「原作ファンです! 絶対に映画館で見るって決めてた☆彡」宇宙でいちばんあかるい屋根 mary.poppinsさんの映画レビュー(感想・評価)
原作ファンです! 絶対に映画館で見るって決めてた☆彡
17年前の思春期小説。この原作がとても好きなので、映画化を知った時は、えっ今頃??と驚きました。そして主題歌がCoccoと知り、ぜひ映画館に行かなくちゃ!と決めていました。誰もいない一人きりの映画館で鑑賞!(笑)
雰囲気は、いい感じ。さわやかで 少し淋しくて、ほんのり心あたたまる話。
ただ、原作ファンとしては、ん~…満足ってわけではないな。
小説では、登場人物一人一人すべての個性が鮮やかに立っていて、感情の機微が強く伝わってきました。思春期の少女の微妙な心の揺れ動きが、この話の肝心なところ。でも映像化したら、言葉で説明しない分(モノローグは無し、やや寡黙な感じ)、映像の雰囲気に頼る感じで、ちょっとありきたり~なほのぼの話になってしまった気がします。原作ファンじゃない人の方が、すんなりと楽しめるのかも。
主人公の少女つばめの、ちょっと寂しさを抱えた静かな透明感は、この女優に似合っていて好感です。でも映画ではあまり中学生ぽくは見えない気も。まじめで落ち着いた雰囲気は原作と同じだけれど、大人びて時々周囲のにぎやかさにうまく混じれない一方、時折うっかり子供っぽい幼い行動をしてしまった自分に恥ずかしくなり苛立ちを抱えたり、くるくる変わる感情を自分でうまく扱えずにもてあます、言葉にしないけど心の中には色々な感情があふれてる「14歳って、とても不便だ」なようすが原作では詳しく描かれ、読む側は、思春期の頃を思い出して共感したり、あいたたた…とほほえましく感じたりするのですが、映画のほうは淡々としすぎて「思春期の少女」の綺麗なイメージだけを優先して描き、つばめという人物の個性や思春期の説得力が薄まってたな。
主人公が出会う、変わり者の「星ばあ」。原作ではもっと、鼻つまみ者な感じ(笑)口悪く辛辣な言葉でつばめを半泣きな気持ちにすらさせる出会いだったけれど、映画ではソフトでした。文字だけで読んでた時、私の頭の映像の中では、たぶん樹木希林イメージ。目をぎょろっとしたり、にらんだり、にやっとしたり、大声で笑ったり、ちょっとうるさくてわずらわしいほど個性が強いおばあちゃんでした。「アイツは殺しても死なない!(笑)」って笑い飛ばせてしまうほどアクの強いキャラだからこそ、いざ孫のマコト君と会う時に気弱になってしまう姿が妙で、ひとにはそれほどまで壊したくない大切なものがあるんだなと感じられるし、いなくなってしまった後に切なさがおしよせてくるんだけれど…。実写映画の桃井かおりも悪くはないけど、ちょっと風変わりな程度でキャラが弱く、インパクトには欠けました。それが、レビューでよく言われてる「ファンタジー要素がちょっと…入り込めない人もいる」原因にもつながったと思います。
だって原作の星ばあの性格なら、平気ででまかせや嘘も言う口達者な人だから、「空を飛べる」と言い張っても、つばめは「もー、星ばあってばまた言ってる。そこまで言うなら飛んで見せてよ?」くらいにとらえていて、でも最後の方は信じてみたい気持ちになったりする感じが、普通にリアルです。この映画ではそういう雰囲気じゃなく、中学生にもなってつばめはそのまま信じちゃってるみたいだし…現実世界に妙にファンタジーが混じっちゃってる感じは否めません。その感覚に共感できず苦手と感じてしまう人はいるんだろうな~。
