ファースト・カウのレビュー・感想・評価
全117件中、61~80件目を表示
睡魔と戦えば美味しい味に到達出来ます
2019年の作品が何故今日本公開? しかも地味を絵にかいたようなスローテンポ&暗い画面の連続で、睡魔の恰好の餌食のような作品なのに。あちらでは新進気鋭のA24の配給だそうで、ならばきっと得るものがあるだろうと、配給会社の名前だけで鑑賞を決めた。凄いもんですね、A24って、ここまで私の信用を勝ち得るのですから。「A24の知られざる映画たち」の特集では、アメリカの“インディーズ映画の至宝”と称される本作監督のケリー・ライカートの新作「ショーイング・アップ」のみで、その前作となる本作は対象外。ですが、映画の後半になって突然登場のインディアン女性に見覚えが! そう「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」2023年での圧巻演技で各女優賞総なめの勢いのリリー・グラッドストーンではないですか! 独特の落ち着き払った低音に即座に気付いた次第。彼女の存在が日本公開の後押しになったのかどうか?なにしろほんのワンシーンでの登場ですから。念のため、ケリー・ライカート監督は1.5mちょっとの小柄な女性なんですね。
19世紀の西部開拓時代のオレゴン州が舞台で、ビーバーの毛皮(ソフト・ゴールドと呼ぶとか)密漁に男どもがインディアン達を迫害する状況はマーティン・スコセッシ作品と全く同じ。パリの流行までも気に掛ける商売っ気には感心すらしてしまう。彼らが英国から持ち込んだ乳牛が本作のタイトル・ロールってわけ。天涯孤独の白人と中国移民の男の2人の思い付きで映画は動き出す。この牛の乳を夜間に搾り取って盗み、それを使ったドーナツで金を稼ぎ、いずれ華やかなサンフランシスコに出て自分達の店を開く夢を描く。彼等にとって八方塞がりの現況からの唯一の脱出策でもあった。
ビーバーを盗む悪徳商人の放ったらかしの牛から乳を盗んで美味しいドーナツで金儲け。開拓期の無秩序の最中、先に手を付けた方が勝ちのカオスに生き残りを賭けたエネルギーすら感じてしまう。最大のポイントは、汚らしい環境の粗末な調理器具によって出来上がった、丸々と膨らんだ大きめのレモンサイズの揚げパン、すなわちドーナツです。黒い板に載せられた8個のそれは、良質なミルクをたっぷり含み、はちみつを掛けられツヤツヤと輝く。ビーバーがソフト・ゴールドなら、これはフライド・ゴールドでしょう。どちらも男どもの夢が凝縮されているところがミソです。
何故こんなに旨い? 中国の秘伝の調味料を使ってますと、とぼけるも乳盗みが露見した時一気に命を狙われるサバイバルの世界に一変するる。その契機となる仲買人役にやっと見慣れたハリウッド役者トビー・ジョーンズが登場すると、ちょっと安心するのですが。多勢に無勢で当然に2人の行く先は南に位置する花のサンフランシスコではなく、冷たいオレゴンの土の中と言う結末で冒頭の現代シーンでの白骨に繋がる。ここで浮かび上がるのが2人の人種を超えた友情ってわけ。映画の冒頭のテロップ「The bird a nest, the spider a web, man friendship.鳥は巣、蜘蛛は網、人は友情」に結ばれる。
極めて寓意に満ちた作品ですが、スタンダートのほぼ正方形の狭いサイズで、昼なお暗い描写はかなり辛い。もっとドラマチックに、もっとスリリングに描き得たのに。彼らを包み込む大自然だってもっと美しくもっと残酷に描写出来たのに。予算なのか技量なのか、いずれにしても勿体ない。
映画館からの帰途、ミスター・ドーナッツに寄ったのは言うまでもありません。私は昔からオールド・ファッション派、これにハチミツかければ映画の味でしょう。
牛歩映画? 西部開拓時代の野望と友情をじっくり描く
西部開拓時代のオレゴン州。
アメリカンドリームを求めて来て偶然出会った料理人クッキーと中国人移民キング・ルーは、この地に初めて来た牛から牛乳を盗み、ドーナツを作って販売し、一獲千金を狙うのだが…。
西部開拓時代の野望と友情を描く。
二人の関係性、友情を二人の行動、しぐさなどから繊細に描いています。
