劇場公開日 2022年2月4日

「大俳優のむだづかい & 大失敗のあとしまつ」大怪獣のあとしまつ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0大俳優のむだづかい & 大失敗のあとしまつ

2022年2月7日
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鑑賞方法:映画館

寝られる

特撮ファン、中でもウルトラマンが大好きなので、本作はずっと楽しみにしていました。怪獣の死体処理という、特撮ヒーローものでは絶対に取り上げられるはずのない、それでいて必ず発生するはずの問題にスポットをあてた着眼点がおもしろいです。ここにどのような切り口でアプローチするのかを期待して鑑賞してきました。

物語は、突如現れて人々を恐怖に陥れ、謎の光に包まれて死んだ怪獣の死体処理を巡り、政府内で押し付け合いが繰り広げられる中、その担当に抜擢された特務隊・帯刀アラタの奮闘を描きます。ここに、環境大臣秘書・雨音ユキノやその夫で総理秘書官の正彦、政府内の大臣たち、諸外国らの思惑が絡んでくるというもの。

死体の腐敗と膨張、有害物質の散布の危険性など、現実に起こりそうな危険予測は興味深かったです。怪獣のあまりの大きさに有効な手が打てない中、ユキノが思いついた作戦も、失敗に終わりはしましたが、なかなかよかったです。また、怪獣の造形もしっかりしていて、巨大なスケールが伝わるCGも悪くなかったです。

これを名だたる俳優をならべて、技術進歩の著しいVFXを駆使して描けば、おもしろくないはずがない!…なのに、これが残念ながら全くおもしろくないのですよ!一言でいえば、観たいものが描かれていないということです。多くの観客が求めていたものは、現実の科学と技術と知恵を総動員した巨大怪獣の死体処理、最前線の現場で死力を尽くす人々の熱い生きざま、そんな国家プロジェクトの裏側で個人の利権やエゴが絡む醜さなどだったと思います。

しかし、実際に描かれていたのは、あまりにもお粗末なシーンの数々。ろくな準備もせずに怪獣の腐敗体液を浴びる特務隊、怪獣の上で転げる環境大臣、対策会議中に終始ふざける閣僚、股間を隠したキノコ人間など、どれもこれも1ミリも笑えませんでした。さらには、怪獣の俯瞰CGはまだしも、俳優との合成シーンがかなりチープなのもげんなりしました。

三木聡監督の「時効警察」は好きですし、そこでのくだらない演出も決して嫌いではないです。でも、それは深夜番組のノリでやるやつで、映画でやるのはどうなんでしょうか。「時効警察」のような緩い雰囲気の作品の中での悪ふざけならまだ許せますが、本作でそれをやると、物語の根幹である怪獣の死体処理そのものがどうでもよくなってきます。それでは、いくらなんでも観客をバカにしすぎだと思います。

そして最もダメなのは、大オチでまさかの禁じ手!これは絶対にやったらアカンやつです。今回は舞台挨拶ライブビューイング付上映で、主演の山田涼介くんも開口一番、「脚本を読んだ途端に突っ込んだし、見終わった客が同じ感想を持つのも正解」と言っていましたが、まさにそのとおりです。もっとまじめに作ってほしかったです。

キャストは、山田涼介くんを始め、土屋太鳳さん、濱田岳さん、西田敏行さん、笹野高史さん、松重豊さん、菊地凛子さん、眞島秀和さん、MEGUMIさんらに加え、「時効警察」メンバーの岩松了さん、ふせえりさん、オダギリジョーさんら、そうそうたるメンバーが顔を並べます。彼らにこんな演技をさせるなんて、俳優陣のむだづかいにもほどがあります。そして、おそらく駄作のレッテルを貼られるであろう大失敗の責任は間違いなく三木監督にあります。この「あとしまつ」はしっかりつけてもらいたいものです。

ラストで予算縮小で続編みたいなこと言ってましたけど、これもネタですよね? もしマジなら次作は、ぜひ「空想科学読本」の柳田理科雄さんに監修していただき、本気のあとしまつを観せていただきたいですね。

おじゃる
kazzさんのコメント
2022年2月28日

おじゃるさんも酷評でしたか…
柳田さんに監修…は、良いかも知れませんね。
深夜テレビのノリを映画に持ち込むのは、私も大反対です。でも、本作はそうでもなかったな…と、思ったんですが。
私は本作は及第点なんてすが、私自身が最近最も批判している種類の映画だったなんて、やはり人によって感じ方って違うものなんですねぇ。

kazz