劇場公開日 2020年7月10日

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「期待しすぎたんや…」透明人間 alalaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0期待しすぎたんや…

2021年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

興奮

あの…すみません、完全に見る前から☆4.5くらいつける気満々で鼻息荒く見始めたんで、何かもうサゲサゲでごめんなさいとしか…

吸血鬼やら狼人間やらミイラ男やら…モンスター系の映画って昔はよくやってて、親も自分も好きだったんですが、だいぶ前にちょろっとリバイバルしたきり、(割と最近の『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』はトム・クルーズ主演にしちゃ珍しくズッコケたし)どれもこれももう出てこないな、もう現代であの哀愁漂う耽美系映画は作れないのかな…と思っていたので、今回懐かしの透明人間を現代版リブート!ということで、ワクテカ通り越してツルピカハゲ丸になるレベルで(?)期待しまくっていました。
評判良かったし、今だって映画.comの評価☆3.7ですよ。これ単発にしちゃ高めと言って良いんじゃないですかね。予告も見て、「うわめっちゃこえええええ早く見てええええええ」と一人でテンション上げてみたりして。
結果ね。映画として面白かったですよ。ただ、やっぱり期待値が高すぎて…。
親も楽しみにしてたんで一緒に見たんですが、イマイチつまらなかったと言われました。ウーン、つまらなかったとまでは言わないけど… スゲー 気持チ ワカル。
何というか、期待してたものと全然違った感。

本作はPG12だそうだが、夫のDVがあまりにもキモいタイプだったせいか?確かに子供には見せたくない(グロがなくても)。エロシーンはなし。グロシーンはやや激しめの流血あり。『アス』や『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』が見られる人なら余裕。
どちらかというと精神にくる系。
アメリカ映画と思っていたが、調べたらアメリカとオーストラリアの合作だそうだ。雰囲気は確かに純粋なアメリカ映画らしくはないかもしれない。

あらすじ:
光学研究の第一人者である夫エイドリアンに何もかも支配される生活を送っていたセシリアは、セキュリティだらけの異様な自宅から逃げ出すため虎視眈々と脱出計画を立て続け、遂に妹エミリーの力を借りて命からがら逃げ出すことに成功する。しかし警察官のジェイムズとその娘シドニーの家へ転がり込んだ後も、セシリアの心はエイドリアンに支配されたまま、家から一歩も出られない日々が続いていた。家主と約束した「一歩でも外へ出る」努力を続けていたある日、誰にも知らせていないはずのジェイムズの家へ「エイドリアンが自殺したため遺産相続を」とセシリア宛の手紙が届く。エミリーやジェイムズはこれでもう安心だと考えていたが、エイドリアンの傲慢で狡猾な人格をよく把握していたセシリアは、「妻に出て行かれたくらいで自殺などするはずがない」「自殺を偽装し、今も私の傍にいるのでは」と考え始める。周囲は誰も相手にせず、徐々に孤立していくセシリアだったが…

まずね、最初に主人公の夫が光学系の優秀な研究者だってことがわかるんですが、これがわかった時点で手口もわかっちゃうから、特に「どうなってるの?」という不思議もないし、ラストがどうなるかも大体わかってしまうんですよね…
そもそも周りのキャラクター達が阿呆というか、何かあるとすーーーぐ主人公のこと嫌いになる。何やコレ、携帯小説か?嫌われ系(主人公が皆に嫌われててそこから救い出される?いじめられっ子の願望バリバリのジャンルがあるらしい)か?という展開がずっと続く。これが結構キツい。「こいつら馬鹿じゃねーの?」という白けた感情を押し殺すのに精一杯で、展開を追うのがかったるくなってくる。
とはいえ、不気味な雰囲気は最高で、恐らく半分以上の時間、透明人間は本当に「透明」で、昔のドラマなんかによくあった、何かウニョウニョした透過された物体が視聴者にだけ見えてるとかそんなこともなく、視聴者にも一切何も見えない状態が続く。
その割に、雰囲気はずーっと不気味で、エリザベス・モス演じるセシリアがエイドリアンの死の直後は笑顔があったものの、不審な出来事が続いてどんどん衰弱していく様や、誰にも信じてもらえないのに何度も「エイドリアンの仕業だ」と訴える悲痛な顔は、たった数週間の出来事とは思えないほど落差があり、鬼気迫っていた。
ストーリーは細かいところが甘すぎたが、俳優の演技と雰囲気でラストまで押し切った作品だと感じた。

