潜水艦クルスクの生存者たちのレビュー・感想・評価
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実話をもとにした話だけど、内部はフィクション。このパターンはあまり好きではないのですが・・・
沈没したロシア潜水艦。その乗組員の苦闘、残された家族の悲哀、そして救難に係る軍人達の苦悩を描く物語。
ソ連崩壊後の極貧に瀕していたロシアで実際に発生した、潜水艦遭難事件をモチーフにした物語。
「潜水艦映画に外れなし」の格言(?)通り、極めて私好みの作品で、良作だと感じました。
密閉された潜水艦。迫りくる海水、減り続ける酸素。死の恐怖に怯えながらも生き延びる為に奮闘する乗組員達。
潜水艦内部の話はフィクションなんでしょうが、小話をして場を和ませたり、死を覚悟して部下に話しかけ軍歌を歌うシーン等は、リアリティと感動を感じることが出来ます。
この作品の特長は、生還を待ちわびる家族、そして救助に取り組む人々を描いていることなのでしょう。
特に残された家族達の不安と憤りと動揺は、過剰な描写はなく淡々と描かれていることに、寧ろ迫力と緊迫感を感じます。
そして、救助に取り組む人々も、変に悪者にせず、各々の立場で最善を尽くそうとしていることに好感が持てました。
地味ですが一見の価値がある秀作。私的評価は4.5にしました。
ロシアとの類似性
約20年前の事故ですが、はっきりと記憶してます。まさか背景にこんなことがあったとは。全く知りませんでした。そもそも、海軍の演習だったはずがロシアの面子だけの為に見殺しにされるなんて。
長官は、彼らは覚悟をして職務を全うしているみたいなことを言っていましたが、逆に国の上層部はどうなんだ?と思います。自分達の身内だったら直ぐに救助したのではないでしょうか?(そもそも身内を危険な職務にはつかせませんが)
上層部は、自分達の保身の為に、海軍である彼らの愛国心を利用しているだけなのだと思います。
私の思う愛国心とは、自分の家族、友人、仲間や近所の公園で遊んだ記憶、慣れ親しんだお店、観てきた風景、食べてきた食べ物を愛おしく思う気持ちです。海軍である彼らが潜水艦の中で話していたことは、家族、仲間、想い出の全てを愛しむ会話でした。愛国心とは、決して、一部の権力者を愛することではありません。
これはロシアで起こった事故ですが、自浄能力がない日本も似たような感じだなと思います。高級官僚は相変わらず利権作りと保身に余念がありませんし、コロナ予備費11兆円が使途不明でも、マスコミは騒いでいません。原発事故を起こしても誰も責任を取らないでいます。
本作を通して、私はロシアと日本との類似性を感じてしまいました。ラストで子供達は権力への批判精神を発揮しましたが、果たして日本人に批判精神が残されているかが疑問です。
全篇に沈鬱とした空気
史実で結末を知っているので、観るかどうか迷いました。結局映画館へ。
乗組員に給料が支払われず、当時から大統領だったプーチンはソチの保養地にいて、事故の連絡を受けてもモスクワに戻らなかった。ロシア海軍には救出する能力が無いにもかかわらず、西側の救援の申し出を断わる。
観賞した多くの人が、ロシアが今やってることと結びつけて考えたと思います。私もそうでした。ウクライナにいるロシア兵にもまともな給料が支払われておらず、現地で掠奪が行われているという報道があります。プーチンは面子のために、自国民を見殺しにするような人物です。周りの説得で侵略を止めることなどないでしょう。
映画としては、よくできていますが、初めから終わりまで、暗い空気感が漂い、後味が悪いけど、今だから観ておくべき映画だと思います。
ロシアの軍隊おそロシア
潜水艦映画って、結構好きで、結構観ているつもりだけど、これはこれまでの映画とは異なり、「戦闘」が描かれない潜水艦映画で、これはこれで良かったように思います。
兵器とか道具って、維持することをやらないと、いざと言うときに使えない。
救助潜水艇が使えないって、お粗末すぎる…。
今のウクライナ侵攻が、ロシアの思い通りにならないのは、こういうところなんだろうな…と実感。
緻密さがないんだろうな…。
そして、これはロシアに限らないんだろうけど、面子というか、そういうものが邪魔をして他国に救援を要請できないんだろうな…。
ただ、最後の乗組員の表情を見る限り、水で窒息というより、酸素不足で窒息だったのかな…と思った。後者の方が、楽に死ねたのかな…と思うと、せめてもの救いを感じたけど、実際は違うんだろうな…。
最後に、将軍?の握手を断った子供、そういう人が、今、ロシアにいることを祈るばかりです。
突然の2回爆発に驚いて劇中、声を出してしまった!
