「子から母へ」MOTHER マザー rainさんの映画レビュー(感想・評価)
子から母へ
ヤングケアラーという言葉が世間に浸透して、10年強といったところだろうか。
まさしく、この映画の周平のことを言うのではないかと思う。最近、『汝、星のごとく』という本を読んだが、その本の主人公2人と、周平が重なった。父親不在の中、母親は常に情緒不安定で、常に何かに依存して生きている。そうなれば家族を、家計を支えるのは、子どもである自分しかいない。
第三者目線から観ていると、そんな親、早く捨ててしまえよと思うんだけど、子どもの世界は、私たち大人が思っている以上に、小さくて狭くて、目の前にいる親がすべてだったりする。というか、そう思わざるを得ない環境にいる。手を差し伸べてくれる大人は、自分が思っているよりもたくさんいるのに。
でもそういう事実に、生まれて数年、十数年の子が気づくなんて、無理な話だ。じゃあ私たち大人側に何ができるのかといえば、1人じゃないと、その子に伝え続けてあげることじゃないか。私はこの映画を観て、母親に怒りを感じたのはもちろんだが、父親や、祖父母にも似たような感情を抱いた。子どもが、お母さんと一緒にいたいと言ったから、なんだ。その子の頭引っ叩いてでも、母親から引き剥がして、何不自由なく過ごさせてあげることが、私たち大人ができることなんじゃないかと。現実はそう簡単にもいかないことは、わかるけどね。
この映画はみなさんご承知の通り、川口祖父母殺害事件が元となった映画だ。当時17歳だった少年は、懲役15年の判決。母親も、執行猶予付きの有罪。少年は判決を受けた後、自分のような境遇の子が少しでも減るようにと、控訴をしている。彼らのような枷を負うヤングケアラーが、自分の人生を歩める日が来ることを、切に願う。
