T-34 レジェンド・オブ・ウォー ダイナミック完全版のレビュー・感想・評価
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戦車映画史上最高傑作では?
素晴らしいの一言に尽きます。
最近の戦車映画といえば「フューリー」がありますが、USA!USA!のノリ、戦争の汚さ、ご都合主義が不協和音を奏でていて、映像とリアリティ(一部ご都合主義につぶされてますが)しか見どころがなかった。
しかし「T-34」は違います。エンターテインメントとリアリティを高度に融合させ、ドイツを極悪に描くこともなく、バランスが良い。
エンターテインメント性は観たらわかります。観ましょう(笑)
リアリティについて。冒頭の戦闘だけでもこれでもかというほどに詰め込まれています。
まず戦車はCGではなく実車です。T-34は冒頭の「T-34/76」、中盤以降の「T-34/85」共に本物。敵の3号戦車も忠実に再現したレプリカ(最初は実車使用予定だったがエンジントラブルでレプリカに)。そしてそれぞれの戦車のスペックや機能も史実に忠実再現。
T-34/76(主人公)
★4人乗り(車長は砲手を兼ねる)
★車外視察装置は固定式でバラバラに設けられている。車長が砲についていると、砲向正面以外は見えない。
★無線機は指揮官車のみ。
★車内通話装置なし。
★砲は76mm砲で当時最強の威力(ただし分間発射弾数は低い)
★装甲は厚く、傾斜装甲であり強力。車体を斜めにすれば傾斜効果が増す。敵の3号戦車では正面装甲を絶対に貫通できず、側面を射撃しても完全貫通は厳しいため、近距離かつ装甲に対してなるべく直角になるように撃つ必要がある。
3号戦車J後期型(敵)
★5人乗り(車長は指揮専門)
★車外視察装置は各部のものに加え、車長専用のコマンダーズキューポラ(ハッチ閉じても上部から360°見渡せる)がある。車長は独立しているので常に周囲を確認できる。
★全車に無線機搭載。
★声帯の震えを直接拾う方式(騒音あってもクリアな通話)の車内通話装置を、装填手以外全員が装着。
★砲は50mm砲。T-34の76mm砲登場で時代遅れになってしまった(ただし分間発射弾数は高い)
★装甲は薄め。主人公のT-34/76に横から撃たれたら完全に貫通する。車体を斜めにして傾斜効果を稼ぐしかない。
とまあ、作中影響してくる「実際のスペック」は上記くらいですが、これ「全部再現」してるんだもん(笑)すごすぎる。
どう作用するかは実際に観てください。絶対に劇場で見たほうがいいです。音響も作りこまれているから。
あ、あとこれはないでしょって意見があった、作中出てくる飛行機「シュトルヒ」ですが、実在であり20mあれば着陸できる凧みたいな性能を持ってます。
中盤以降は主人公・敵共に戦車が新型になり、これまたリアル。
話は変わって、ドイツを極悪に描いていないのもまたいい。確かに収容所ではひどいことしてるが、敵側主人公はいい意味でプライドを持っていて人間味もある。
とにかく観たらわかります。エンターテインメントに振ったリアル戦車戦映画(多少ご都合主義なところはあるが)です。
破壊のカタルシス
ナチス時代が舞台ということで重苦しいまじめな映画かと思ってたら、すごくわかりやすくおもしろく、ハリウッド映画って言われても疑わないくらい見やすかった。
俳優さんも敵も味方もかっこよく美しかったです。
戦争は嫌だなあと思ったけど、この映画は破壊しまくるカタルシスがあって、難しいことはさておき、単純に爽快感があった。
特に深い話はないけれど、そんなん求めてないでしょ(笑)。
面白い。そしてとにかく熱い。
たった1両の戦車と6発の砲弾で、ナチいっぱいのドイツから決死の大脱出!これで燃えなきゃ男じゃない。
(でも映画館には、結構女子もいてちょっと意外でした。)
無駄な展開はほとんどなく、ずっとテンション高め。