潜水艦映画にハズレはありません。
本作はUボートや眼下の敵、レッドオクトーバーを追え!、クリムゾン・タイトさては、原子力潜水艦浮上せずに匹敵する位、作品が出来ています。
レビューでも触れましたが、潜水艦が沈没する原因だった魚雷爆発(台詞の途中で爆発)や物語終盤に船員が酸素発生器取扱い不注意で爆発するなど、突然起こるので、そのタイミングがあまりにも絶妙なのか、驚いて声に出してしまったので、周囲に対して申し訳なかったり、恥ずかしかったりしました。
映画はノンフィクション(潜水艦内のドラマは推測)ですが、『原子力潜水艦浮上せず』をちょっと思い出します。『浮上せず』は被災した乗員を救う為に救護者が人柱となって助ける内容ですが、『クルクス』は政府が機密保持を優先し被災者を亡き者とする内容、前者は人道的であり、後者は非人道的と相反します。そこが面白いし、脳裏に焼き付くのです。
物語終盤、潜水艦乗組員の葬儀で救出作戦責任者のマックス・フォン・シドー(カラス神父!亡くなったと聞きましたが?)が亡くなった乗組員の家族(主人公の息子)に握手を求めるも、子供に拒否されるシーンがありますが、このシーンがこの映画で言いたい事が全て詰まっていると思った。
国家なんてそんなもん⁈
ロシア海軍の定期的な軍事演習で起こった魚雷爆発事故に対する救援のまずさと、軍事機密漏洩と威信から他国からの救援の援護を拒否する国家、それによりみすみす父、夫、息子などを失う海兵の家族。こんなアホな判断をする国はロシアだけだったらいいけどね。
同じコリン・ファースの「オペレーション・ミンスミート」は、むしろ事実の方が面白かったんじゃないかと思うくらい映画的アレンジがされていたが、こちらはおそらく事実を伝えようとしたのではないか。とは言っても潜水艦内で誰が何をし何と言い何が起こっていたかは発見されたメモから膨らませたものであるわけだが。話は真正面から描いていても、潜水艦の内外でスクリーンの幅が変わったりといった演出はある。
マティアス・スーナールツはじめ潜水艦の海兵役はハードな撮影だったのでは。「もみの木〜 もみの木〜」のメロディは海兵の歌だったとは知らんかったわ。
現況とダブるロシアの構造的問題
実際に起こった事故を描いているが、今日のウクライナでのロシアの不首尾とダブり、見ていて哀しくなる。冷戦後のロシアの潜水艦は、水兵の給料も届かず、装備は老朽化していたようだ。事故が起こったのはプーチンが初めて大統領になった直後である。邦題は誤解を招くが、実は最終的には全滅している。事故発生からしばらく生きていたのが23人で、軍の装備不足の上に、上層部の機密保持とメンツで対応を遅らせ、手遅れになる。
今日のウクライナ危機とダブルのは、事故は他国船との衝突だとウソの会見をしたり、現場に判断させず、上層部がムダな時間を使っているところなどである。さらに、映画には出てこないが、ソチで休暇を取っていたプーチンには、事故があったが適切に対応しているという報告がされ、プーチンは休暇を続けていたらしいのである。今と変わらぬように思われ、犠牲になった人々に何とも言えない気持ちになる。
この映画はもちろんロシアではなく、ルクセンブルク制作となっているが、どうもベルギーのワロン地域政府の助成や、フランスの港やルーマニアでのロケで撮られているようである。
この邦題、絶妙
この邦題、絶妙でした。
まさに、ミスリードさせられました。
クルスクの生存者たちって・・・
アメリカ映画ばかり観ているせいか、てっきり喚起の生還かと思いきや・・・
そうきたか
しかし
この国、未だに、謎で、よくわからない。
国が頑なで困るのは、他ならぬ国民なのに
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