本作が心底怖いと感じるかどうかに、自分の経験も関わってくるとも思う。
自分は過去に、流石にエイドリアンほど酷くはないだろうが、サイコパス的なストーカー気質のある奴が身近にいたことがある。ストーキングされていたのは同僚の女性で、最初は大勢いる友人の中の一人だったのが段々男の方だけがヒートアップし、女性のごく近しい友人達が守っていたが、お構いなしだったそうだ。
恋人でもないのに、皆で食事に行って女性が他の男性と仲良くしていると人目もはばからず大声で怒鳴り散らし、女性が謝ったら「君はいいんだよ」と言い、男性の方が謝ったら「絶対許さない」と返す、その後男性のことだけ徹底的に無視する等、話を聞けば聞くほど幼稚で、とてもじゃないが関わり合いになりたくないタイプだった。
こうして話を聞いてからだと意外に思うかもしれないが、こいつが職場では同性異性に関わらずやたらと人気のある奴で、同僚に話を聞けば「ノリが良い」「フレンドリー」「面白い」「優しい」「格好良い」などなど、皆に褒めちぎられるような男だった。
その職場を離れてだいぶ経ってから、そこの元同僚たちと遊びに行く機会があり、その時初めてそいつのことがずっと好きじゃなかった(というか怖かった)と白状したら、ストーキングされていた女性の友人からおずおずとその話を聞かされて驚いた。しかも、まだストーキングは続いているという。
同僚のほとんどはそんなことは知らず、自分が辞めた後も会った友人らは皆「あいつは良い奴」と言い続けていた。こういう奴は得てして外面だけは良いんだろう、騙されるまいとその時心に刻んだわけだが、同時にこういう奴に「利用される側」になってしまった時、どう回避すべきなのかとも考えるようになった。こいつのようにすぐボロを出すような奴ならまだ良い。でも、エイドリアンみたいな奴だったらどうなる?
ストーキングされていた女性も、本当にごく近しい友人にしか相談していなかったそうだ。セシリアのようになりたくなかったからだろう。自分も「あいつは良い奴だよ」と口を揃える同僚の前で「好きになれない」とはまさか言えなかった。周りがどちらの味方をするかわかってたから。

そういう経験があって、本作を見ても「透明人間」ではなくどうしてもサイコパスの気持ち悪いストーカー映画を見せられた気分になってしまい、気分が悪くなった。こういうのじゃないんだ、見たかったのは…
本作の透明人間が怖いのは、透明だからじゃなく単にキモ系サイコパスだから。そして、周りが誰も自分を信じてくれないから。
折角『透明人間』というタイトルなのだから、「透明だからこその怖さ」をもっと見せて欲しかった。本作でやっていることは、監視・盗撮・暴力・誰もいない間に勝手に物を動かすなど、まあまあ頑張れば透明でなくてもやれるようなことが結構多く、ただの「ストーカーの恐怖」とあまり変わらない。
ただ、上にも書いた通り透明人間になっている時は視聴者にも一切存在が見えないので、逆に「透明だからこその怖さ」が出せないというジレンマがあったのかもしれない。視聴者にだけ透明人間がどこにいて何をしているのか見えるなら、「何かされているのに登場人物は気付いていない」という恐怖が演出できる。が、それはもう使い古されたと思ったんだろう。
でも完全透明で怖いのは、透明人間が既に傍にいるのかどうかがわからない序盤だけで、透明人間が既にセシリアの傍にいるとわかったあとは、不気味な雰囲気作りと俳優陣の演技力に支えられてラストまでどうにか運びきった感じ。