戦闘場面は、静と動が同居した、ちょっと将棋やチェスのような駆け引きが楽しい。ずっと爆発してるだけで、ぜんぜん展開が入ってこない某ベイ監督作品とは大違い。
映像はいわば戦車版マトリックス!バレットタイムならぬ砲弾タイムが斬新!(バカだけど(笑))。
こんな感じだからヒロインはいらないんじゃないかなと思ったけど、こちらもちゃんと胸熱展開ありました。
とにかく、やっぱり戦車は、金属と泥と油と汗だよねえ、ガールズ&ナントカ見てる場合じゃないぞと思います。
さらにパワーアップして面白く
去年の秋に鑑賞して飛行機の中でも観ました。最初は悲惨なシーンからなのですが、後はガルパン真っ青なシーンが目白押し。監督は見ていないというが、シチュエーションはそんなところばっかり。徹甲弾で撃たれて中から人が這い出すのは嘘だ。でも面白い。
長くはなっても印象変わらず、ミルクを足しても味が変わらない濃厚なコーヒーのような全長版
モスクワに程近い前線基地司令部に食糧補給に向かったロシア軍士官イヴシュキンは野戦病院と司令部を撤退させる陽動作戦の為たった一台残されたT-34の指揮を任される。夜明けの小さな村で待ち受けるイヴシュキンら4名の戦車乗りの前に現れたのはナチスのドイツの戦車中隊だった。
3年もの間強制収容所の捕虜となり7回の脱獄を試みたイヴシュキンに与えられた任務は戦車隊の強化を急務とするナチスの模擬演習でT-34の指揮を執ること。捕虜仲間からならず者の戦車乗りを3名選んだイヴシュキンが実弾装備のないT-34で打って出る決死の作戦に身体中の血が滾る!
・・・までは前バージョンと同じ、いやこの全長版の印象も含め何の違和感もない。26分も長くなってるはずなのに。ただ一つ大きな違いはドイツ語のセリフにロシア語の吹替音声がオーヴァーラップする、同時通訳を聞いているような演出がなくなっていること。これは前バージョンを観てる人には逆に違和感があるしラストバトルのニュアンスも変わってしまうわけですが、先の違和感がない分没入感が冒頭からあるのでこっちの方が取っつきやすいかも。もっとサプライズがあるかと期待してた分肩透かしでしたが、冗長になるのではという危惧もまた杞憂だったわけで結果オーライ、大満足でした。
#14 今年観た中ではダントツNo.1
めっちゃ面白かった。
今まで戦車が主役の戦争映画ってあったっけ?
ハリウッド映画とは全然違う娯楽性があってロシア映画を見直した❣️
一対一で真っ向勝負とか、戦車にバレエを踊らせたり、ラブシーンもあったり盛り沢山。
そして主役の俳優さんはイケメンさん。
なんでこの映画が絶賛されてないのか不思議。
エクステンデッド版でチネチッタで観れて良かったです。
長尺版でもだらけす。
立ち寄る街のシーンやらヒロインの逃亡のシーンやらポロポロ追加された時間だったけどそれでも戦車シーンの迫力となんとも美しい映像はかわらず。シーン追加しないほうがテンポが良かった気もするけど。それより単館でしかやってなかった作品をまさかの長尺版で大画面で見返せた嬉しさ。男気溢れる展開も多くて最高でした。
たった6発の砲弾で
昨年秋に公開された通常版(!?)が面白かったので、完全版なる今回も早速観賞!
シンプルに、戦車を使ったアクションが面白くカッコ良い映画なのですが、完全版は登場人物のドラマが少々追加された感じ。
最近の戦争映画は、戦争の凄惨さや哀しさを伝えるようなものが多い気がするが、本作は完全にアクションエンタメを貫いており、こういう作品も良いと思う。
また、本作の敵役イェーガーも普段なら極悪非道に描かれるナチスとは違い軍人としてのプライドをもつ好敵手といった感じで、観客にもファンが多い模様。
予告では、砲弾がたった6発だけしかないとのことだったので、観賞前は本当に面白くなるのだろうかと思ったけど、物語の本筋は本当に6発の砲弾だけでものの見事に面白くて驚いた。
実質2度目の観賞にも関わらず、2時間半の長さを全く感じない良作でした!
