対する批判的な社説だったと思います。時代に合わない法律が昭和になっても改正されていなかった。廃止されたのは平成になってからです。遅い。遅すぎる。
 この映画はいい映画ですが、年月の経過、時代の変遷が民族伝統の継承をこんなにも困難にしていることがとてもショックでした。もう映画をつくるのも最後のチャンスなのかもと思ってしまいました。
 少年がご飯のあと、手を合わせて、ごちそう様でしたと言う場面が冒頭と最後にあり、大事なメッセージです。大切な命を戴いて生きていることに気付いて、感謝しなければいけません。お互いの伝統文化を尊重し、理解することなく、行きすぎた行動を取る動物愛護団体の存在に萎縮したり、ユネスコ世界遺産認定のために野生動物と人間の貴重な共生関係を崩すのは残念なことだと思います。カムイ信仰を理解して尊重する気持ちがまずは大事ですね。

カールⅢ世