タゴール・ソングスのレビュー・感想・評価
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タゴールのことを何も知らなかった自分を恥じる
「タゴール」はインドの詩人ですが、私にとっては神楽坂の飲み屋の記憶です。昔、神楽坂で夜中まで営業している「タゴール」というエスニックなバーがあって、20代の頃よく酒を飲んでました。
このドキュメンタリー「タゴール・ソングス」を見ると、タゴールがどんな人物で、どれだけインド、バングラデッシュ(=ベンガル地方全域)の人々に愛されていたかが分かります。ノーベル文学賞を1913年に受賞したといいますから、ボブ・ディランの100年前に偉業を達成した伝説のミュージシャンと言ってもいいでしょう。詩人ですが。しかしこの映画を見ると、彼が受賞すべきだったのは、ノーベル文学賞ではなくて、平和賞じゃないのかとすら思います。それほど、タゴールのベンガル人への浸透度は深くて大きい。これだけ人々に愛された偉人の生涯を、恥ずかしながら、まったく知りませんでした。
思えば、神楽坂のタゴールでは、インドのお香とともに、タゴールの歌が毎晩BGMで流れていたかも知れないのに、まったく記憶にない。そしてこの映画で流れるタゴール・ソングも、一曲として知ってる曲がないという……。なんだか「勉強やり直し」って気分になりましたね。
時を超えた歌の力
欧米人以外で初めてノーベル文学賞を受賞したベンガル地方の詩人、タゴールに魅せられた日本の若い映画監督がインドとバングラディシュのベンガル地方を旅するドキュメンタリー。タゴール本人についてのドキュメンタリーというより、タゴールの詩と音楽が人々に与えた影響、その歌の魅力に見せられた現代の人々の想いを綴る内容だ。バングラディシュの国歌の作詞もタゴールによるものだそうで、向こうでは知らない人はいないらしい。若い女性が家父長制の不自由をタゴールの詩の精神でもって親世代に反論するシーンは、タゴールの詩の精神性が草の根で根付いていることを実感させてくれる。
日本とバングラディシュの混血の就活中の女性とバングラディシュからやってきた女性が、日本で出会い友情を育むシーンが良い。時代も国も超えて人と人をつなげる芸術の力を感じさせてくれる。撮影技術も高く、美しいドキュメンタリーだ。
哲学的
昔の詩人で、文学的にも音楽的にも素晴らしく、アジアで初めてノーベル文学賞を受賞した人で、インド国家の作詞作曲、バングラデシュ国家の作詞も手がけた人らしい。
作品の中で日本に来たインド人女性が親の言いなりになりたく無いと行動するところには共感出来るところも多かった。
何度もインドには行ってるが、自分の知ってたインドってほんの一部のそのまた一部だったことにも気付かされた。インド凄い。
原語ベンガル語かヒンディー語が分かるともっと深く理解できるのかもしれないと思った。
シタール欲しい・・・
1861年、インドのコルカタに生まれ、文学者のみならず、音楽家、教育者、思想家、農村改革者として天才的な偉業を残したタゴール。1913年にはアジア圏で初のノーベル文学賞を受賞したり、インド、バングラデシュ両国の国家を作った偉人として有名・・・らしい。主にベンガル地方の人に100年以上も愛され続け、2000曲を超える歌曲は今でも歌い継がれている。
インド音楽の独特なメロディもここから始まったのだろうか、どれを聴いても似たような音楽に聞こえてしまうのは、旋律そのものより、節というかこぶしにインパクトがあるせいだろう。むしろ彼の詩にどの時代でも通用する自然、祈り、愛、真理などがテーマとされ、現代においても、そこから進んだテーマを作れるような奥深さがあった。
最も気に入ったのが、世の中の無情さ、政権批判をラップに乗せて歌っていた青年たち。100年以上も前のタゴールの言葉にインスパイアされたと思える、彼らの訴えには前世代に通用するものがあるんだろうなぁと痛感。
また、日本を訪れたタゴールの軌跡を追うオノンナや、シタールを奏でながらタゴール・ソングを歌う夫人など、興味深い人間模様がいっぱい。すべてタゴールで心を通じ合わせるほど、偉大な人物であることがわかった。個人的にはラップの青年たちをもっと後半に登場させてもらいたかったかな・・・
【インド、バングラデシュの市井の人々の心を支える”100年前の詩の葉”】
ーラビンドラナート・タゴール:非ヨーロッパ語圏での初のノーベル文学賞受賞者であり、インドを代表する詩人。-
■驚き、印象的だった事。
1.ほぼ、100年前のタゴールの詩と旋律(優しい風合である)の2000曲以上にもなる、曲をこのドキュメンタリー映画に登場する市井の人々が愛し、皆が口にする風景。
ー100年前の牧歌的な曲の数々が、民衆に口伝されていることに驚く。又、”タゴール・ソングス”の柔らかな曲調にも魅了される。-
2.インド、バングラデシュの国歌がタゴールの詩に起因している事。
1)インドの国歌”ジャナ・ガナ・マナ”(インドの朝)は作詞、作曲がラビンドラナート・タゴール。
2)バングラデシュの国歌(我が黄金のベンガルよ)の詩はラビンドラナート・タゴール。曲はベンガル地方の修行者パウル。
ー全く、知らなかった・・。-
3.このドキュメンタリー作品には、多数の”タゴール・ソングス”に魅入られた人々が登場する。
私にとっては、
1)幼いころに両親を失い、ストリート・チルドレンになっていたナイームがバングラディシュの村の美しさを歌った”赤土の道”について語る数シーン。
2)大学一年の女学生オノンナが父と、インドの女性の地位・立場について話をする場面と、オノンナが且つて日本に来たタゴールの足跡を追う中で、日本で一人働く青年と出会い、”ひとりで進め”を歌って欲しいと請われ、歌うシーン。
日本では、話す人がいない・・と語っていた青年が涙していたように見えた・・。
の二人の若者の2シーンが印象的であった。
■残念だった事
・ラビンドラナート・タゴールの生き様を、ナレーションもしくはテロップで流れるだけで表現したのは、致し方ない
が、登場人物が多すぎて、多少焦点がボヤケタ感があったことと、オノンナの唐突に見える日本来日シーンであろうか?
父との話合いが合意に至ったわけではないのに、突然日本に来ている姿には、違和感があった。
又、偶然出会った青年との会話や、タリタとの出会いと別れももう少し掘り下げられなかったかなあ・・と思った。
<このドキュメンタリー作品の監督は、未だ若き佐々木美佳さんという方だそうである。次作が実に楽しみである。
パンフレットは勉強のために購入しました・・。>
<2020年8月16日 刈谷日劇にて鑑賞>
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