瞽女 GOZEのレビュー・感想・評価
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光は半分闇も半分
母性愛に気が付くまでの長い長い旅路。それを邦画の良さをきちんと取り入れつつ、情感豊かに描かれた絶品。
「ごぜさん」という文化を知り、記憶に残す為の作品としても素晴らしかったが、芝居がかった台詞回しや舞台演劇、なんなら紙芝居でも見ている様な場面転換等々に馴れてくれば、時に優しく時にえげつない、一人の人間の成長物語としても秀逸。
しかしやはり、母の愛への讃歌としての側面が入り口から出口まで心を離さなかった。「あーりがとぅ」の発音がしれっと親子だけだぶってるのが、もう…。
負の部分も容赦なく出てくるので、気持ちに余裕がないと持っていかれそうではありますが、是非とも観て欲しい作品です。
「鬼」のような母の愛が、「人を妬まず、人を恨まず」とハルの強く優しい心を育てた
期待に違わない、いやそれ以上の魂を揺さぶられる、凄まじい傑作。
明治から大正、昭和へと日本が近代工業社会へと変貌するなかで封印されるようになった、近世の旅芸人や瞽女の文化や世界。
盲目の実娘がひとりでも生きていけるように、鬼の気迫で娘を育てる様は、母の愛と葛藤が画面を通じて伝わり、観ていてとても息苦しさを感じざるを得ない。
印象的なのは、瞽女さんたちを支えていきた「コミュニティ」の存在。それは近代化の波のなかで消失してしまった、地域的なもの、パブリックなものだ。障害を持つ方に対するインフラや道徳教育は現在のほうが進んでいるのかもしれない。しかし、彼らをサポートしていくような地域社会のなかでの寛容さは、今よりも近世の日本が持っていたような気がする。
あきらかに今の私たちは、生産性、効率性の名のもとに障害者を表舞台から遠ざけ、彼らとの距離をおいている。そのいきつく先が、2016年におきた相模原殺傷事件とネットでの不寛容な反応だ。それは社会的分断が顕在化する米国だけではなく、経済的なものだけではない精神的な日本社会の「貧しさ」。本作のようなテーマを歴史的なタブー扱いすることなく、社会に閉塞感のある今だからこそ私たちは過去と真摯に向き合う必要があるのでは。
作品のなかで気になったのは、全般的にナレーション箇所が多く丁寧すぎる点。瞽女さんの世界に疎い方が多いことを配慮してであればやむなしの措置か。
東京ではシネリーブル一館の上映だが、さらに上映館が増え多くの人に見てほしい作品。
ハルのうた
盲目であり、過酷な旅を続け訪れた村の人々に三味線を奏でうたを届ける女性、「瞽女」の物語。
評価が高いようなので鑑賞。まず、瞽女というものを知らなかったので軽く予習。
盲目というだけでも大変だが、そのうえで厳しい旅を続ける瞽女さん達。
そりゃあ並大抵の躾ではこなせないわけだ…。
目の見えない娘のハルを、身も心も強い瞽女にする為、鬼と化し厳しくする母親。
今の時代だったら、それこそ虐待だと言われてしまいそうな程の躾。
しかし、それでも褒めるときは褒めるし、ハルの為だと言葉でもしっかり伝えているし、これも一つの正しい在り方なのかも…と思ったり。
そして、厳しくちょっといじわるな親方との修行。過酷ではあるが確かに強さを身に着け始めるハル。クニさんの存在は心が安らぐ。
後半は新たな親方との旅。今度は優しい親方で、瞽女としての楽しいひと時を過ごすが…。
そして最後、自身が親方となったとき気づいた気持ち。心が揺さぶられること間違いなしですね。
盲目であった瞽女さん達が生きる厳しさと愛情、そして感謝の気持ちを伝えてくれる、純和風な語り口も美しい映画だった。
「良い人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」…瞽女さんに限らず、我々の人生においても当てはまる言葉ですね。そしてそのどちらも大切な糧になることも。
また、個人的には瞽女さんを先導する手引きの存在も気になった。
視力はあれど、厳しい山々を歩く力は当然必要だし、彼女らもまた並大抵の精神力では務まらないでしょう。
行く先々でも注目されたのは瞽女だろうけど、そんな彼女たちの姿にも注目してほしい作品だった(嫌なやつもいたけど)。
そして、エンディングロール!
