劇場公開日 2020年9月18日

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「モータウンの楽曲がどのように作られたのかのドキュメンタリーという意味だけでつけられた題名では無いと思います 人種を越えた団結を如何に生み出すのか 本作はそのメイキングなのです」メイキング・オブ・モータウン あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0モータウンの楽曲がどのように作られたのかのドキュメンタリーという意味だけでつけられた題名では無いと思います 人種を越えた団結を如何に生み出すのか 本作はそのメイキングなのです

2020年9月21日
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鑑賞方法:映画館

モータウンは1958年に設立されたレコード会社

配給は大手のユニバーサルレコード
このユニバーサルという言葉自体が今から思えばモータウンがなした意味を示しているような気がします

モータウンはレーベル、つまりブランドです
このブランドがどれくらい世界のポップスに物凄い影響力があったのか?

それはビートルズ以上だと思います
モータウンがなければ、ロックもまた歴史も変わり、ディスコも今のクラブ文化も、DJ文化も無かったかも知れないほどです

単なる、かって一世を風靡した過去のレコードレーベル
そんなチャチものではありません

人種を超えて団結する、人間性の大切さ
それをモータウンは音楽の力で実現させたのです

1960年代、米国の公民権運動は、今日のブラック・ライヴズ・マターのように米国の分断状況を可視化させていました

KKK団があるなら、ブラックパンサーのような暴力で対抗を志向する運動も当時起こりました
そのように分断が尖鋭化していく中で、モータウンは音楽の力によって、自然に団結させる土壌を作ったのです

モータウンの標語
サウンド・オブ・ヤングアメリカ
それは、これからは若者達が音楽の力で団結した新しい米国を作るのだという意味であったように思います

音楽に色はない
人種をクロスオーバーして、良い曲は良いのです
そこには白人も、黒人もなく、私達アジア人もないのです
正にユニバーサルなのです

モータウンのヒット曲、アーティスト達は、それを音楽で証明してみせたのです

今日の世界中のポップスは殆どみなブラックミュージックの影響を受けていると言って良いほどです
その元を辿ればモータウンに行き着くのです
もしモータウンが無ければ、そのように音楽の力で人種を越えて団結する方法論は生まれていないのです

1960年代の公民権運動すら成功したかすらも分からない
分断されたまま21世紀になっていたかも知れません
少なくとも、分断を水面下に押し込めたのだと思います

それが21世紀になって分断が掘り起こされてしまったのです

団結せねばなりません
「自由、平等、博愛」こそは文明社会である証拠です
今こそ、モータウンのような音楽の力が求められているのです

デザイナーブランドの洋服がマンションの一室から始まったように、モータウンもデトロイトの一軒家から始まります
本作はその1958年の始まりから、1972年のロス移転までの物語です
その期間は、公民権運動の時期とほぼ重なるのです
1968年キング牧師暗殺、デトロイト大暴動を経て、ベトナム戦争では白人も黒人も共に苦しんで、そうしてやっと自然と公民権運動が沈静化したころ、モータウンもまた次の展開を求めてロスに移転して行ったのです
ですから本作もそこまでのドキュメンタリーなのです

1958年といえば、「真夏の夜のジャズ」のニューポートジャズフェスティバルがあった年です
奇しくもその作品も、本作の日本公開と同じ2020年にリバイバル上映されています
これは偶然ではありません
必然なのだと思います

「真夏の夜のジャズ」は、米国が分断すら見えていなかった時代から曲がり角を急スピードで曲がって行ったことをフイルムに写し撮っていました
そしてその曲がり角の先で、求められた音楽の力をモータウンは作り出したからです
つまり本作とその作品は実はワンセットであると言っても良いと思います

ですから、この2020年9月日本で、ひとつの映画館で、この2作品が同時に上映されているということは、実はもの凄いことなのです!

偶然ではなく、歴史の力がこうなるように見えざる手でなさしめたのです
神のご意志、御業と言うべきなのかも知れません

なぜモータウンがそのような唯一無二の存在になり得たのか
メイキング・オブ・モータウンとは、その楽曲がどのように作られたのかのドキュメンタリーという意味だけでつけられた題名では無いと思います

人種を越えた団結を如何に生み出すのか
本作はそのメイキングなのです

あき240