因みに私、一番好きな戦車は、T-34でも、パンサーでもタイガーでもシャーマンでもなく、九七式中戦車(チハ)なのですが・・・いかがでしょうか(笑)
またも◯◯か‼️その2
ほとんど『ハンターキラー』の時と同じような興奮に胸踊りました。
ただ、あの時は陸軍が〝なんとなく報われない〟説を偉そうに宣ってしまいましたが、本作では〝タンク〟❗️が主役。
軍事将棋を思い出すような懐かしさ混じりの響きとともに大共感。大いに萌えました。
程度の差はあれ、男の子ならどこかくすぐられるミリオタの血がまたも沸騰させられました。
他のレビューで、またもナチ‼️とか書きましたが、歴史的事実のことを敢えて封印して言わせていただくと、ナチの制服は、やっぱりカッコよくて、見映えがいい。それは事実だと思います。
スターシップ・トゥルーパーズなんかも相当意識したうえで見かけは称賛、作品全体として大いなる皮肉を効かせてましたが、それもあのカッコ良さがあってこそなのですね。
オリジナル版が自分好みの作品だったので観賞。
ダイナミック版と言うことでハデなシーンが追加されてると思ったけどちょっと違った(笑)
登場人物達のセリフが追加されていて仲間達の絆をオリジナル版よりも上手く表現されていた印象。
やっぱり戦車同士の戦いは凄かった。
金属音も良い。萌えます🎵
エンドロールで皆のその後の生活が描かれていてそれも良かった。
昨日観た全編ワンカットの伝令映画のドイツ人パイロットは最低だったけど、本作のドイツ司令官は人間味があって嫌いじゃありません( ´∀`)
ゴツくて大きい物体がゴキンゴキン戦うのが好きなんだよ!しょうがないだろ!!
ありがたいよね。こういう映画が作られるのがありがたいし、昨年うっかり見逃してたんだけど、26分の追加映像で「ダイナミック完全版」としてまたやってくれたことがありがたい。
昨年『ハンターキラー 潜航せよ』って、これまたすっごい面白い映画観たときのことを思い出すんだけど、書こうと思った感想も読み返してみたらほとんどハンターキラーと同じようなことだった。
言葉にするとバカっぽいんだけど、とにかく「ゴツくて大きい物体が戦う」っていうことがもう、本能的に快楽なんだと思ってる笑。巨大ロボットアニメを観て育ったからそういう性癖なのかもしれない。僕がプロレスで一番燃えた試合は、長州力と橋本真也がリキラリアットと袈裟斬りチョップを延々ぶつけ合った試合だ。
あと「戦う」という要素についても、昨年のハンターキラーに同じく「ロジカル」に勝負が決まっていくのが面白い。兵器を操る人の才能とか技術とか気合というような「フィジカル」で勝負が決まるのではなくて、例えば潜水艦や戦車の戦いって、戦略とか作戦とか心理戦みたいなロジックで展開していくからハラハラするし上手くいったときのカタルシスが気持ち良い。
特にこのT-34という映画の中では、味方の戦車と敵の戦車の「性能差」に関する言及が全くない。ということはつまり結局、人間vs人間の戦いになっていってアツい、ということ。本作のラスボスと言うよりむしろライバルキャラと言ってもいいイェーガーというキャラがむっっちゃ良かった。だから余計に主人公vsラスボス(≒ライバル)戦の展開と顛末に血がたぎったよね。
むかーし初代プレステでやってた「フロントミッション」ってゲームがやりたくなった。
展開が解っていても面白い!
展開が解っていても面白い!
これって凄いことだと思う。
両方鑑賞してみて、26分足されて…というか、多分上映時間が2時間を越さないように26分をやむなく削ったのだなぁと、マザマザと感じた。(上映時間が2時間越えると上映回数も少なくなるので興行収入がダブルで減る仕組みらしいです。)
当たり前だけど、お話しとしては矢張、ダイナミック版の方が流れが自然でより人物像が巧く描かれていたと思う。
声を大にして云いたい…是非、映画館で鑑賞していただきたい。
初っぱなの砲弾が遠くで聞こえるところとか、飛んできた弾がスローモーションになって一瞬止まるところの音響とか…素晴らしいので。
しかし、何故アカデミーにノミネートされていないのだろう?音響賞を差し上げたい。
ダイナミック完全版?