ホンモノの歌声はまさに圧巻!この時で96歳だったというから驚きである。
予告編の域をでない。けども映像はそれを埋める。
小林ハルさんを描くと掲げたらそれは、天皇から黄綬褒章を授与されたかたを描く、ということになり、賞賛の一色にしかなりえない。NHKの45分間程度のドキュメンタリーならともかく、上映時間1時間半を越す映画ともなると、なにかそれなりのひねりや工夫を加えないとちょっと間が持たないだろうと、危惧されるところである。その危惧はあたりで、鑑賞後も居残り続けて、観終えて結果、綺麗に描きすぎててどこか踏み込み不足な感じが否めない思いとなった。
冷静に整理してみれば、障害受容と感謝の念、瞽女を支える社会と芸道の厳しさ、親子の愛情と教育の難しさ、実に大きな枠で瞽女をとらえていて、これで何が足りないというのかと返されたら答えにくいが、ようするに予告編で想像のつく中身の域を出ていないのである。
寒さ厳しい山道を繋がって歩いていく瞽女の姿、この代表的瞽女のイメージショットを情感もって眺めることができるようにはなった。それを支えているシーンの数々は綺麗で美しく詩的である。いろんな点で、ドラマとして瞽女を取り込んだ映画『はなれ瞽女おりん』とは対極であり、きれいに描きすぎている気もするが、新潟の風景は物語としては間延びしても映像としてはじゅうぶんに間を持たせている景観美を備えていて魅せてくれている。
それと方言を使いながら字幕を出さなくてよいギリギリのところにとどめているのはありがたい。あの当時の方言をリアルに使われたら、おそらく何を言ってるのかわからなくなると予想する。文化の観点で意見分かれる面もあろうが、映画の着地点はこの辺だなと、よそ者ながらにわかった。そのような素直で丁寧なモノづくりの姿勢が全編貫いていて、作品の内容とも合致して好感度に満ちているから、不満はあるものの低くは評価しにくい作品である。
しかし興行としての作品価値は低かったのか、大阪で一館のみの上映だった。清けれど世は厳しい。
生きる道
2005年、105歳で亡くなった最後の瞽女と呼ばれる小林ハルの半生。
瞽女は盲目の三味線流しぐらいの知識しかなく、又、小林ハルさんのことはまるで知識が無く観賞。
占い師様の助言を受けた家族により、生まれて間もなく光すら感じられなくなった女の子が、物心がついた頃から瞽女として育てられ、生きていく話。
「鬼」となった母親の愛情を受けて、一人で生活する術の下地を授けられた幼少期。
そして、21円の呪縛を受けたフジ親方との行脚。クニはせめてもの救いだし、芋羊羹は映画としてせめてもの抗い。
フジ親方に本懐を教わって、サヨに追い詰められて…。
反面教師を地で行く
面白いと行って良いのか判らないけど、正に波瀾万丈リアルおしんな人生に感嘆させられると共に、娯楽だけではなく、語部としての瞽女の存在した意義や、想像を超える範囲での活動は非情に為になったし、引き込まれた。
そしてエンドロール後の「96歳の絶唱」は圧巻!!
そしてそして小林ハルさんについて鑑賞後に調べたら、まだまだ波瀾万丈な人生が続く。
この作品は半生というよりも序章という感じで驚いた。
子供からお年寄りまで一緒に観られるミュージカル
瞽女と言ってもほとんどの人が知らないし知っていたとしても暗いとかかわいそうのイメージだと思う。
そのものズバリの題名「瞽女GOZE」がどんな映画か観ました。結論はイイ映画で感動して2度観ても、また観たい。
年齢層で見方はあると思うが、私の年代は猛稽古の末に成功する根性物語「巨人の星」。社会人としてはパワハラやイジメ等今も会社であるある感。昔はAKBの様なアイドルが自分の住む町に来てパフォーマンスしていたという村の文化。色々楽しめる要素がある。
キャストもイイ。特に小林綾子、あの「おしん」が素敵な瞽女さんになって。外国人にもウケると思う。
子供からお年寄りまで一緒に観られる、分かりやすく面白いミュージカル映画です。
感動します
ハルさんの人生や人生観に感動すると共に、わが子のために心を鬼にして育てる(しつける)親の気持ちに感動しました。今の時代に同じことをしたら「虐待」になるのでしょうが、それしか生きる道がない時代・社会だったのだと思います。母は、本人以上に辛かったと思います。
(/ _ ; ) 鬼滅にかき消されたが良作ですよ!
