劇場公開日 2020年11月13日

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「見どころは北川景子の後ろ姿」ドクター・デスの遺産 BLACK FILE 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0見どころは北川景子の後ろ姿

2020年11月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 安楽死や尊厳死についての議論は脳死と心臓死の議論と合わせて、人格とは何か、死とは何かという形而上的ないし医学的な議論になり、結着をつけるのは難しい。
 周防正行監督の「終の信託」では安楽死に関わった医師の法的責任が追及される。大沢たかおの冷酷非道な検事ぶりが印象的な作品で、人間の生死に関わる哲学的な問題と倫理に国家権力が介入する不条理を描く。安楽死の問題を考えるときに必ず思い出す名作だ。

 本作品では安楽死を殺人と決めつける刑事が主人公で、綾野剛は短絡的で思慮の浅い筋肉バカの刑事を上手に演じていたが、映画「楽園」や「影裏」の主人公みたいな、複雑な人間性を演じるのが得意な俳優さんにしては、少し物足りない役柄だった気がする。世界観も周防監督の作品よりも大分こじんまりとしていた。
 見どころは木村佳乃の怪演とパンツスーツの北川景子の後ろ姿である。木村佳乃はあまり主演作はないのだが、脇役としてとてもインパクトのある演技をする。本作品ではこの人が最も印象に残った。安楽死についての考え方をもう少しまともに表現する場面があれば、本作品の世界観ももう少し広がった筈だが、少し残念である。北川景子は今回は熱血漢の女刑事。私生活ではクックパッドのレシピ通りに料理を作るとのことで、演技もレシピ通りみたいな気がする。どんな役もそれなりにこなす器用な女優さんではあるが、いつか代表作みたいな作品に出逢えればもう一皮剥けるかもしれない。

耶馬英彦