「もっと深みのある映画を期待した」ドクター・デスの遺産 BLACK FILE アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと深みのある映画を期待した
原作は未読である。安楽死を道具立てにしているが、安楽死の意義や可否などについては一切言及されていないので、深い話を期待してはいけない。私はそういった話を期待して見に行ったので、かなり肩透かしを食らわせられた。報酬系の依頼殺人の一種ではあるが、報酬は現金等ではないという話である。
人が殺せる自分を何か特異な存在と勘違いした犯人は、地道に生活費を稼ぎながら、目的のために社会に潜伏しているという生き方をしているのだが、あまりリアティーを感じなかった。他にも、サイトのコメントを書いた人物が特定できてるのに、サイトの開設者が特定できないといった不思議な現象もリアリティを欠いていたと思う。更には、死にたがっていた訳でもない人物を追い詰めて殺そうとするなど、行動の一貫性を欠いていたのも何だかなであった。
例え激痛で苦しむ末期癌の患者であっても、殺してしまうと日本では殺人になるが、オランダやベルギー、カナダ、コロンビアなどのように厳しい条件を課して合法化されている国もある。この犯人が自分のためでなくて、あくまで終末期の患者の苦痛を取り除くという使命のようなもののためにこれらの行為を行ったとした方が面白い話になったのではないかという気がしてならない。
綾野剛が演じる刑事に重い腎臓病の娘がいて、次第に話が他人事でなくなっていくのだが、その原因を招いたのは彼の乱暴な言動なのであり、終始彼が何故これほど粗雑なのか気になっていたのだが、結局その答えは分からなかった。北川景子が演じる女刑事が相棒である必然性も特にはないように感じられた。特に「最高の思い出」というキーワードで場所が特定できるほど親しいようには全く見えなかったので、かなり戸惑った。また、木村佳乃のオーラの消し方には目を見張るものがあった。
音楽は終始パッとせず、記憶に残るものがなかった。エンドタイトルと同時に何の関係もない歌謡曲が大音量で流れて来るのには腹が立った。演出はテレビの2時間ドラマと比べてもあまり違いのないものだった。
(映像4+脚本3+役者3+音楽2+演出3)×4= 60 点。