「水風呂みたいな映画」望み まきこさんの映画レビュー(感想・評価)
水風呂みたいな映画
3月21日
Amazonプライム特典で視聴。
前情報が1mm(堤真一が出てる!しか知らない)の状態で見たため、ドキドキしながら楽しめた。
感想を一言で述べれば、水風呂。
普通、温泉施設に行く時は温泉に入る。
サウナがあったり、水風呂があったりするが、温泉が1番の目的って人が多いと思う。
温泉の好みの温度や、内湯が良いか露天風呂が良いかは人それぞれだったとしても、やっぱりぬるま湯以上が一般的だ。
けれども、水風呂好きな人は水風呂好き。
じーっと入ってると冷たい水の中にいるはずなのに、身体がじわじわと暖かく感じる。
その感覚がたまらないって人もいる。
まさに水風呂って感じの映画。
いつも自分がぬるま湯に浸かってるのがよく分かる(もちろん比喩的な意味で)。
ストーリーは救いのない二者択一
自分の息子/兄は被害者なのか?加害者なのか?
その内実も極端で、
被害者だとすれば死んでいて
加害者だとすれば人殺し。
比較すれば前者を望む父
うちの息子は人殺しなんかじゃない。
比較するまでもなく後者を望む母
うちの息子は死んでなんかいない。生きててくれればそれでいい。
夫婦の異なる「望み」。
果たしてそこに「望み」はあるのか。
多分、セリフには「望み」って使われてなかったと思う。そこもオシャレポイントか。
この話の肝は二者択一。
どちらに転んでも望みなんかない。
さらに、映画とかフィクションにありがちなオルタナティブもない。
オルタナティブというのは、簡単に言えば第3の選択肢のこと。
たとえば、被害者でも加害者でもなく、犯人を追いかけてるんだ!とか。
普通にしてたらそういう発想も家族には出てくると思うんだけど。
〇映像が巧い
怪しい雰囲気
日付が出てくるのとか何かしらの事件感を彷彿とさせていた。
上手くいっていない家族像は、これまでもあった。
例えば、家族ゲームとか(懐!)、流星ワゴンとか(懐2!)
これらのファンタジー家族ドラマとは違くて
オルタナティブがない。
「もしこうだったら」「時間が戻せれば」
そういうタラレバじゃなくてあくまで現実的。
個人的には、こういう映画の構成好きなんだよなー。
逆の理由でLALALAND好きじゃなかったね
(音楽はサイコーでいまだにアラーム音だけど。)
内蔵が鉛になったような気持ち悪さが残る。
これはストーリーもあるけど、映像の巧さに支えられていたと思う。
〇豪華俳優陣がすごい
1人1人の感情の機微がよく現れていたと思う。それぞれに焦点をあてた考察も面白いんだろうけど、ここでは特に印象に残ったポイントを挙げておく。
堤真一がうまい
特に泣き崩れるところのタイミングと表情がうますぎて!こちらにまで悲しみが伝わってきた
石田ゆり子がかわいい。
いつまでかわいいんだ。このオバサン。
タダシくんが死んじゃって最悪な気持ちのところでメガネの石田ゆり子がめちゃくちゃ可愛くて癒された
〇疑問点
ちょっとよく分からなかったのが、堤真一が息子の刃物とリハビリの本を息子の部屋から見つけて、息子の無罪を確信するシーン。
いや、もっと早く息子の部屋確認しない??
疑いというよりも、心配で息子の部屋いろいろ見ると思うんだけど…。
あと、もう1つ疑問。
テーマは何だったんだろう?
家族?マスコミ?コミュニケーションの難しさ?
どれとも取れるし、どれとも取れない。
よく言えば、様々なテーマが二者択一という設定で一貫して描かれていた。
悪くいえば、二者択一という設定だけで通してた。
〇総評
映像と俳優陣のおかげで結構よく出来た映画になっていて、ストーリーもわかりやすいので☆3.65くらい。堤真一と石田ゆり子が好きなので☆4。
けど、見た方が良いか、見ない方がよいかという二者択一であれば
見ない方が良い。
普通の人はハッピーな話を見た方が良い。
水風呂好きな方(もちろん比喩的な意味)には良いかも。
そうじゃなくて、温泉に入りたい人は、この時間にトイストーリーを見た方が良い。