通常版を観ていれば、完全版を観る必要が無いと思う位 付加価値が無かったと個人的に思う
でもパンフレットは完全版の方が4ページ多いのと多少レイアウトが違っていたから、また買っても良いと思うが…
「【唸りを上げる戦車砲弾、ドイツ戦車VSソ連戦車&ニコライ・イヴシュキンVSイェーガー大佐再び。アドレナリン大噴出のロシア製エンタメ作品、厚みを増して再び降誕。】」
ー下記の途中までは2019年10月31日 の鑑賞レビューである。オリジナル版を観た方は飛ばして下さい。ダイナミック完全版レビューはその下に記載。ー
<1941年 独ソ戦 Ⅲ号戦車 VS T-34-76>
イェーガー率いるⅢ号戦車団にたった一騎のT-34-76で挑むイヴシュキン戦車長達。彼の的確な指示により次々にⅢ号戦車団を撃破する・・。
冒頭のこのシーンで、”この作品は間違いなく面白い”と確信。
唸りを上げる戦車砲弾、鋼鉄の戦車でも弾が掠るだけで物凄い衝撃が戦車兵を襲う。
砲弾の飛んでくる様の映像が素晴らしい。ストップモーション技法も駆使して戦車戦の迫力を観る側に伝えてくる。
<1944年 独ソ戦 ハンター戦車 VS T-34-85>
捕虜になっているイヴシュキンを偶然見つけた因縁の相手イェーガーはある提案を”死にたがり”イヴシュキンに突きつける。
ここからは、一気呵成にラストまで突っ走る。
独逸の通訳になっている捕虜、アーニャとイヴシュキンとの恋愛も絡ませながら、自由を求めて疾走するT-34-85。戦車兵たちのキャラクター(特にヴォルチョク)が良い。
イェーガーに代表されるナチスドイツはきっちり悪役で描かれ、(でも人間性もきちんと描かれている)ロシアで大ヒットした理由は良く分かる。
が、ロシア人でなくても充分に見応えのある戦車戦をメインにしたロシア製エンタメ作品。
見事な作品である。
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2020年2月12日 追記
今週末、今作に26分プラスしたダイナミック完全版が公開される。
【重震タンクMix 上映】などと、摩訶不思議なタイトルが被せられている・・。楽しみである。(重低音と振動が凄い劇場なのである・・)
週末は、”1917 命をかけた伝令”と今作と”ドカドカ”映画を満喫しよう・・。
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<2020年2月15日 ダイナミック完全版 鑑賞>
通常版から26分追加したバージョンを鑑賞。矢張り、面白い。
先回、鑑賞時に気付かなかった部分のみ追記。
但し、26分どこが追加されたかは、各自確認したほうが面白みが増すと思うので割愛する(物語に大きな影響はないが、登場人物の深みが出たと思われるシーンが幾つかある・・。)
が、一つだけ・・・
エンドロールに草原で再開した彼らのその後の幸せそうな姿が挿入されている。(個人的には、お腹の大きくなったアーニャがニコライの母と抱き合うシーンが沁みたなあ、勿論ニコライとお母さんの抱擁シーンも・・・。)
・まず、イェーガー大佐の印象が少し変わった。
”イヴシュキンのニコライと自分のファーストネームを掛け合わせて”ニコラウス”と呼び合おうとする場面、後半のクライマックスで効いてくる。
そして、ドイツ軍大佐としての矜持をしっかり持っている男だと分かるシーンも再確認。
あの橋梁上でのT-34-85とハンターとの一騎打ちのあとの、イヴシュキンとイェーガー大佐が対峙するシーンはグッときたよな・・。”
・エンドロールで流れる言葉
”独ソ戦で戦った”全ての”戦車兵たちに捧ぐ”
ここは、初回鑑賞の際、不覚にも余り気にも留めずに読み流した。が、確かに、今作はドイツ兵を”悪逆非道”的な描き方を余りしていない。
そして、ここが今作制作陣の想いと今作の鑑賞後の”爽やかさ”が増している部分だと気づく。
■蛇足 ”パンフレット”について
オリジナルバージョンと違うのかな、と思い店員の方に発行日を確認していただき、装丁も違うと分かり購入。
内容は、オリジナル版+”ニコラウス”の二人のキャストインタビュー及び鑑賞ポイント解説が追加され、映像写真も追加。
購入するかの判断はお任せします。
<矢張り、素晴らしい作品は再鑑賞すると面白さに”厚みが増す”事を確認でき、大満足で劇場を後にした。>
求めてる戦争映画ってこういうの!