並行して、新しい商売の秘密がいつバレるか、ひやひやドキドキしながら観ることになります。
そして、迎えた結末は・・・。
物語の展開が遅いため、そこを楽しめるかどうかが人によって大きく評価が分かれる点であると思います。
ほぼ1シーンだけですが、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のリリー・グラッドストーンが、本作でも白人の仲買商の妻である先住民の役で出演。
盗んだミルクで菓子作り
盗んだミルクで一儲けする話と聞いて、てっきりフロンティア精神にあふれたウェイ系の男たちの話かと思ったら、むしろウェイ系のノリに乗れないはぐれ男2人のブロマンス映画だった。
開拓地の原始的でなかなかに過酷な生活が丁寧に描かれていて、着古し手汚れたジャケットの重さ、ブーツが湿った大地を踏む音、もいだキノコの感触までが伝わってくるよう。川辺で吐く息が白く、相当現地は寒いことがわかる。
ちなみに開拓初期は、白人が川でビーバー捕獲するくらいで原住民ともそこそこうまく共存していたらしい。
そして鑑賞中は揚げドーナツめっちゃ食べたくなる。映画コラボのドーナツを販売している新宿武蔵野館で観るべきだったか・・・。
パンフレットは売り切れ中とのことで、こういったインディーズ系の映画に人が集まるのは良いことだと思う。
鑑賞動機:あらすじ10割
うーん引き続き睡魔との闘いに。いつの間に二人に???
牛が出てくるまでが結構長い。牛に話しかけるシーン好き。あの焼き菓子、不格好なのに妙に美味しそうに見えるのなんで。
冒頭シーンの意味は途中で薄々わかるけど、ということは、もう少し掘ったら銀を入れた袋が出てくる可能性があるのだろうか。
リリー・グラッドストーンの出番が少な過ぎた。あの仲買人は財産目当てに違いない。そうに決まってる(だから違う映画だって)。
断っておきますがこれ褒めてます
ケリー・ライカート監督、私自身はまだ一部の作品しか観られていませんが、印象としては「観るために気力体力が要る」作品を作られる監督です。扱われる題材と言えばどこにでもいそうな個人の、誰しもが陥る可能性があるような「巧くいかない現実」なのですが、変にドラマティックにはせず、ごく自然でリアリティーのあるストーリーテリングで語られます。なんなら、観ていて予想できるからこそヤダ味がしんどく意地悪い。
断っておきますがこれ褒めてます。人によっては映画に求めるものが違って「こんな作品」という評価もあると思います。或いは、テレビに多い「市井の人々にクローズアップしたようなドキュメンタリー番組」が好きだったりすると、これだけ優秀な「作り物」を観て納得できる作品と思っていただけるような気がします。
本作はまた構成が肝となっています。書いてしまうとネタバレになるし、有りがちだとも言われるかもしれませんが、その後の展開はおろか結論すら予想できるからこそヤダ味が強く、観ていて「そこら辺で辞めておいて・・・」と無駄とわかっていながらも願いつつ、それでも裏切らない展開に溜息ができます。
繰り返し断っておきますが、これ褒めているんですが、そうは聞こえないですよね。兎に角、観れば「納得して重い気持ちになれる」って変な言い方ですけど、挑んでみたい方はよきタイミングを見計らってご覧になってください。面白いです。
ちなみに、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(23)』のリリー・グラッドストーンさんも出演しています。彼女のフィルモグラフィを確認すると、ライカート監督の『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択(16)』にも出演されていたのですね。私、正直どの役か思い出せないのですが、逆に、今回はすぐに気づくことが出来、顔認証出来て得した気分になりました。やっぱり、この俳優さんは印象的ですね。特に眼が素敵。
期待度○鑑賞後の満足度◎ 久方振りの本格的西部劇、それもバディもの。しかもかなり変わった切り口の。令和版『明日に向かって作れ(焼け、というよりは揚げろ?)』か?
