劇場公開日 2021年7月16日

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「少女を取り巻くこの世界。」17歳の瞳に映る世界 レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0少女を取り巻くこの世界。

2023年5月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

冒頭で主人公が歌う歌。男に翻弄される自分を嘆いた歌詞。女としてこの世に生まれてきたことへの嘆きともとれる。そんな彼女に浴びせられる心無い罵声。

舞台は閉鎖的なペンシルベニアの田舎町。思わぬ妊娠に一人悩む主人公。彼女は親にもその事実を打ち明けられない。この田舎町で打ち明けようものならどうなるか、彼女はよく知っている。
田舎の病院は検査も不正確で、あげくに市販の検査薬を使う始末。そんなものすでに試した上での来院なのに。
中絶に対しては当然保守的で、物々しいビデオまで見せられる。

本作を通して主人公が感じる女性であることによる様々な重荷。父との確執、職場でのセクハラ、生理のつらさ、性行為での男性側の横暴、妊娠のリスク、そしてその妊娠を実の親にも相談できないこの世界の閉塞感。

やむなく親に内緒で堕胎をするために仲の良い従妹とニューヨークへ。堕胎を行う病院の前ではキリスト教原理主義者たちによる中絶反対デモが行われている。

帰りのバス代のために男に身を許す従妹と主人公の指が辛うじて繋がる。同じ「女」であるという同士としての二人の絆。

主人公は何故に親にも相談できず、むしろ親に内緒で堕胎に至らなければならなかったのか。帰路につくバスの中で柔らかく暖かい陽射しだけが彼女を優しく包み込む。彼女を取り巻く世界とは対照的に。

今のこの世界で女性の生きづらさを説明を極力排した映像のみで見せた監督の手腕にうならされる作品だった。

以前削除されたレビューを再投稿。

レント
琥珀糖さんのコメント
2023年5月21日

いつも共感ありがとうございます。
「ケイコ目を澄ませて」のレビュー。
とても共感と感銘を受けました。

再レビューなのですか?
(削除されてしまったのですね)
この映画は個人的には「あのこと」より好きでした。
従姉妹が頼もしくてよかったですね。

琥珀糖