「この思いつきを、ちゃんとした一本の映画に仕上げているのは、立派」大怪獣のあとしまつ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
この思いつきを、ちゃんとした一本の映画に仕上げているのは、立派
脚本・監督の三木聡はテレビのギャグドラマ「時効警察」シリーズで有名な放送畑出身の人だが、2005年の監督作『亀は意外と速く泳ぐ』は割りと好きだった。
最近、日本のコメディー映画はコント化の傾向にある。演者にふざけた演技をさせて笑いを取ろうとするから、コントになってしまうのだ。
その点、本作は滑稽なシナリオをシリアスに演じさせ、コメディー映画として成立させようとしていて好感がもてる。
まず、発想が面白い。
初期のウルトラマンは倒した大怪獣を宇宙にお持ち帰りしていた。(この映像体験がない世代には本作のラストシーンがしっくり来ないかもしれない……)
宇宙でも不法投棄が問題になったのか、いつからか地上で粉々に粉砕して終わらせたりするようになった。(もっとも、最近のウルトラマンシリーズのとこは知らないが)
ゴジラやガメラのような大怪獣どうしが戦った場合は、そんな後始末はしてくれない。海の底に沈んだり、火山の噴火口に落ちたり、という舞台設定になっていたりはするが。
『シン・ゴジラ』では凍結してモニュメントとして残すことができたようだが、そううまくいかなかったら、生き物の死骸だから腐っていくだろうし、厄介なことになりそうだ。
そんな発想を物語に組み上げた三木聡の脚本には感心する。
適度なリアリティもよい。
科学的にどうかは分からないが、合理性がありそうな作戦。その失策も説得力があったりする。
国防軍が存在するうえで、首相直下に特務隊が存在するのだが、平和な日本で彼らに実戦経験を持たせるための設定がうまい。それが「選ばれし者」のオチに繋がっている仕掛けも。
内閣の面々が喜劇部分を一手に引き受けているのだが、手練れの俳優たちがよいバランス感覚を発揮している。与党や官僚、専門家などの存在がバッサリ整理されていて見易い。
主演の山田涼介と土屋太鳳、濱田岳の三角関係ドラマ風だったり、内閣や軍人たちの利権・覇権争いの社会派風だったりの“なんちゃって人間ドラマ”がスパイスとして効いているが、飽くまでもバカバカしいドタバタ劇なのだ。
チャチなCG合成も、最早あいらしい。
とにかく、作り手も演じ手も悪ふざけせず真剣に取り組んでいることが伝わった。
惜しむらくは、爆笑するまでではない…
ひょつとしたら、『シン・ウルトラマン』より先に公開できたことも、ラッキーだったかもしれない。
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西田敏行さん、ちゃんと歩いてらっしゃいましたね。安心しました。
躍進著しい濱田岳くん、土屋太鳳ちゃんとキスシーンなんて、最近いい役が回ってきてますね。
その土屋太鳳ちゃん、染谷将太くんのアレを指差して「キノコじゃありません」なんてセリフ…大人になったね。
ご意見にいちいちうなづいてしまいます。
ほんとにそうだわーと。
私もウルトラマンのリアル世代ですが男の子と違ってそこまで凝視しなかったのと、当時はテレビのチャンネル権が父親で一台しかないのが当たり前、毎週欠かさずは見られませんでした。その後は大人になり更に疎遠に。その辺の温度差を差し引いても立派なレビューを堪能しました。
kazzさん
コメありがとうございます。
レビュー全く同意見です。私もこの発想だけでも評価に値すると思いますし、そこそこ面白かったですよ。そしてラスト『ご武運を!』。正直感動しちゃいました。それを簡単に★0.5はないだろうと思います。そんな人のレビューを見直すとなんでこんなくだらん映画★5なの?と笑ってしまうことが多々あります。私が★0.5をつける映画はステマを使っているかのインチキ映画しかつけてません。途中退場の映画も★1〜1.5をつけています。なんか途中退場映画も勉強になるなぁ、なんでこんなに面白くないんだろうと考えさせてくれるところに★1〜1.5がつけられるんじゃないかと思います。
あのキノコのシーン、凄いと思いました。
彼が、この映画における、目に見える形での唯一の民間人で被害にあった人ですよね。
意外と重要な人物だと思うんですが、シリアスにやってしまうと結構グロテスクになりそうなんですよ。
その方が好きな人も多いでしょうけど、私は柔らかい表現の方が好き。
コメディタッチのキノコ人間でも、まだちょっとグロテスクなんだけど、股間に黒塗りを入れるだけでグロテスクさが無くなるんですよね。
あのシーンに限らず、土屋さんがコメディとシリアスのバランスを絶妙に取っていたと思います。
長々とすみません。お邪魔しました。
コメントありがとうございます。
本当に、よく出来たダメ映画ですよね。
予告や発想を考えればどう考えてもパロディやコメディのはずなんです。
それが、無駄にカッコイイオープニングや無駄にカッコイイバイクとか、無駄に面白いですよね。
kazzさん、共感&コメントありがとうございます。
改めて自分のレビューを読み返してみると、やや辛辣すぎたと反省しています。期待が大きかっただけに、観たいものを観せてもらえなかった不満が募り、感情的なレビューになってしまいました。
初めから「時効警察」のノリだとわかっていたら、もっと大らかな気持ちで受け入れられたと思うのですが…。あの予告にまんまと騙されました。
はい、松本零士の999やヤマト以前のコミックも読んでる世代ですw
昨日シネコンに行ったとき、ナイルとこの作品が同じ時間に始まったのですが、なんとこの作品の方が並んでた客が多かった!ビックリ
政治の風刺はそれほどの魅力はなかったのですが、特務隊がいつの間にか出来ていたというところに恐ろしさを感じました。