映像で惜しかった場面は、夢の中で、くらげにつかまって空中遊泳して、星ばあとすれちがう場面。ふわふわした浮遊感が全然無く、不自然な硬い動きが、夢の中っていう設定でも説得力が微妙でした。そもそもこの話は、現実の日常生活の中で「…あれ?夢だったの?」と境目があいまいになるとこが絶妙なのだけど、映画化ではそこがうまくいかず、妙にファンタジー色が目立ってしまってたかな。
映画化では時間削減のためか、とおるくんの彼女の存在は消されているなど、ちょこちょこ原作との違いがあります。これはこれで話は成立してるし、登場人物の性格は特に変えられたりはしていないから、まあよいのですが。しかし、感情の機微が肝心なこの話において、印象的なモノローグや、登場人物の個性や魅力をきわだたせるエピソードが削られ、行動が変えられ別の感情が描かれてるのは、ちょっと期待はずれでした。時間削減しながらつじつま合わせの為に行動を変えても、話は流れるけれど、その人物の性格や感情がいまいち伝わらない行動になってたら、意味ないのでは。
彼女の存在が描かれることで、つばめの幼い淡い恋心が、大学生のとおるくんに届かなくてもどかしい感情や、背伸びしたいのにできないはずかしさ、淡い焼きもちなどがちゃんと伝わるのにな。屋根さがしのために、けが人のとおるくんと一緒に毎日毎日炎天下を長距離歩き回るのは…酷。映画版のつばめは、つばめらしくないな。普通はあんなことしないと思う。好きな人なら心配だし、もっといたわるでしょ。原作の「好きな人のために自分が何もできなくても、とおるくんが苦しんでるなら、私も静かに夏休みをすごしたい、会えなくても同じ町の中にいたい」と一人静かにストイックに時間をすごす切なさが、つばめの芯の強さやけなげで純粋な恋心を表していて、好感がもてたんだけどなぁ。まことの登場場面も不自然に変えられ、ご都合主義に感じました。
特に残念だった点
父が「実の母がつばめを引き取りたいと来た時、今の母親が断固反対したことがあった」と打ち明ける場面。母がちょっと破天荒なほど感情をぶつけてつばめを守ろうとしたエピソード、「ええッまじ?汗」と驚き、思わず笑えちゃって、『家族って、どの家の家族もみんな、色々ある。普通の家庭って、なに? 普通なんて、なんだっていいじゃない。血のつながらない家族だって、こんなに愛あふれるんだよ。』ってことが伝わってきて、大好きなエピソード。ギャグまじりだからこそ感動が深まる場面。なんだけど、映画では、その状況説明の父のセリフが全部削られ、最後のつばめのセリフはそのまま「ママ、やるなぁ」←いや何を?説明きいてないのにそのセリフ出てくるわけ…。
こんな風にたくさんのセリフを削られて、ただ表情や雰囲気だけで伝えようとした場面がたくさんあるんだけど、かなり薄味~でありきたりな、ただの「いい話」風になってました。悪くないけど、2回見ようとは思わない、たいして印象に残らない映画になっちゃってたな…。
ごめん、原作ファンってやっぱり、そう感じちゃうこと多いですよね。
原作を超える映画化って、なかなか見かけること少ないものですよね。一人で書かれた文字だけじゃなく、何百人もの人達が映像も言葉も音楽も総動員して映画化してるのにな…。
最大の残念な点!
原作に無い、映画オリジナル場面。実の母に会いに行ったのに娘だと全然気づいてくれなかった場面、やりきれない…。そんなにたくさん会話してるのに何故全然気づかないの?(泣)母親なら気づくはず、なんていう、よくあるお涙頂戴話に出てくる、血の繋がりをミラクルファンタジーに信じるものなんかじゃなくて。(そんなの、この話のテーマと正反対!)この映画は登場人物の感情と行動に、全然つじつまがあわない、理解できない!