※2024.01.07. 2回目の鑑賞【シネリーブル梅田】1回目の鑑賞では中ほど位まで寝てしまったので再鑑賞。
①西部開拓時代ものでもかっての西部劇で主流であったゴールドラッシュ(金鉱掘り)ものではなく、ソフトゴールドラッシュ(ビーバー狩猟)という目の付け所が新鮮。
恥ずかしながら、ヨーロッパ人の北アメリカ(アメリカ合衆国・カナダ)入植の始めからビーバーの毛皮が新大陸の稼ぎ額だったとは知りませんでした。
②そういうソフトゴールドラッシュが背景だからか、かっての西部劇のようなドンパチはありません。
しかし、ハードであれソフトであれ、西部開拓時代を舞台にしている限り、そこに根付いて暮らしていこうという入植者はともかく、流れ者はやはり一攫千金を狙うものが多いのは変わりません。
クッキーは言葉少なに「ホテルかパン屋をやりたいな」と言うのに対し、キング・ルー(しかし、此の時代の中国からの流れ者にしては非常にキレイな癖のない発音の上品な英語を話すのが何とも不思議)は一攫千金を狙う噺ばかり吹いております。
③当時は夜は真っ暗でしかも鳥獣の鳴き声や風、雨等の音以外は無音の世界。
当時の人達にとっては勿論当たり前の世界ではありましたが、それだけ却って人間一人一人の輪郭がハッキリ見えていたのかも知れません。
列車を襲撃して金を奪う派手な強盗も、一頭の乳牛のミルクをコッソリと搾るチンケなこと(人にお袋の味や故郷の味に想いを馳せさせて幸せな気持ちにさせただけマシかも知れませんけれども)も、人の物を盗るという意味では同じ。
同じ様な末路を辿るのは仕方がないかも知れません。
でも、ブッチ・キャシディとサンダンス・キット(追われて崖から川に飛び込むシーンで否応なしに思い出さされてしまった)のように派手に散るのではなく、人知れず(「ここなら誰にも見つからない」とキング・ルーが言った通り現代まで見つからなかった)、オレゴンの川をかそけき風が蕭蕭とわたるように、枕を並べて逝く方が、流れ流れて辿り着いたオレゴンの入植地で一緒にケーキで一攫千金を狙った二人には相応しかったかもしれません。
一瞬手にした(銀貨や紙幣が入っている)袋を見て(これなら一人で南の土地で新規出直し出来るかもしれない)、でも友と共に居ることが何より大事だと瀕死の友の横に横たわることを選んだキング・ルー。
現代は光も音も溢れすぎて却って人の輪郭がぼやけているのかもしれない。本当の友を見出だすのが難しくなっているかもしれない。
だから、“鳥には巣、蜘蛛には網、人間には友情”と最初にクレジットで表れされた通り、友情が人間にとって本質的に大切なものであるというメッセージを現代に声高ではないけれども送っていると思わずにはいられません。
④日本では、製作年度からいうと後の『キラーズ・オブ・フラワームーン』の方が先に公開されましたけれども、リリー・グラッドストーンは本当に魅力的な女優さんです。
もしかするとネイティブアメリカン初のアメリカ(合衆国)を代表する女優さんになるかもしれません。(アンジェラ・バセットがアフリカンアメリカン初のハリウッドスターになるという予想を思いっきり外した私の思うことですから説得力ありませんけれども。)
⑤最近の若者向け映画よりも此のような映画の方が、これからの映画の題材・これからの映画が描こうとしているもの・これからの映画が向かおうとしている方向が良く理解できるように思われてなりません。
※追記:最後までケーキを食べられなかったお兄さん、何故かおかしくて印象的です。
逃げるなかで「Baker(パン屋)とBegger(乞食)に共通するものは?」「Bread(パン)」というクッキーが自虐ネタのようなジョークを言うシーンがあります。
「人はパンと水だけで生きられる」のに「ケーキを焼く」たいう贅沢は、幸になる場合もあれば不幸の種になる場合もある、というキリスト教的な暗喩も含まれているのかな、と思ったら此の一節の出処はギリシャのある哲学者の言葉でした。勉強になりましたわ。
閑さや耳にしみいる乳搾り
始まりのシーン、タンカーが現れて来て、あれ、開拓時代の話では。と、戸惑いましたが、白骨が現れて、なる程、そう言う展開かと納得しました。そこからラスト迄、静粛の中でのセリフと表情に引き込まれました。
もう一度観たい気がしますね。
優しいアメリカ人もいます。
映画『ファースト・カウ』、アメリカインディーズ映画シーンでは、欠くことのできない女性監督、ケリー・ライカート。繊細でこまやかで、いままでのアメリカ映画では感じることのない人間の息遣いが伝わってくる。彼女の描き出すアメリカに興味が尽きない。