第二次世界大戦中のドイツを舞台にした戦車映画。一緒に観た友達(戦車ものに詳しい)は昔の映画「鬼戦車T34」のリメイクなんじゃないかって言ってた。基本的な話は同じだったからそうなのかも(鬼戦車はつまらないみたいだけど)。
いやー、めちゃめちゃ面白かった。オリジナル公開版は観ていなかったので比較はできないが、長さをまるで感じない。仲間との信頼関係、敵を出しぬこうとする知略、そして何よりも戦車での戦闘シーンがすごかった。
弾丸が飛んでいく様や、当たった戦車内で火が上がる瞬間の映像がスローモーションになっててそれが何しろすごい。こんなスローモーションなんて使い古されている手法かもしれないが、まだまだ使える手法なんだな。他にも戦車の旋回や砲台の回転、弾のチョイスといった戦車ならではの戦闘が存分に楽しめる作りになっていた。
同じ日に1917も観たが、戦争映画なんだから、やっぱりこういうのがいいんだよ!こっちの方が断然楽しめた!
戦争映画だからと敬遠するのはもったいない。一流の傑作。
まず最初に、これはミリタリー系の知識の乏しい者によるレビューであるとお断りしておきます。本作を鑑賞中も、ドイツ軍の戦車は分かりやすい塗装だから良かったー、と思ったくらいですからね…。
ポスターやパンフレットのアートワークが示すように、本作は第二次世界大戦におけるソ連軍の戦車戦を扱った映画です。それ以上の情報を読み取ることすら困難なほど、明確で分かりやすい表現であると言えます。
映画の冒頭から、観客は独ソの戦車戦の只中に放り込まれます。戦車や砲塔の間近に備え付けられたカメラが捉えた映像は、猛り狂う戦車以外の要素が画面に入ることを拒絶するかのようです。そこには恐ろしいと言うよりも、ある種うっとりとしてしまうような様式美があり、さらに超スローモーションで砲弾の軌道に沿って飛ぶ視点が加わることで、一層演出の外連味が増しています(超スローモーション映像はいささかくどいけど)。
そして激戦をかろうじて生き残った主人公が、ドイツ軍の包囲網を突破せんとするところから、物語は猛然と動き始めます。ここからのたたみかける展開は見事です。ちょっと都合が良いと思うところもないではないですが、そんな柔な批判をあっさり蹂躙するほど、主人公を始めとした精強なソ連軍軍人は、知恵と技術を振り絞って、圧倒的に強大なドイツ軍に立ち向かっていきます。主人公達には孤軍、限られた砲弾という非常に分かりやすい制約を課す一方、包囲網を狭めるドイツ軍と目的地までの位置関係を一目で分かるように示すなど、黒澤明の『隠し砦の三悪人』や『七人の侍』を連想させるような、動きと視覚を巧妙に組み合わせた演出が成されており、最後まで目を離させません。『1917』や『ダンケルク』も、臨場感という点では非常に優れた映画ですが、本作は戦闘に肉薄した映像と制約の見せ方の両方を組み合わせて臨場感を醸し出していると感じました。
凄惨な戦闘場面とは対比的に、戦車が走り抜ける林道や草原の美しさは目を見張るものがあります。本作でほぼただ一人の女性の登場人物の描写は素晴らしく、ちょっと『初恋の来た道』を連想させるような場面もありました。製作を務めたニキータ・ミハルコフの影響でしょうか。
手に汗握る痛快戦争アクション映画として幕を引くかと思いきや、幕引きに示された最後の一文に思わず泣きそうになりました。この大戦で未曾有の犠牲者を出した旧ソ連(ロシア)の人々が書くからこその、非常に重みのある文でした。
戦争映画やミリタリー物に疎くても非常に楽しめたのですから、これらに精通している人はもっと楽しめるんでしょうね。そうした方々が少し羨ましくなりました。パンフレットに武器や戦車の詳細な解説が掲載されているのですが、現時点ではあまり理解できないので、これからゆっくり解読していきます。
全42件中、21~40件目を表示