ラストは完全に何が起こったかわかるようにはなってるけど、定番アメリカ映画のように全部ハッキリとキャラクターの口から説明されたり、映像で見せたりすることなく終わる。このモヤモヤ感はとてもシリアスな本作のテーマに合っていて良かった。
そして、最後のセシリアの「遂に解放された」という表情が良い。実際DVや虐待、暴力行為などを受けている人達にとって、加害者が生きている限り本当の自由は感じられないだろう。まさに「見えなくてもいつも君の傍にいる」だ。遠くへ引っ越そうが、加害者が捕まろうが、どれだけ月日が経とうが、加害者は「常に傍にいる」。
経験のない人にとっては「距離が取れれば良い」「捕まったから安心」だろうが、長年搾取され続けた被害者にとってそれは綺麗事でしかない。自分の手で終わらせない限り、加害者は永遠に被害者の傍に張り付いている。そういう表現がとても良かった。
ただ、メインがやっぱり透明人間ではなく、ただ「ストーカーやDV加害者が怖い」内容になってしまってるんだよなあ…エイドリアンが「何をしてでも自分に恥をかかせたセシリアを探し出して貶めてやる」という醜い執着心や逆恨みが全ての発端であり、透明になること自体に何の意味もなくなっている。
昔の透明人間のように、うっかり何かのキッカケで透明になってしまい、人目を気にしなくて良くなったことで本性が現れたり、透明になる薬自体に元の人格を破壊する副作用があったりではなく、エイドリアンは元々異常者で、それが怖いというだけの話になっている。そういう人間に出会ったことがない人は、それがむしろ怖いのかもしれないが、天才異常者が最先端技術を手にしたらそりゃ怖いよ、としか言いようがない。

ちなみに直後に『アス』も観賞したのですが、こちらは物凄い数の伏線が散りばめてあり、考察しがいがあるだろうし、ただぼーっと見てても結構ハラハラしたので、余計に本作の印象が薄れてしまいました。
多分、良かったんだと思うんですが…また見るかと言われたら微妙かも。でも主演のエリザベス・モスの演技が本当に本当に良かったので、地上波でやってたらまた見るかもしれません。
たまたま『アス』と一緒にDVD借りてきたんですが、『アス』にもエリザベス・モス出演してて「あああさっきの人~~~!!!」とちょっと興奮。『アス』での演技も良かった…何か凄い俳優を知ってしまった…

↓↓↓

全然深刻な

ネタバレではないが

一応改行

↓↓↓

エイドリアンの作った光学迷彩スーツがまじでだせえ…黒いスパイダーマンみてーなの出てきたぞwwと親と笑ってしまいました。
スーツが出てきてからめちゃくちゃヒーローものみたいな絵面になっちゃって、余計に拍子抜けしてしまいました。何じゃこりゃ、ギャグか。
でも昔は透明人間といったら薬を飲んで…だったのが、近年では人体を透明にすることはできないことがわかり(血を透明にするには赤血球など色のついた物質を抜かなければならず、抜いたら死ぬため)、今は透明になりたいなら光学迷彩スーツが最も現実的なんだそうだ。
光学迷彩というとアメリカが軍に使おうと躍起になってるアレか~程度の知識しかなかったんですが、今のところ暫く実現はしないようです。しかしアメリカはほんと何でも新技術は軍に使いたがりますね。
日本だったら、実現したら犯罪が増えるのと、野生動物観察や写真家の人達が助かるくらいのもんじゃね?とか思ってしまいますが…まぁ日本でも知らぬ間に政治に使われたりしてるんでしょうねえ。

モンスター系リバイバル開始か!とか思ってたんですが、個人的には…でもとりあえず本作は評判良かったので、他のモンスター系も今後どんどん出てきてくれるかな?
吸血鬼映画の話は前々からあるそうで、MCU『キャプテン・アメリカ』のウィンターソルジャー役セバスチャン・スタンが「ぜひ吸血鬼役をやりたい。ルーマニア出身だし」と何度か言ってるんですが、ずーーーーと製作側の話が進まないまま。
何でも良いからとにかく作ってくれ…吸血鬼楽しみにしとるんじゃ…『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のトム・クルーズみたいな美形でも別に構わんけど、どうせなら昔ながらのダンディなやつ頼むわ…

alala