『キラーズオブザフラワームーン』とは対局
同じ西部を舞台にしても、ここまで違うのか。
キラーは、西部開拓時代ではないけど。
西部開拓時代から続く、荒くれのイメージを踏襲した作品。
アメリカインディーズ映画シーンを騒がす、ケリー・ライカートが西部を描くと。
ケリーが女性ということもあるだろうか。
着眼点、物語の展開、セリフ、一つ一つに細やかな配慮をかんじてしまう。
たしかに、西部開拓時代の荒々しい世界なのだけど。
そこには、確かに優しさがあり、絆があり。
優しさと絆が、ケリーのキーワードだろうか。
確かに、荒くれや無法者が横行する西部開拓時代でも、人々の生活は、地味で質素で。
ケリーは、過去の作品でも、西部開拓時代をそんな観点から捉えている。
相棒の登場するケリー作品。
『Old Joy』しかり、『ウェンディ&ルーシー』しかり。
ケリー作品には、相棒が登場する。
それは、人間ばかりではなく。
『ウェンディ』では、雑種の犬であったり。
けっして孤独がテーマではなく、相棒と立ち向かう人生だったりする。
互いにいたわりあい、支え合い。
それが、不自然ではなく。
けっして、互いに依存する関係ではなくて。
厳しい現実の中で、あるいは必然とも伺える関係で、助け合う。
無法時代の西部であっても、殺伐とした現代社会でも、その姿勢は崩れない。
このあたりが、ケリー作品の根底に流れるものか。
ケリー作品に見るアメリカ
いままでのアメリカ作品にはない、心のふれあいがテーマになることが多い。
感性からゆくと、日本人に近いのかな。
そう思えてしまう。
しかし、私が知らないだけで。
ケリー・ライカートの描くアメリカも、ひとつのアメリカの側面なんだろうと。
ケリーは、庶民のありのままの姿を描くのが得意。
裕福ではない、日々の生活で手いっぱい。
アメリカ社会の厳しさが、伝わってくる。
でもそんな中で、ただひたむきに生きる。
そんな素朴なテーマがいい。
旅に病み夢はカリフォルニアホテルにパン屋で大儲け
西部開拓時代にアメリカを渡り歩くお人好し米国料理人と
世界を駆け巡った才気走る中国人が、
ひょんなことから再会し、二人が牛乳泥棒してちょっと小金を儲け、その悪事がバレて逃走する話
各自の金儲けの欲と料理自慢の欲がだんだんと大きくなるにつれ、
原料の牛乳泥棒と言うリスクが膨らんで行く。
そのリスクの冷や冷や感が超スローな話の展開とのバランスが絶妙に取れていて、
話はアウトに近づく。
そして、運悪く離ればられになってもまた再会して、逃走が続くと思って休憩していたら、
いきなりエンド!
その先はイントロで見てしまっていたアレです。
このラストは仕方ないか?
二人仲良く枕並べて良かったかも…
米中問題もこうあってもらうのもいいかも?
漁夫の利は誰が得たのか?
ああ、アメリカもこんなソフトな作品ができるのかとスタッフを見たら、
ケリー.ライカート監督さんだった。
人殺しのない?
西部劇だったと言うことです。
(^_-)
ファースト・カウ
「オールド・ジョイ」「ウェンディ&ルーシー」などの作品で知られ、
アメリカのインディペンデント映画界で高く評価されるケリー・ライカート監督が、
西部開拓時代のアメリカで成功を夢みる2人の男の友情を、
アメリカの原風景を切り取った美しい映像と心地よい音楽にのせて描いたヒューマンドラマ。
西部開拓時代のオレゴン州。アメリカンドリームを求めて未開の地へ移住した料理人クッキーと
中国人移民キング・ルーは意気投合し、ある大胆な計画を思いつく。
それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である牛からミルクを盗み、ドーナツをつくって一獲千金を狙うというビジネスだった。
クッキー役に「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のジョン・マガロ。
これまでライカート監督作の脚本を多く手がけてきたジョナサン・レイモンドが2004年に発表した小説「The Half-Life」を原作に、
ライカート監督と原作者レイモンドが脚本を手がけた。2020年・第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。
( ̄▽ ̄)
全ては自然
がもたらしてくれる恵で生きている
なのに、所有し権利を主張する輩や
盗み掠め取り利を得ようとするものがいる。
現代は所有すれば全ての権利が保障される
かのような世界になってるが
本当にそうなのだろうか?
