「鉄板の劇中劇もの」シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい! しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
鉄板の劇中劇もの
『シラノ・ド・ベルジュラック』については、"鼻の大きな男の片恋"程度の知識だったが、問題なく楽しめた。
劇中劇もの、架空の世界を完成させていく、というプロットが大好きなので、もうそれだけで、私の評価は加算ぎみになる。
『恋に落ちたシェイクスピア』『世にも憂鬱なハムレットたち』など特にお気に入りなのだが、アイデアを『恋に落ちた…』に得たとの事で、間違いなく好みのパターンなのである。
こういった作品上では、ベタなギャグ、ドタバタ事件、最後の大団円と、お約束の展開も、古典喜劇の様式美として、むしろこうでなくっちゃ!の快感となる。
若干、ドタバタ部分がとっちらかりすぎてテンポが悪い気もしたが…。
色恋と芸術と見栄が至上、ちょいワルやメタボの親父が何故か格好良く見えてくるフランスコメディのノリも健在だ。
馴染みない言語ながら、詩的な芝居台詞の響きも耳に心地いい。
時代もの好きとしては、衣装や髪型、髭やステッキ、劇場や酒場など、ベルエポックの風俗にも目を奪われる。
名作戯曲の魅力、歴史事実に絡めた空想の面白さ、舞台演劇の労苦と喜び。フィクションの楽しさを盛り沢山に表現した作品は、このご時世にあって殊更心踊らされる。
「役者が芝居を止めるのは死ぬ時だ」映画や芝居にとって苦境の時代、どうか乗り越えて再び享受できる日が来る事を願う。
コメントする