だって、つばめが見つめていた3羽のつばめの親子の絵…(尾の形、つばめですよね?)母はすぐに笑顔でお客のつばめに声をかけ「この絵、10年くらい前に描いたものなの、気に入ってくれて嬉しいわ、あなたみたいに若い方が来てくれるなんて珍しい」と喜びます。「10年くらい前に描いた」と瞬時に言えるほどはっきりと覚えている画家本人が、娘と同じ名の「つばめ」の3人家族(自分の家庭と同じ)を描いた時にどんな気持ちだったか、どんな思いをこめて描いたか、思い出さないはずがありません。今14歳のつばめが4歳の頃に描いた絵。2歳で娘を置いて離れ…父は1人で育てられず再婚。離れたら彼女はやっぱり恋しくなり娘を取り戻しに訪れた頃でしょう。そして、つばめを可愛がる継母に激しく断られ意気消沈、家庭を捨ててまで自分の道を選んだ事を後悔したかも。ちょうどその頃に描いた絵を、簡単に忘れられるわけがない。たとえ今は「東京で新しい家族と幸せに暮らしている」としても。この絵を未だに大事に飾ってるのなら、その絵をじっと見つめて何か言いたげに挙動不審にしてるつばめとあれほど会話しながら、「こんな若いお客さん珍しい…中学生くらいかしら、そう、あの子と同じ年頃かしら…」と思わない方がおかしいです。長年会っていないとしても、この絵を自ら飾っているくせに、「つばめ」というキーワードから「この子…なぜそんな顔で私を見つめるの?…あら、この子の顔立ち…え、もしかして」と感じない方がおかしいです。もしも新しい家庭のことで心がいっぱいで、つばめのことを忘れているなら、あの絵を飾り「10年前に描いた」と瞬時に言えるのはおかしい。不自然すぎです。むしろ、昔捨てた娘を思って描いた絵なんか、封印して二度と見ないとか捨てるとかして、新しい家族と幸せになろうとした結果、今のつばめに会っても気づかない、というのならわかります。しかし、その絵をポストカードにまでしてるなんて、つまり代表作なんですよね、よほど有名な売れっ子でもなけりゃ、代表作だけしかグッズ化しません。10年も描き続けていれば相当多数の作品があるだろうに、他の作品を差し置いて特別な一作なんですよね?「つばめ=昔捨てた娘」を思って描いた絵が。新しい家族と幸せに見えても、つばめの秘密をずっと抱えてる証拠。それなのにあの行動はすべて不可解すぎです。映画で母の名は、えり子から「ひばり」と変えられ、娘つばめとの繋がりをより強調させる演出なのに。つばめと名付けたのは母では?と並々ならぬ思い入れ背景を感じる名なのに。母の心情が全く伝わってきません。登場人物それぞれの心の揺れ動きという、この作品の一番重要な醍醐味なんて無視して、ただ主人公が泣くクライマックスを作りたいがために無理やりこじつけた脚本に感じます。
ラストの2020年、つばめが大人になり、描いた水墨画の展覧会を書道教室の先生が笑顔で見る場面は、ほっこりして良かったけど、けど…すごく感動とは思えません。実の母との再会があんなにつらいものだったのに、その母と全く同じ道に、まっすぐ進む??説得力に欠けます。 14歳の夏、本当に色々な出来事があって忘れられない夏の記憶になったはず。素敵な思い出だけじゃなく、トラウマな記憶だってあるはず。あの母との再会は、良い思い出になんかなったと思う?? 書道教室に通いはじめたきっかけは、もう会えない母が自分と父を捨ててまで選んだ書道のことを知ってみたかったから…そんな理由を両親には言えず胸に隠したまま「けっこうおもしろいよ」と笑顔を作って見せてたつばめ。(でも、何も言わなくても、実は両親は気づいてたのが、愛…。血はつながってなくてもね。)そんな繊細なつばめが、あのつらい再会を経てさえも、母と同じ職業を選ぶほどあの母にようになりたくてしょうがない?それとも、きっぱりと母のことをふっ切り、純粋に水墨画を大好きになる?狭い業界、絶対に母と否応なく比較されたり会ったりするのに?それを乗り越えてまで、完全に同じ職業を選ぶ?絵はお世辞にも上手とは言えないほどの腕前だったつばめが若くして成功するほど、がむしゃらに母と同じ道を突き進むの?どんな気持ちで??
映画版では、登場人物の行動に、共感や納得ができません…。原作の方はみんな個性的で魅力的で鮮やかなのに。もしかして監督、シナリオの流れのためにご都合主義優先で、登場人物の感情をちゃんと考えてないのでは?行動原理がほとんど破綻してると感じます。
ごめん、評価★2とか1に下げるべきかも…。人物の感情が伝わってきません!原作ファンだから気になるだけ?映画だけを見た方、雰囲気に流されず純粋に話をきちんと考えた時に、違和感を感じませんか??あの登場人物たちの行動原理を理解して説明できる人います?
でも映画ラスト、Coccoの作った主題歌、主演女優が歌う、あの歌はよかったな~。涼やかで、しんみりと心に響いて綺麗だったな。