盲目で三味線と歌を生業とする瞽女。日本で最後の瞽女小林ハルさんの生涯を描いた映画です。この映画.comでもしばらくの間イメージ写真もなく、予告編もん無かったのでどんな映画かもわからずでしたが何となく気になっていました。本日最終を見れて本当によかった。良い映画ですよこれ。
明るい目を持ちたいと祈りながらも目の前の逆境を乗り越えていく主人公に只々涙です。人生を旅に例え旅を一緒にする人が良い人ならばそれは祭り、悪い人であればそれは修行、と人を恨まない精神に共感しました。また映画中に
〝私ら初めから真っ暗、、、何も怖いもの無し〟
という言葉。妙に私の中で響きました。そうそう私も生まれた時は何も持たずに生まれたんだから失うことなんて怖くないんだ、、、、となんだか勇気をいただいたような気がします。
鬼滅の刃に完全に消されて上映館がほとんどありませんが、、、よかったらビデオで見て下さい!
子役、、、演技涙、、、、親の顔が見たい!(笑)
ぜひ観てください
つい最近まで、こんなに過酷な人生を生きた人がいたのかと思うと、今の世の中の幸せさを感じる。
今でも、人の思いはそれぞれなので、不幸な境遇の方もいるとは思いますが、でも、ハルさんの自分の運命を受け入れた生き方には、感動を覚えます。
今度、生まれ変わるときには、神様が明るい目を与えてくださるよう、心から望みました。
瞽女という存在を心に刻む。
「瞽女」という存在とその文化をこの作品で知る。
以前の全盲の女性が生きる重要なひとつの道、職業であり、唄のプロフェッショナルでもある瞽女。
小林ハルさんという実在した瞽女の人生を元にしている。
一言で表すならば、壮絶…!
ストーリーはハルさんの幼少時から青年期が主で、トメさんという実母、サワさんという師匠かつ母親的存在の2人の影響を大きく受けながら、ハルさんが自立した瞽女となっていく話。
時代のせいもあるけど、ハルさんの修行時代がかなり壮絶…。
ハルさんを生きていかせるために鬼(のように厳しくしつけをする)となった母・トメさんの修行もまだ幼いハルさんにはかなりキツいスパルタだったし(指定したことができなければごはん抜き、弱音を吐けばビンタ、少年マンガも真っ青の重い荷物を背負った階段上り、雪の上を草履で歩いて吹雪の中唄わせる、など)、底意地悪い師匠に弟子入りして旅に出れば理不尽な仕打ちの数々、良いお師匠さんに弟子入りして幸せな日々を過ごしたのも束の間、意地悪な姉さんにひがみから取り返しのつかない酷いことをされる(このシーン本当に辛かったし、サヨ姉さんに心底殺意湧いた…)。
でも母・トメさんは心からハルさんのためを思う愛情から厳しくしており、トメさんのそんな姿は私がこの作品で一番心震えたシーンでもあった。
トメさんが健気に頑張るハルさんを見てこっそり涙したりしてるシーンは観てるこっちも涙が出たし、鬼として振る舞うトメさんが辛そうな顔を見せる度に(わたしが)泣いてた。ハルさんの頬をぶった手を後で震わせてるシーン、思い出しても涙出る…。影の主役はトメさん。
瞽女という存在を知る(そして心に刻む)には良い映画。かつての全盲の女性が置かれていた状況を知るにも良い。最後には小林ハルさんご本人の力強い瞽女唄も聴くことができる。
新潟でロケをしたという自然の景色も美しかった。
ただ、壮絶なので覚悟は持って観た方が良い作品。
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