それをさりげなく刷り込み見事に見応えある物語へと
仕立て直した本作はまたまたA24リリースである。
成功し利さえ得られれば良いと考えるチャイナ人に
生き延びることに必死なスラブ系中東混じりの男に
所有と権利の主張はばっちりの英国商人と
それらが交差する土地が米国オレゴン。と言う設定
リリース元含め凡ゆる点でやられた感満載な良作◎
良い年が迎えられそうだわw
案の定、人は容易に幸せになれない
いまいち謎なタンカーの長回しから始まる作品。多分監督に意図はある。
1820年代のアメリカ、西部開拓時代より少し前の時代、オレゴン・カントリー(オレゴン州ではない)での話。
料理の腕は確かだが、機会に恵まれないフィゴウィッツは、料理人として狩猟の一団と行動をともにする中で、謎の中国人キング・ルーと出会うことで人生の転換点となる。それはけっしていい意味ではないのだが。
時代がそうさせたのか、一攫千金を狙い土地の有力者が手に入れてきた雌牛の乳を闇夜に紛れて搾り、盗み取って極上の菓子を作ることとした。狭い土地でのこと、悪事は程なく見破られる。彼らはその後ある結末を迎えることとなる。
冒頭とリンクする切なくなる結末。果たしてあれは誰が、何が、どのようにしてもたらしたものなのか。そこは大きな見どころだと思う。
なお、ちょうど100年後くらいを舞台にした『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でも登場したリリー・グラッドストーンが、またしても先住民族の女性として出演している。本作がアメリカで公開されたのは数年前だが、日本では今となったので、同じ年のうちに2回同じようなキャラクターとして姿を見せたのは、偶然ながら面白かったですね。
ハイセンスフォークロア西部劇
原作があるんだ。ディテールが面白い映画なのでどこまで原作にあったのだろう。ともかく冒頭の現代に掘り起こされる二体の白骨遺体。時代が一気にとんで、ATGの時代劇的な方法論で西部劇が展開される。ビーバー追ってる男と中国人が出会って、いっしょに暮らし、現れた牛の乳を夜な夜な盗んでドーナツを作って一儲けするが、まさかの牛の持ち主に味が気に入られのこのこ屋敷にケーキを作りに行き、、みたいな展開でアメリカ西部のフォークロアみたいな風味の映画。そうそう、今時らしく、インディアンの言葉はしっかりインディアンの言葉でやっていて、あ!と思ったのはキラーズオブフラワームーンのあのリリーグラッドストーンの笑み。やはり品がある。そこからは一気に逃走劇なのだけど、この監督独特の省略でハラハラ感ヒリヒリ感が漂う。ドーナツを買いたくて買えなかった青年がそこで出てくる。
冒頭の並んだ白骨遺体にたどり着く物語で大振りをして、ドーナツ買えかなった悔しい青年を売ってたかと思うとここへ来るのか。そして最後の最後は何も加えず、その先を想像させる綺麗な綺麗な着地だった。
モウこりごり。
未開の地で一儲け考える料理人クッキーと中国人キング・ルー男二人の話。
いつも作っていた味気ないクッキー、ドーナツにミルクを加えたらと!仲買商が飼ってる牛のいる農場に忍び込み乳搾りからのミルク泥棒を…。
衛生的どうなの!?と、ちょっと潔癖な私は思ってしまったんだけど、あの揚げたてドーナツからのハチミツ塗って食べるは観てて美味しそうだった!昔、ばあちゃんもあんなの作ってくれたな~何て思いだしながら鑑賞(笑)
てか、「ファーストカウ」ってタイトルなのに牛出てくるまで遅くない!?(笑)
ミルク加えてから毎日が繁盛で大行列だったけど引き際を見抜けなくて…って感じだったけど。
ラストの終わり方はどっちに捉えたらいいんすか?!(笑)
すごくいい人が主人公の異色な西部劇
