「淡々と描き出される現実に自分の無力を思い知る」17歳の瞳に映る世界 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
淡々と描き出される現実に自分の無力を思い知る
原題と邦題は全く異なります。原題は作中もっとも大切な場面のセリフです。注目して鑑賞することオススメします。邦題は作品そのものを表す良タイトルです。
本作は親に内緒で中絶手術を受けるためのショートトリップ・ムービー。少ないセリフで紡ぎ、描写で語っていきますから観る側に想像の自由度をかなり与えてます。
このくそったれな世界、17歳の女性の受難の数々は、辛いです。淡々と、ホントつらいです。けど、これが現実なんでしょうね。
映画「sns」でもそーでしたが、フツーと思われる一般人が獣となり弱者に群がってくるこの世界は、実態は証明しにくくい暴力に溢れているんでしょうね。本作はそんな世界をどうこうしようといわず、犯人探しすらせず、17歳の女性の受難を通して淡々と映し出します。
そして、きっと変わらないであろうこの世を、立場が弱い者がどう生き抜かなければならないか?も。
この弱者にとってのくそったれな世界は今に始まったわけではないわけだから、多くの多くの悲しんだ女性達の想いの積み重ねが少女に差し伸べられた手を生み出したのだろうな、、って考えるとやるせないです。連携して協力して立ち向かわねばならない強さは、悲しみの強さだから。
僕は何かできるのか?何かを変えられるのか?と思うと無力であると痛感します。女性にまとわりつく生き物がいる限り。性欲を持ち、理性と道徳心が薄い人間が存在し続ける限り、変わらないのでしょう。哀しいけど。自分、家族、友人、知人の手を握ることが精一杯です。くやしいけど。
ラスト、彼女達の瞳には何が映っていたのだろうか?
何を見ていたのだろうか?僕には変わらぬ現実への辛さしか見えませんでした。
ホント、男ってくそったれな生き物です。