すごくいい人が主人公の西部劇ってあまりないと思う。大抵の映画に登場する人たちは銃で撃ち合ってしまうから(だから悪い人だと決めつけもしないけど)。本作に出てくる2人は人を殺さないし、他人を騙そうとしない。牛乳を泥棒するのはいけないことなんだけど、その盗みのシーンでさえもなんか優しさに満ちている。ただ、ドーナツを作って売って、儲けた金で夢を叶えようとする姿を描く。
時代背景もあるから正直、ドーナツはあまりおいしそうじゃない。でもウイスキーのワンショットよりも高い値段でバカ売れしていく。そんな彼らの商売を見るのは面白かったし、その過程で生まれた友情がとても温かい。最初と最後のシーンがつながるのもいい。しかもはっきりさせない演出がそれでいいと思えた。
ただ、全体的にゆったりとしすぎているから途中眠気と戦うのが大変だった。冒頭の船のシーンからしてゆったりしすぎだ。個人的にはあまり得意ではない。
牛さんも心優しい人に惹かれる。
ポン・ジュノも称賛してたので期待して鑑賞。前半はウトウト。ドーナツの商売を始めたあたりから面白くなるので目が覚めました。でも後の展開は予想通り。
ただ、あの西部開拓当時、こんなにやさしいアメリカ白人の方がいたんですかね。森の中で素っ裸の中国人に食事と毛布を与えて匿ってあげるなんて。「キラーオブザフラワームーン」を見てアメリカ白人にあきれた人は見てもいいかもしれません。あの映画に出てたリリー・グラッドストーンもちょい役で出てたし。
友情っていう割にそんなに男同士の熱い友情が感じられるような内容ではありません。まあ、あの当時でこういう二人がいればすごいんでしょうけど。
牛がクッキーにやけになついてて飼い主の仲買商にばれそうになるところが可笑しかったかな。体調いい時でないとちょっときつい作品でした。
自分にとっては新しい形のA24作品だったー
気持ち的に好きと嫌いとが交錯した作品。
だからなかなか筆が進まず(←表現が昭和w)レビューできなかった。
【好きだった点】
・画面が正方形に近くて、画面の“右側と左側”とか“手前と奥”とかわかりやすい構図になっていたこと。
・動物の使い方が上手で、なんだかホッコリさせられたこと。
・善と悪のバランスが絶妙。
【苦手と感じた点】
・ストーリーはに目新しさは無く、冒頭のココ掘れわんわんがピークだった。
・お散歩中に骨見つけてそんな恍惚とした表情でガシガシ掘る女子いる??
・静か……
・せっかくのOdessaデビューだったのに、音がそもそもほとんど無かった😂
A24にもいろんなパターンがあるのねー (*´∀`*) ノ
ゆったりしっとり、不思議な感覚に浸れる映画
画面に引き込まれるとはこう言う事を言うんだろうか。お話の本筋とは関係ないカットもちょいちょい挿入されて、自分の中で映画の世界が広がる感じ。これは普通に現代の森で撮ってて、こっち側にはカメラが並んでて、、、なーんて事を一切意識せず我に返ってから、「あれ?今自分は映画の中にいた?」みたいな。静かでしっとりとした映像。音楽も良かった。期待以上の出来でした。
確固として存在する無常感に激しく感動する
2022年外国映画ベストテンの3位に置いた傑作「ミークス・カットオフ」と同様、西部開拓時代のアメリカ🇺🇸を描いたケリー・ライカート監督作。
今作もまた破格の傑作。
冒頭、林の中で二体の人骨を発見する女性。
そして舞台は200年前のオレゴンへ。
一攫千金を夢見て未開の地に向かう人々、これから街へと育っていくであろう「砦」、制圧した先住民との共存、そしてヨーロッパから初めて運ばれた乳牛。
盗んだミルクで作ったドーナツを売る二人。
大金を得るも死と隣り合わせの儚い存在だった。
思えばたかが200年前のこと。移民の国として成熟したアメリカ🇺🇸の原風景、確固として存在する無常感に激しく感動する。
全117件中、61~80件目を表示